未必の故意は過言か
堀江貴文氏の餃子店でのマスク着用を巡る発言に対して批判が集まる。同氏に同調した人々が餃子店に威力業務妨害罪を敢行。これに対して餃子店が経営悪化の声を上げるや否や一転して同氏のSNSに誹謗中傷が行われ、誹謗中傷の声を静止しない立場に「未必要の故意」があったのではないかという声が話題となった。
未必の故意とは、刑法学における概念だ。例えばエイズ感染者が相手と性行為をして相手が死に至るエイズウイルスを故意的に感染させた場合、相手が内心で死んでもいいと考えた場合などに用いる。これは刑法を含む近代法概念と哲学が、故意犯と過失犯を峻別していることによる。つまり、過失でエイズを移す医療過誤とエイズ感染者が故意に移すのでは刑法が処罰する罰則の軽重を分けていることによる。
このような刑法概念の未必の故意が、堀江貴文氏に適用されるかというと、原則あり得ない。少なくとも餃子屋の店主は生きており、刑事事件ではない。少なくとも、民事における不法行為責任は成り立つ余地が大いにあり得るが、刑事事件に関しては法益侵害が威力業務妨害罪と名誉毀損罪及び侮辱罪しか存在しない。
今回のケースで堀江貴文氏を刑事事件で処罰しようと願うのであれば、名誉毀損罪若しくはハードルを下げた侮辱罪で告訴状を作って最寄り警察署の刑事課に行くしかない。ただ、そうした法律のテクニカルな方法を餃子屋の店主が知っているかは定かではない。
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