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写真をやめないために私がやらない事
村上春樹のエッセイみたいなタイトルだけど、かつて一度やめた写真を続けられるように私が心がけている事がある。それは自分が「特別な何者かである」と思わない事。ここでいう「何者か」とは何かを表現する事で地位や名声があり称賛を浴びる人のことだ。
写真に生きて写真に死んでいった著名な写真家たちが何を考え写真に取り組んでいたのかに迫って自分もそうありたいと意気込んで写真を撮っていた。そしてそうなれないと気づいた時にすっぱり撮ることをやめてしまった。その時考えていたのは「自分がどうありたいか」だけだった。被写体(物、人問わず)への敬意など微塵も気にした事がなかった。
先日参加した幡野広志さんのワークショップ「いい写真は誰でも撮れるその3」はまさにその事を改めて思い出させてくれる内容だった。
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その2に続けて参加した今回のテーマは「写真をやめずに続けていくためにはどうすれば良いか」ということ。幡野さん曰く写真ををやめてしまう人がはまる落とし穴があるとの事。全くもって自分の事だなと思った。その話を聞きながら自分は特大の落とし穴にはまっていたなと感じたが、その当時はそれが落とし穴などと思っていなかった。単に自分に才能や実力が無く自分の写真には価値が無いと思っていた。そして撮る意味を見出せなくなってしまい写真をやめた。飽きたというより撮るのが辛くなった。
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とにかく幡野さんの言葉の数々の核となっているのは「被写体への敬意」だろう。機材の選択から撮り方(光、距離、構図etc)、現像から発表の仕方まで。自分が何者かであるかどうかなんて「被写体への敬意」の前には何の意味もない事だと気づいた。そして撮った物や人について何を感じたかを書く事は、改めて被写体の事を考えていたかについて思い返す作業だと思う。
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写真の落とし穴についてのヘビーな話のあとは小池さんの美味しい昼食を食べて、午後は現像やセレクトの実践的な話。どの写真をセレクトするか、現像で被写体のどの部分に注目するか(または注目をそらすか)。全ては撮られた人が観たらどう思うかが主軸になっていると感じた。そこをないがしろにして○○万円のカメラの特性を活かそうなどと考えてはいけない。たとえ高名な写真家が使っているのと同じ高価なレンズでも、その被写体に適していなければいい写真にはならない。
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自分でもお気に入りの写真で幡野さんに「いいね」と言っていただいた。
幡野さんの言葉を余す事なく血や肉にしようと集中しているからだろう、10時から17時半まであっという間だった。自分と世間との関わり方について考え直す哲学のような時間だった。いい写真を撮ろうと心がける事は写真に写った他者を通じて、より良い自分になろうと考え続ける作業なんじゃないかと思った。
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再び写真の楽しみを教えて下さった幡野さん、今回も呆れるほどのパソコン音痴をフォローして下さった狩野さん、美味しい食事でリラックスさせて下さった小池さん、初対面で声をかけて下さった辻さん、ありがとうございました。
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余談
ラジオやワークショップ内で幡野さんが「これ描いて死ね」という漫画を紹介している。趣味で漫画を描くのはいいけどプロを目指すと辛くなるという内容。
それの写真版と言えるのが山川直人さんの漫画短編集「地球の生活」に入っている「カメラの話」。プロカメラマンを目指す男性と趣味で撮る男性。最終的に幸せになったのは…という少し怖いお話し。
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