2024年上半期の事
もう小学生の夏休みが終わる頃だけど今年の上半期を振り返ってみる。今さらだけど月日は百代の過客なので仕方ない。
何より今年は子供が産まれた事が大きい。間違いなく人生最大の出来事だった。
というより現在進行形で毎日が大切な日々を更新している。
1月
元日に栃木の実家に帰省した。兄の子供達に数年ぶりに会ったが見違えるほど大きくなっていた。以前会った時いちばん下の甥っ子はまだ赤ちゃんだった気がするが、祖父である私の父と将棋を打てるほど大きくなっていた。初めてお年玉を上げたが兄の前で大人ごっこをしているようでなんだか気恥ずかしかった。
午後は妻と益子に移動して宿に一泊した。初詣に行き、妻がおみくじを引いている時にiPhoneから警報が鳴り響いて地面が大きく揺れた。手放しでおめでとうとは言えない一年の始まりとなってしまった。
東京都現代美術館にデイヴィッド・ホックニーの展示を観に行く。とにかく描くのが好きでたまらないという印象。アート好きな妻の影響でよく美術館に行く、というか連れて行ってもらっている。私はアートの素養がないので正しく受け止められているのか分からないけど行くと毎回「ああ、これ好きだな」という作品に出会えるので楽しみとしている。
ああ、今年は父親になる年なのかとハッと気づく。
2月
東京に大雪警報が出た夜、家に帰る人々をベランダから眺めていた。足元が悪くなる前に帰ろうと皆足早だった。降り積もっていく雪を家の中から眺めるのは何歳になっても興奮する。翌日の仕事の足止めの事さえ考えなければ。
出産予定日まで4ヶ月。この時はまだ全く実感がなかった。
3月
念願だった幡野広志さんのワークショップに参加した。写真がブームだと言うけど街中でカメラを持っている人をほとんど見かけないので、カメラを持った人達が集まっているのを見てやっぱり写真を撮る日々を送っている人が確かにいるんだなと実感した。人との距離感を意識する事でこの日を境に写真を撮る楽しみがさらに増していった。
出産前最後の旅行との事で群馬の美術館に行き、水沢うどんを食べて温泉宿に泊まった。もしかしたらこの先10年以上二人きりで旅行に行くなんてことは出来なくなるんじゃないかと話していた。
それが嬉しい事なのか寂しい事なのかよく分からない。
明らかに妻のお腹が大きくなって来た頃。父親になる実感がない自分に焦りというか情けなさを感じていたが、あまりの仕事の忙しさに流されて日々が過ぎていった。そんな私をよそに妻は着実に母になっていった。
4月
出産を2ヶ月後に控えた時期に新型コロナに感染してしまった。妻にはリビングで寝てもらい隔離生活となった。一人だったらどうなっていたか分からないぐらい辛かった。それ以上に自分も感染していないかというストレスというか恐怖を妻に与えてしまったと思う。
映画館でPERFECT DAYSを観た。平山がThe Animalsを聴きながら走っている高速道路が、私が毎朝仕事で通っている場所だったのでもうその時点で没入してしまった。初めて聖地巡礼なるものをした。あの自販機は置いていなかった。
Michael KENNAの写真展を観に行く。ホック二ーと同じで写真で表現するのが好きなんだろうなあと思った。一つのスタイルを長年維持するというのは「飽きられないかな」という恐怖に駆られるんじゃないかと思ってしまう。「いや同じ事なんかやってないよ」と言われたりして。
この月で43歳になった。
5月
20年来の友人ふたりと高円寺で会食をする。一人は私より年下でありながらもう成人した息子と女子高生の娘を持つ親としての大先輩だ。父親とは夫とはかくあるべきというありがたい訓示をいただく。二人とも昔から人生の分岐点において厄介な相談にのってくれる大切な存在。私がぐだぐだとその時々の悩みを打ち明けるといつも「バッカじゃないの」と笑い飛ばしてくれる。
妻が臨月に入りいよいよ実感が湧いてくる。お腹を蹴っているのが分かるし、エコーでも顔が判別できるようにうなった。流石に実感が湧いてきたが焦りとか不安の方が大きかった。こんな自分が人の親になれるのかという不安だった。
葛西臨海公園に結婚三周年記念の写真を撮りに行く。真夏のような日差しのなか、来年は3人で撮るんだろうなと考えていた。
6月
予定日より3日ほど早く娘が産まれた。陣痛開始から16時間ほどかかり安産とはいえない出産だったが、母子ともに無事で産まれた事で何より安心した。この時の気持ちは未だにうまく言葉にできない。とにかく私の人生においで最大とも言える大切な場面に立ち会ったという気持ちは覚えている。
退院して1ヶ月半ほど妻と娘は妻の実家で暮らした。大事な日々だったけど将来娘は覚えていないだろうから写真をたくさん撮った。
妻と娘は自宅に戻り3人での暮らしが始まっている。勤務先の会社は育休が取れるような余裕のある会社ではないので平日の昼間は妻に任せきりになってしまう。休日も授乳とミルクとオムツ交換であっという間に1日が過ぎていく。不安でいっぱいだったし今も不安だらけだけど「今のところなんとかやれてるじゃないか」と思う。周りの人たちのサポートと想いに感謝しつつまた日々が続いていく。