金柑三景
「金柑を送ったよ。」友だちからのメッセージに胸が踊りました。懐かしい金柑の思い出が甦ってきました。
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中学の頃、金柑を毎日のように食べていました。母が買い与えてくれたのか、はたまた誰かに頂いたのか、とにかく尋常でない量の金柑を1人で消費していました。金柑が好きで好きでたまらなくて、来る日も来る日も金柑を食べていました。
金柑の季節が終わる頃、「一生分の金柑を食べたから、もう金柑はいらない。」と宣言し、それ以来金柑を口にすることはありませんでした。それ以来、1つも食べていません。
だから友だちの送ってくれる金柑は実に40年ぶりに口にすることになります。
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金柑といえば、友だちの実家の風を通し行くのに付き合いました。田舎の大きな家に住んでいたご両親はお父さまは入院し、お母さまは友だちの近くに引っ越しました。だから誰も住む人がおらず、友だちが実家を管理していました。
家中の窓を開けながら歩きました。よくお邪魔した友だちの部屋は、がらんとしていました。良くお昼ご飯をご馳走してもらった台所は寒寒としていました。誰も住まない家は寂しげでした。
この古い家には子どもがいると聞いていました。座敷童みたいなものでしょうか、ついぞ私は見かけることがありませんでした。そんな話をしながら友だちがガチャリと玄関の鍵をかけました。その家はまた静寂に包まれました。
庭に金柑がなっていました。「あまりマメに来れないから、全部摘み取りましょう。」私と友だちは小ぶりな金柑を全て摘み取りました。金柑を半分こしましたが、まだ若くて食べれそうにありません。久しぶりの金柑との再会でしたが、私は全てをジャムしにました。
居心地の良いあの家の最後の思い出は金柑ジャムにでした。
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宅配便が到着しました。つやつやと輝く金柑が箱の中にありました。真ん中には巨大な大根がありました。大根の王様の周りにいる金柑はちいさなお姫様のようでした。友だちのご実家からのお裾分けです。綺麗に梱包されていました。
早速、宝石のような金柑を1つ食べてみました。40年ぶりの金柑は甘くて少しすっぱい懐かしい味がしました。もう一生分食べたつもりでいましたが、私は次々と金柑を食べました。このままだと一気に全部食べてしまいそうです。その前に野菜室にいれました。
かつて私を魅了した金柑への愛が蘇ってきました。独り占めしたいほど金柑は美味しいのです。そうです。弟にあげた記憶はありません。きょうも金柑たちのことは息子には内緒にしておこうと思います。
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金柑と大根への感謝の気持ちを込めて、A子さんと、大根をつくってくれたお父さんの住む場所がよく晴れ暖かい日であることを願っています🍀
心よりありがとうございました。