「こんなに好きになるなんて」 -2024/9/8 JumpingKiss 鈴木陽依梨卒業(前編)-

 noteに記事をアップするのは9ヶ月ぶりとなる。
 noteはおろかXにもあまり書いていなかったが、今の自分にとって一番の「推し」であるJumpingKiss(ジャンキス)の鈴木陽依梨ちゃんが、一昨日2024/9/8に卒業を迎えた。

 アイドルを好きになるとき、「遅かれ早かれどの道好きになっていただろうな」というケースと「ちょっとしたボタンの掛け違いがあったらおそらく好きになってなかったよね」というケースがあると思うが、彼女は間違いなく後者のケースだった。
 ジャンキスは、本来ならば自分が好きになるはずのないアイドルだった。それがいつの間にかどうしようもなく好きになり、一昨日の卒業公演のラスト曲では涙を隠し切れなかった。

 「こんなに好きになるなんて」。この記事のタイトルは、同名の彼女たちの持ち曲のタイトルをそのまま持ってきている。ジャンキスの中でも1,2を争う好きな曲であり、そしてまた一昨日卒業を迎えた彼女に対する自分の気持ちにこれほどぴったりな曲もないからだ。
 出会ったときには想像しなかった彼女を好きになっていった思い出を、ひそやかながら記しておきたいと思う。
※ 全2回構成の予定

ジャンキスとの出会い

 JumpingKissとはどんなアイドルなのか。公式ホームページには以下のような記載がある(厳密には「あった」。卒業翌日にははやくも差し替えられていた)。

JK1の鈴木陽依梨と山田莉愛、JK2の秋月柑七の女子3名で活動するガールズユニット「JumpingKiss」
合言葉は「わたしたち、綺麗なお姉さんになります!」

Jumping Kiss Profile

 そもそも情報量が少ないがこの説明を読んでどう思うか。年齢を前面に押し出した(というかそれしか情報がない)メンバー紹介、敢えて幼さを感じさせるようなキャッチフレーズ。直近のポリコレ的な風潮において少し危険な香りを感じたとしたら、「その直感は当たっていますよ」と伝えたい。

 自分がジャンキスのことを知ったのは2020年の9月頃だった。付き合いの長いヲタクの友人が「久しぶりにドハマリする大阪のアイドルを見つけた!!!」というので話を聞いたところ、なんと小学6年生だという。ちっちゃくて丸顔のアイドルが好きだという彼の趣味からするとそこまで意外というわけでもないが、それでも流石に小学生にはドン引きした。
 彼は推しである山田莉愛ちゃんのことを「山田ちゃん」と呼び、それからいかに山田ちゃんが可愛いかをことあるごとに熱く語るのを適当に聞き流していた。そんなある日、「最近山田ちゃんに加えて同じく小6の鈴木ちゃんも気になってるんですよね…!」と言い出して、山田でも鈴木でもどっちでもええわ!となった。

 今でこそ東京での活動が多いジャンキスであるが、当時は大阪の本拠地「スタジオアクト」にておこなわれる公演「アトリエクラブ」での活動がほとんどであった。自分も友人も当時東京に住んでおり、友人はジャンキスに出会ってからは何度も大阪遠征をしていた
 その当時は(今となっては懐かしい)「Gotoトラベル」の影響で新幹線往復+ホテルで実質1万円程度と破格の価格設定であり、ジャンキスを見に行く彼と同タイミングで自分も大阪に旅行することになった。現地では別行動をしていたが、観光も少し飽きてきたタイミングで、思ったよりスタジオアクトが近いことがわかり、彼がそこまでいうジャンキスを1回見てやろうと100%興味本位で行くことにした。
※ 本来は「スタジオアクト」がハコの名称としては正しいのだと思うが、その友人とハコを含めて「アトリエクラブ」と呼んでいたので、不正確を承知で以下アトリエクラブと呼称します

 はじめて足を踏み入れたアトリエクラブの記憶は今となっては曖昧だが、小中学生アイドル現場の例に漏れず、良い歳したヲタクがバズーカみたいなカメラで小中学生アイドルをひたすら撮影している現場だった。「うわやっぱりこうなんだww」という笑いはあったが、もちろんそれはポジティブな感情ではなかった。小中学生の作り上げるステージのクオリティだって言わずもがなだ。言い方は悪いが「自分にとって食指が動く現場ではない」ことを再確認するためだけに行ったようなものだった。
 とはいえそんな事は百も承知だし、そもそもが友人の好きな現場をひやかしにいくという目的であり、特段ジャンキスの評価が上がることも下がることもなかった。

 ・・・などと書いておいてあれだが、実はこの時に「鈴木ちゃんって子はちょっと好きかも」くらいには思っていた。とはいえ小学六年生はアイドルとして見る年齢でもないし、「ジャンキスの中であえて順位をつけるなら」程度の話でしかなかった。
 その1年後くらいにその友人と別件で一緒に大阪に行くことがあり、友人はジャンキス現場をまわしていたが、自分として1回見たのでもう十分だった。ほどなくして彼が海外赴任することになり、ジャンキスの話をする機会もほとんどなくなっていった。

久しぶりのアトリエクラブ

 時は流れて2022年の冬、自分にも久しぶりに「推し」ができた(この話はおそらく後編で触れることになると思う)。
 X(当時はまだTwitterか)で熱量溢れるツイートを連投したところ、海外にいる友人から「最近楽しそうじゃん」と連絡がきたので、自分が今好きなアイドルの話をしたところ、ネットで少し調べてくれたりして、頻繁にLINEをするようになった。
 そんな折、ひょんなことから大阪に数日間行くことになり、1日だけ夜の予定が空いてしまった。ふと彼が好きなジャンキスのことを思い出して調べたところ、アトリエクラブ公演があることが分かった。暇つぶし半分・彼が好きだったアイドルの近況を覗いてきてやるか半分で、約2年ぶりにアトリエクラブに足を踏み入れることにした。

