病んでるヤブ医者元谷さん #2「吐瀉」
高橋は憂鬱な面持ちで自宅のマンションのエレベーターに乗っていた。
今日の父は”どちら”だろうか。
躁なら適当にあつらえばいいものの、
鬱の場合はまた俺か母に暴力を振るってくるだろう。
以前に受けた打撲跡がじんわりと疼く。
だがそれは、痛みとは違う重さのようなそれだった。
自分が感じる痛みには、いつの日からか慣れていた。
麻痺したのか、”そういうもの”として受け入れるようになったのかわからない。
だが、母に危害が加えられないように気を遣うとなると…
ただでさえ実家は居心地が悪い