大人になったら
大人になったら、添乗員になって世界中に行きたいと思ってたけど、中学に入学して英語が好きになれずに諦めた。
子どもの頃から大本が好きで、将来は実家の蔵書を引き継ぎ、私設図書館を作りたいなぁと思っていた。だから大人になったら司書になりたい思ったけど、なんとなくやめた。
将来は保健室の先生になろうと思ったけど、学校に落ちたからやめた。
一生働ける仕事に就きたいと、たくさん学校に落ちたけど、それでもなんとか看護師になれた。
20代の私は、仕事、結婚、出産と、どんどん前進し続けた。けれど生まれた子どもに障害があり、体力的にも続けることが難しくなった。せっかく頑張って取った資格だからと、嘱託、パート、アルバイトと、あらゆる形態で仕事を続けた。
ところが夫が急死し、頑張ってきた全てをやめざるを得なくなった。
人は簡単に死んでしまうことを目の当たりにして、「自分がやりたいと思っていたことは、さっさとやらねば、私も明日には死んでしまうかもしれない!」と思った。
不思議なことに、新しい友人からのお誘いで、添乗員に近いような海外で仕事をする機会に恵まれた。古い友人からの声かけで、保健室の先生では無いけど、看護教員として実習指導にあたることになった。ある日本の重さを実感して、実家の本を含めて蔵書を処分し、司書になることに未練は無くなった。
両親に子どもの世話を頼み、単発で仕事をして、同時に蔵書の処分と断捨離行った。同時に夢であった通信制の大学に編入した。この2年間は記憶のないほど多忙だったけど、これまでの人生で、諦めてきたことや、先送りにしてきたことを全て回収することができた。
夫のものは全て処分し、部屋はガラッとして不必要なものは何も無くなった。このタイミングで携帯も壊れたので友人知人の連絡先もゼロになった。
長年自分が抑え込んできたことをやり終えた時に、私はやっと子どもに目を向けることができた。
子どもたちの進路に関して勉強を始めた。仕事にかまけて家事も適当にしていたけど、家計の管理や料理、掃除の本を読みやれそうなことを実践するようにした。
やっと親として生きていく、私は「やっと大人になれた。」そんな気がした。