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「国難」への覚悟―犬養毅と濱口雄幸
一、昭和の實盛、起つ
昭和四年(一九二九)六月二日、犬養毅は頭山満とともに中国を訪れた。四年前、「革命未だ成らず」の言葉を遺した死んだ孫文の墓が、北京から南京郊外に移されることになったのである。頭山とともに、「大アジア主義」の理想を掲げて辛亥革命の手助けを惜しまなかった犬養は、時の国民政府の蒋介石から、国賓の待遇を以て迎えられた。
孫文が亡くなった大正十四年(一九二五)、国内で普通選挙法が公
近現代文化の諸問題 第3回 文明開化の功罪~夏目漱石「現代日本の開化」
日本近代の出発はおよそ黒船や明治維新から始まるということで間違いありませんが、その文明開化路線に方向性が決定づけられるのは、「明治六年の政変」以降と考えられます。つまり西郷隆盛の維新精神から大久保利通の「富国強兵」路線への大きな転換がここで行われたわけです。
明治10年の西南戦争をはじめとする、士族の反乱は、そうした新政府の文明開化路線への最後の抵抗という見方もできます。
その綱引き関係は、
講義録「近現代文化の諸問題」第2回 近代はいつから始まるのか~島崎藤村「前世紀を探求する心」
第1回では、「歴史は繰り返されるのか」というテーマで、柄谷行人の「一九七〇年=昭和四十五年」を紹介しました。
柄谷は「昭和」が終わろうとしていた今から30年ほど前の1988年(昭和63年)に、日本の近代史は60年周期で繰り返されている…という仮説を立てました。
もちろん過去の出来事がまるで亡霊のようにそのまま繰り返されることなどありえません。しかしながら、マクロ的な視点で見れば、現代の長期低
講義ノート「近現代文化の諸問題」第1回 歴史は繰り返されるのか~柄谷行人「一九七〇年=昭和四五年」
新元号「令和」に改元されてから既に三年が経ちました。
歴史上はじめて、四書五経のような中国の古典ではなく、『萬葉集』という「国書」が出典になったということで、一つのお祭りムードになったことは、皆さんも記憶に新しいところでしょう。
しかしながら、喜びもつかの間、改元から間もなく大型台風の到来や新型ウイルスの席捲、それに伴う経済不況も予測され、出発当初から厳しい時代の予感が漂っております。
令和元年