外国人従業員が日本企業で人事労務手続きを行う難しさについて
こんにちは。SmartHRのプログレッシブデザイングループで多言語化を担当している澤井です。SmartHRは現在、6つの外国語(英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、ベトナム語、ポルトガル語)に翻訳されており、導入企業の皆さまから「入社手続きや年末調整などの人事労務手続きを、外国人従業員も行うことができる」とご好評いただいています。
一方で、日本で働く外国人は今後も増えると予想されますが、SmartHRをすべての言語に翻訳できるわけではありません。より多くの方々の使いやすさを向上する取り組みとして、最近は外国語への翻訳だけでなく、やさしい日本語に注目し、取り組みを始めています。
この記事では、外国人従業員を雇用するユーザー企業にヒアリングを行うことでわかってきたこと、今後検証したい課題について紹介します。
外国人従業員に人事労務手続きをしてもらう場面での課題
外国人従業員を雇用するユーザー企業にご協力いただき、SmartHRを利用する上での課題の調査を進めています。これまでのヒアリングでは、以下のような課題がわかってきています。
漢字の入った文を読むのが難しい
たとえばインドネシア人の新入社員にSmartHRで入社手続きをしてもらう場合、SmartHRはまだインドネシア語に対応していないので、人事担当者の方が日本語で入力画面を表示し、口頭で「でんわばんごう」などと説明して入力のサポートをしているそうです。何社かの企業にヒアリングして共通して言われるのは、日本に来て間もない外国人従業員の方々は、ひらがなは読める方が多いが、漢字を含む文章は難しく、手が止まってしまう場合が多いそうです。また、「日本語は書き言葉になると固い。話し言葉で声に出して聞いてもらうほうが分かりやすい」といった意見もありました。
専門用語の意味がわかりにくい
年末調整を行う際、扶養家族の有無が問われます。この「扶養家族」という用語の説明が難しい、と複数の企業の担当者から聞きました。日本語で表示して読む場合はまず漢字の難しさがありますが、対象の従業員の言語に翻訳されていたとしても、訳語を見るだけでは自分に扶養家族がいるかどうか判断できないことがあり、担当者が「国にお金を送っている家族がいるか」などと言い換えて説明をしているそうです。
また、給与明細を初めて配信するときは、「所定労働時間」「残業時間」「控除」などの言葉についてひとつひとつ説明し、正しく計算されているか、金額が引かれている理由は何か、などについて理解してもらうようにしているそうです。
日本固有の制度を説明する必要がある
SmartHRの年末調整は、企業の担当者がSmartHR上で年末調整の依頼を送信し、従業員がアンケート形式で設問に答えていくと終了するようになっています。「従来の紙を使った年末調整に比べてやりやすい」と言っていただける機能なのですが、対象者が日本で働き始めて間もない人の場合、「年末調整の意味や重要さが伝わっておらず、依頼を送信するだけでは実施してもらえない」という場合があるそうです。
年末調整は日本独特の制度なので、対象の従業員の言語に翻訳されていたとしても、そもそもなぜ年末に、何を調整するのかといったことは手続き名からは分かりません。「扶養状況や保険料などを申告して税金の過不足を調整する手続きで、税金を払いすぎていた場合は返してもらえる」「基本的に、社員全員が実施する必要がある」といった前提は、ずっと日本で働いている会社員ならなんとなく知っていても、日本で働き始めたばかりの人には馴染みのない知識かもしれません。
このように、翻訳だけではカバーできないさまざまな課題があることが分かってきました。また、たとえば「ベトナム人を数百人雇用している」といった企業では、専任のサポート担当者が社内説明会を開いたり、ベトナム語で年末調整の解説ビデオを作ったりして手厚くサポートしているケースもありましたが、外国人の人数が少なかったり、さまざまな国籍の人を雇用している企業の場合はこのような対応が難しく、サポートする担当者の負担が大きくなっている状況も見えてきました。
今後やっていきたいこと
SmartHRにはたくさんの機能がありますが、今回ヒアリングした外国人従業員の方々が使っている機能は入社手続きや給与明細、年末調整など、特定の機能に限られるようでした。まずはこれらの機能について、つまづきやすい箇所を特定し、効果の高そうなサポートコンテンツをやさしい日本語で作ってみたいと考えています。ほかにも、製品画面で漢字にふりがなをつける、難しい人事労務用語をやさしい日本語で言い換えた用語集を作って公開する、などさまざまな手段が考えられます。ありがたいことに、ヒアリングに快く協力してくださる企業や、作ったものを見てもいいよと言ってくださる企業がいらっしゃるので、継続的にフィードバックをもらいながら、日本語の得意でない方々にも使いやすい製品づくりを進めていきたいです。
最後に…採用してます!!
ソフトウェア企業での多言語化の仕事といえば、開発チームや翻訳会社とやりとりしたり、ツールで効率化をはかったり、といった仕事がメインと思われる方が多いかもしれません。ところが実際にユーザー企業の外国人従業員の困りごとを聞くと、翻訳だけでは解決できない課題が多く存在することに気づきます。その解決策の一つとして、今はやさしい日本語に注目しています。
SmartHRのマルチリンガルマネージャーは「日本語が得意でないユーザーの課題を解決する」ことがミッションなので、必要であればヒアリングを行ったり、コンテンツを企画したり、やさしい日本語に取り組んだりすることもできます。「ローカライズの仕事は好きだけど、ちょっと違うこともしてみたいな〜」と思っている方にぴったりの素敵ポジションが、なんと今、絶賛採用中です!ご興味のある方は、ぜひチェックしてください。
マルチリンガルマネージャー募集要項