裕次郎、いいですよね!
先週、友人宅のランチ&お茶会に呼ばれました。
メンバーは50代独身キャリアウーマンのYさん、本日のホスト、もうすぐ44歳、ワーキングママのCさんと、私(50代)の3人。
仕事で出会った私たちは「インテリアと音楽が大好き」が共通項。
久々の再会は、お互いの近況報告から。
プロのインテリアコーディネーターであるYさんは、有名ブランドのショールームへの視察や、現在手掛けている仕事のこと等々、相変わらずの活躍。そして近況報告の最後、寂しそうに語り始めました。
「実は、今年の1月に母が亡くなったんです」
仕事が忙しい中、母親に尽くすYさんの頑張りは、以前から知っていました。遠距離介護の大変さ、たくさんの愛情をもらったこと、いつも彼女のことを応援してくれたこと……堰を切ったように、母親への思いをひとしきり語ったYさん。
「今は、母に見守られているような気がするんです」と、目を潤ませながら、笑顔で話すYさんの清々しい表情に、目頭が熱くなるCさんと私。
「最近、母が好きだった裕次郎の歌がいいなぁ、って思うようになって。
昔の歌だし、聴いたことも無かったけれど、母の葬儀のとき、参列のお迎えの曲で流したんです。
何度も聴いているうちに、裕次郎いいなぁ、って。あの人俳優さんだから、歌手の人とちょっと違うというか、なんか……いいんですよね」
裕次郎とは、「銀幕の歌う大スター・石原裕次郎」のこと。
「わかる、わかる! 裕次郎、いいですよね!」と、私もすかさず同調。
夫の父の遺品であった裕次郎のCDを聴いたとき、「歌にも『男前』というものがあるのだな」とシビれました。ダンディで色気のある歌声と歌い方は唯一無二。親世代の憧れのスターであったことに納得したものです。
Cさんが「石原裕次郎って、名前は知っているけれど、歌はよく知らないんですよね」といいつつ、Spotifyを検索、裕次郎の名曲を流してくれました。
さっきまでスウェディッシュミュージックが流れていた、おしゃれな北欧インテリアのリビングダイニングに、昭和ムード歌謡が響きます。
意外にも、裕次郎の歌声は、木質感のある北欧インテリアにぴったり。
独特の声のゆらぎが、ぬくもりと安らぎを与えてくれます(……と思うのは私だけか?)。
裕次郎の歌に合わせて、「よぎりよ~ こんやも~ありが~と~お~」「わがじんせいに~くい~はなし~」と歌う、50代の女2人。
2人とも、涙目で裕次郎を歌うとは思いもよらなかったこと。
若い頃は「親世代の懐メロ」と、聴くこともありませんでした。
しかし、親の「死」をきっかけに、親の好きだった音楽を聴き、懐かしみつつ、裕次郎の素晴らしさに気づくことに。
そして、気づいたのは裕次郎のことだけではありません。
Yさんの話を聞きながら、身近な人の「死」とは、別れであると同時に、様々なことに気づき、感謝し、自分の過去と未来を考える、人生の中で必要不可欠なものなのかも、と思えてきました。
な~んて、真面目に考えるよりも、故人が好きだった音楽を楽しむのが、一番の供養かと。
そして故人のことは忘れて、今の自分の人生を楽しんで生きていくことが、故人の願い、と思いたいものです。
Yさんにとって裕次郎の歌は、普段は心の宝箱にしまっておいて、寂しくなったとき、そーっと箱から出して、大切に聴く音楽のひとつとなったのでしょう。
裕次郎の歌を何曲か聴いた後、Yさんは、少し前までハマっていた、ネットフリックスドラマ「初恋」について熱く語ってくれました。
「佐藤健がカッコよくて、満島ひかりの演技がとにかく素晴らしいんです」
「ドラマのモチーフとなった、宇多田ヒカルの『First Love』を聴くたび、胸がキュンとなるんです」と、少女のようなキラキラな瞳で話すYさん。
天国のYさんのお母さん、安心して下さい。
Yさんがネットフリックスと契約している限り、しばらく裕次郎の出番は無さそうです。
また、お会いしましょう。やんそんさんでした。