日本料理の心は、日本建国の心
食育日本料理家という唯一無二の肩書を持つ梛木春幸さんの初の著書、「フランスで大人気の日本料理教室」を発売日の昨日、早速購入しました。
一気に完読して、その感想。「日本人なのに知らなくてごめんなさい…」という反省が最初。そして、感動!
日本料理は日本の心。そうだとは思っていました。
でも、梛木さんの本を読んで、日本料理は日本のもっと深いところ、日本の国柄までも象徴しているんだと初めて気づきました…
日本料理とは、子孫の繁栄の祈り
日本の食文化とは、
先人たちが1000年以上前から「子孫が健康で少しでも長生きできるように」と伝えてきた
と、梛木さんは言います。
食べる人の幸せを祈って作るだけでもすごいと思うのに、さらに子孫の繁栄までも祈っているなんて…そんな料理は世界中どこを探しても日本料理以外にない!
梛木さん曰く、現在の日本料理の原型は、奈良の大仏のお供えにあるのだそう。
奈良の大仏といえば、奈良時代、日本に天然痘が大流行して、さらに飢饉が発生して人口の30%が亡くなったという未曽有の国家的危機を乗り越えるために作られたものです。
なるほど「国の平安と国民の健康」を祈って大仏様に捧げられたわけですから、日本料理が子孫の繁栄を祈るものであるのもうなずけます。
でも、梛木さんが僕の専門である神話の話しに触れられたところを読んだとき、僕の心に衝撃が走りました…
日本料理の心は、日本建国の心と同じだ!と…
お米には天照大神の祈りが込められている
日本料理に欠かせない食材は何といってもお米。このお米、実はルーツは神話にあるのです。梛木さんは、このことに触れています。(69ページ)
現在の天皇の祖先にあたる天照大神が、孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に稲穂を渡して「この稲を育てて日本を豊かにするように」命じたという話です。
これは、天孫降臨の有名なエピソード。
このとき天照大神は、瓊瓊杵尊に八咫鏡(やたのかがみ)を渡して、国を治める者としての心得を説いています。
「この鏡を私だと思って毎日映しなさい、もし民を苦しめるような自我があったら取り除きなさい」
つまり、かがみからがを取って、かみ(神)の心を忘れないようにしなさいね。ということですね。
梛木さんも、鏡餅のルーツは※三種の神器にあるというところで、このことに触れています。(93ページ)
三種の神器は、瓊瓊杵尊から初代天皇、神武天皇へ。さらに、現在の126代目の今上天皇にまで受け継がれています。その間2680年。天皇は代々、天照大神の祈りを繋いで国を治めてきたのです。
祈りで国を治める、これこそが日本が世界で最も長く続いている秘密なのです。
※三種の神器 1.八咫鏡(やたのかがみ)2.草薙剣(くさなぎのつるぎ)3.八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)
世界で唯一のシラス国、日本
民と王が一体化する国、シラス国
日本は、現存する国家の中で最長の歴史を誇る国です。なぜ、日本は建国以来滅びることなく今に続いているのか?
それは、我が国がシラス国だから。シラスとは、統治する/治めるという意味の言葉。古事記や日本書記に出てくる言葉です。
シラスの語源は「知る」。天の心=天照大神の心を知り、民の心を知る。神の心と民の心に同化する。それが、日本における国を治める=シラスということなのです。
権力支配の国は必ず亡びる
一方、西洋では国王が権力を持って、国を支配してきました。王権神授説といって、神が王に国を支配する権力を授けたのだから王に歯向かってはならない、という考えです。中国も権力者が支配する国でした。
このように、権力支配によって成立する国のことをウシハク国といいます。
しかし、権力はやがて弱まり、より強い権力に取って代わられます。ウシハク国は必ず亡びる。覇権争いによる栄枯盛衰を繰り返してきたヨーロッパと中国の歴史が、それを証明しています。
日本でも、武士が覇権争いをしていた時代がありました。それでも、国を統治する実権は、天皇から委任されたに過ぎませんでした。将軍といえども征夷大将軍というポストは天皇から与えられたものでした。
武士が政権を持った時代でも、天皇は常に国民に寄り添う存在としてあり続けました。それこそが、世界史上例を見ないシラス国である何よりの証明。日本が最長の歴史を持つ国である理由です。
天皇が祈りによって国民に寄り添うシラス国。神話時代の心が現代に伝えられている国は、日本以外、この世界には存在しません。
日本人なのに知らないのはもったいない
本の帯に書かれているこの言葉。1000年以上の歴史と伝統を今に伝える日本の食文化を日本人が一番知らないことに、梛木さんは、危機感を募らせています。
その想いはプロローグの
日本の食文化を絶滅させてはいけない
という言葉に表れています。
グローバルビジネスの世界でも、日本人は自国の文化や歴史を知らないというレッテルが張られて久しいところ。ビジネスエリートには今、利益を上げるノウハウよりも、教養が求められています。
日本人にとって最も必要な教養は、日本の歴史と文化を語れること。
「フランスで大人気の日本料理教室」は、とても読みやすいので気が付いたら沢山の知識が身に付きます。日本人としての教養を身に付けるための入門書として最適。おすすめします!
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