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「打ち手の評価」の実務 〜重みづけ方式とゲート式〜
【1.問題の所在 ~打ち手の評価はめちゃ大変~】
どんなに鋭い分析を行って課題の特定をバチコリ決めたとしても、最後には適切な打ち手を実行し、やり切れなければなんの意味もない。
なので、限られたリソースの中で、最善の打ち手を選ぶという営みはめちゃくちゃ重要。
ところがどっこい、ちゃんとやってる現場、見たことないんよね。
「この問題が一番優先度高そう~」というところまでは、現場の勘で筋の良いものが出がち。だけど、そこから打ち手となると、とたんに「とりあえずできるところからやる」にしかならないことがめちゃくちゃ多い。
教科書通り進めるなら、打ち手の洗い出し→評価→優先度付けというプロセスを経て、やるべき打ち手が時系列とともに決まるけども、この「評価」のところでとたんに雑になって検討されなくなる印象。
わかるよ、わかる。適切な評価軸を設定して、1つ1つ打ち手を評価して、、、って、めんどくさいし、「まだ検討してんのかよ!遅えよ!」って怒られるもんな。
けどな、それをちゃんとやらないと、結局うまくいかないから、もっと上から怒られるんやで、、、
【2.よくある評価方式 ~「重みづけ方式」とその実務上の問題点~】
「打ち手の評価」のやり方としてよくあるのが、2,3コ評価軸を選んで、そのそれぞれについて全施策〇△×とかで評価して、最後にそれらをまとめた「総合評価」なるものを出すパターン。
以下のグロービスの記事で書かれているようなやつね。
これは、いうなれば「重みづけ評価」という奴で、複数のファクターにそれぞれ重みづけをして、正規化された合計得点で優先順位を決めるというやつ。
理想。これができれば理想。できるならこれやれ。
けど、結構大変なのよねこれ。1コ1コの妥当性までちゃんとやろうとするとほんと大変。
あと、意外と、説明するのに苦労する。慣れてない奴が説明しようとすると、めっちゃ冗長になって「なるほどよくわからん」みたいな顔される。
【3.「ゲート式評価」のすゝめ】
ということで、今回おすすめするのが「ゲート式評価」というやつ。
いくつか評価軸を設定するところまでは重みづけ方式と同じなんだけど、評価軸そのものに対して優先度をつけて、優先度が高い評価軸順に評価していく。
1つ目の評価軸では、すべての打ち手を検証するが、2つ目の評価軸では、1つ目を通過した奴しか検証しない。
評価軸を順番に突破していくから「ゲート式」というわけ。
これだと、ある程度評価の妥当性を担保しつつ、工数を結構減らせるし、説明も重みづけに比べるとしやすい。
実は、有名なフレームワークの中にもこのゲート式評価の考え方をしているものがあって、たぶん一番有名なのが「VRIO」というやつ。
とりあえず「VRIO」でググって1番上にきたMURCの記事から引用する。
経営資源の評価は、上記に挙げたV・R・I・Oの順で実施することが望ましいとされる。また、全ての項目で優位性がある場合、自社の経営資源は持続的な競争優位性を持つ。
あと、重みづけ方式にしたとて、「あれ、これ結局この評価軸順じゃね?」みたいなことがたまに起こる。その場合は(結果論かもだけど)ゲート式にしたほうがよかったよねとなる。
・・・ただ、ゲート式が重みづけに比べて優れているというわけではない。
工数も省き、説明もしやすいということと引き換えに、一定の複雑性を放棄している。
つまり、厳密にいうとちゃんとトレードオフはある。
例えば打ち手の解像度が粗いまま「効果」と「時間」の2つでやっちゃうと「効果はデカいけど無理だよね~」と「できることしかできない」のどっちかになって詰む。
この場合は、重みづけ方式にし、マトリクス構造で考えるほうが良い。
参考:『コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法』第4章
なので、万能とまではいえないんだけど、
とはいえ実務ゴリゴリ回しながらとなると、ゲート式のほうがいい場面が多いんじゃないかな~と思う。