 2年ぶりに見るジャンキスは、良い意味で少し「緩い」現場になっていた。平均年齢が少し上がったこと(小学生メンバーは全員中学生になった)、カメコ受けするメンバーが卒業したことで、おそらく最も先鋭化した層のファンが抜けた影響なのではないかと思っている。
 そんな少し緩くなったジャンキス現場で久しぶりに見る鈴木ちゃんは、その独特のほんわかした雰囲気が現場の緩さとマッチングして、なんともいえない魅力を醸し出しており、これはこれで悪くない、と思うようになった。

 なによりも自分がジャンキスを見る原動力となったのは「涙目ピースサイン」をカバーしていたことだ。
 ジャンキスは彼女たちの事務所の先輩にあたる?アイドルユニット「JK21」の曲をカバーしている。自分はJK21のライブを見たことはなかったが、関西地下のレジェンド的存在であるその存在は昔から知っており、代表曲である涙目ピースサインは他のアイドルのカバーで何度か聞いたことがあった。そしてまた、この曲がレジェンド関西地下アイドルの代表曲の名に恥じぬ名曲であることも知っていた。
 友人からジャンキスが涙目ピースサインを良く披露することは聞いていたし、一回は聞きたいと思っていた。ある意味お約束であるが、期待すると涙目ピースサインは披露されないのであるが、それがまた「涙目ピースサイン聞きにきたのにやらないんかーい!笑」と言う「お約束」をさせてくれることに満足感があった。

 この段階では先述の「推し」への熱量が一番高かった時期でもあり、ジャンキスへの評価はあがったものの、あくまで「タイミングが合えば見てもいいかな」と思う程度であった。翌月も大阪にいく機会があったのでアトリエクラブにいったり、東京で推しの対バンと被って見たりしたが、逆にいえばタイミングが合わなければわざわざ見るほどでもなく、そこからまた次にジャンキスを見るまでには半年ほど空くことになる。

「この世界はまるで地獄だね」

 2023年9月、海外に赴任していた友人が数年ぶりに日本に一時帰国することになった。お互い地方アイドル好きなので、日本全国好きなアイドルの現場を巡ろうということになり、愛媛やら群馬やら名古屋やら計画している中に、当然ながら彼の愛する「大阪のJumpingKiss」も入っていた。

 彼の付き添いで見た約半年ぶりのジャンキスは、良くも悪くも前と変わらないなという感じだった。以前に引き続き全体的に好印象ではあったものの、海外在住でジャンキスに飢えていた友人の「こんなん大阪住んでたら通い続けるわ!!」とテンションあがる姿に(まあ俺はそこまででもないな…)と逆張りマインドが顔をだしたことは否めない。
 結局1回付き合った後は、もう十分とばかりに自分は自分で大阪の好きなアイドルの現場に行ったりした。

 大阪にいった翌週もまた彼と関東近辺で遊んでいたところ、ちょうどジャンキスの東京遠征のタイミングと重なり、夜公演がまわせることがわかった。意気揚々と計画をたてる彼を横目に、自分はもう大阪で1回みて満足したし適当に時間つぶしているから終わったら合流して飯だけ食べようなんて話していた。ところが諸事情で彼がチケットを2枚予約してしまい、「無駄にするくらいなら」とタダで譲ってもらい見ることになった。

 このかつてないほど雑な気持ちで見ることになったジャンキスの東京公演は、あまり上手く表現できないのではあるが、とてもとても素晴らしかった。
 ここまで読んできてもらえばわかると思うが、自分はこのジャンキスというグループを少し小馬鹿にする感じで見てきた。前よりは「緩く」なったとはいえ、バズーカを抱えたヲタクが未成年のアイドルを血眼になって撮影するような現場だ。あえて言葉を選ばずにいうが、「こんな環境でしか活動できない可哀そうな子達」という感情があったことは否めない。

 このとき披露されたのは、まねきケチャの「きみわずらい」のカバー。地下アイドルのカバーとしてはド定番のこの曲の「この世界はまるで地獄だね」という特徴的なフレーズは「(君のことが好きすぎて)地獄」という意味であることを今さら言うまでもないが、バズーカヲタクに囲まれながらこの曲を歌う姿に「一周回って文字通りの地獄やん笑」と最初は笑いながら聞いていた。
 でもこのカバーを楽しそうに歌ってる姿を見ているうちに、何か感じるものがあった。デビューしたての小学生の頃ならともかく、中3にもなれば自分の置かれている環境について何も考えないということもないだろう。
 「この世界はまるで地獄だね」。一体どんな気持ちでこの曲を歌っているんだろう。地獄だと分かっていて、それでもあえてステージに立ちたいと思うのであれば。深読みだと分かってはいるのだか、色々なことを考えると、今迄みたいに小馬鹿にすることはとてもじゃないができなくなってしまった。

 そして叩き込むように、ラスト曲はずっと聞きたかった「涙目ピースサイン」。イントロを聞いたときには、正直鳥肌がたった。
 終わった後、友人に対して「この公演を無料で見たという事実に自分が耐えられないから、チケット代を払わせてくれ!!」とある意味めんどくさい絡みをしたことを思い出す。
 ここに来て、ずっと「ネタ」として消費してきたジャンキスを、ちゃんと「アイドル」として見るようになった。

(続きます)


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