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ブラジルに触れた夜

秋の一夜、Blue Note東京にてJOYCEのライブを観てきた。Joao Donatoが亡くなってしまった今、Joao Gilbertoなどと活動していたボサノバ黎明期の空気を知る数少ないミュージシャンだと思う(去年来日したMarcos Valleは81歳とは思えない元気さだったけど)。何せキャリアが長いので全ての作品は把握できていないけど1968年に発売されたファーストアルバムはLPでよく聴いていてブラジル音楽が好きになったきっかけの一枚。

そんな彼女の歌を聴くために南青山へ向かう。正直言って全く馴染みのない場所である。だけどガサツな人間がいなくて心に余裕のある人が多い気がする。会場に着くと外国人の男性が自撮りでBlue Noteの看板を撮っているので「撮りましょうか」と声をかける。聴くとパリから来た観光客との事。音楽が好きで先日はJohn Mayorを観たと言う。とにかく日本は食もファッションも文化も全て素晴らしいとベタ褒めだった。話が弾んでそれでは良い旅をと別れたんだけど、これだけ自国を誉めてくれた旅の人になぜ「一杯奢らせてくれ」と言えなかったのか。そういうところだぞ。

何食わぬ顔で会場入ったけど初めてのBlue Noteである、緊張した。席でビールを飲んでいるとSambaqui Jazz Trio(ピアノ、ベース、ドラム)を引き連れてJOYCEが登場。重厚な会場だけど音楽は至って軽快。JOYCEの歌とギターが上手いのはもちろんなんだけどバックのトリオのリズム感が素晴らしかった。「ブラジル人のリズム感」としか言いようがなかった。

ゲストはコロンビアのハープ奏者Edmar Castanedaと言う人。全く知らないアーティストだったけど技巧が凄すぎて唖然としてしまった。50本ぐらいある弦(47本らしい)を2本の手で操るのを観て「1日どれぐらい練習すればこうなるんだろう」と素直に思ってしまった。

ブラジル音楽のどこが好きなんだと言われるとよく分からない。ただアメリカ音楽やイギリス音楽にはない郷愁感(saudade)が日本の童謡や民謡に通づる気がする。
郷愁感溢れるリズムに浸った良い夜だった。


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