最近観た劇場公開・配信映画(2021年11月)
2021年11月に観た劇場公開・配信映画の感想レビューです。映画上映もほぼほぼ再開して、追っかけているシリーズ物(マーベル)や音楽系作品などの個人的に観なきゃいけない作品を観てるだけで精一杯という嬉しい悲鳴。適当に観てお気に入りを見つける体験もしたい。。。
ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネージ(劇場公開)
2018年公開の前作は、予告編のダークな世界観に期待した状態で観に行って、予想を大幅に裏切るエディとヴェノムの掛け合い漫才的なコメディノリに拍子抜けして残念な印象しかなかった。そんな『ヴェノム』の続編ということであまり気乗りしなかったが、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の中に有る限り観ないというチョイスがない(ここが完全にマーベルの術中にハマっているようで悔しい…)。今回はコメディノリは織り込み済みなだけあって、余裕を持って「ハイハイ、このノリね。言われ放題のトム・ハーディの困り顔はなんだかんだでカワイイな笑」と肩の力を抜いて楽しめた。所々、普通に吹き出し笑いも。
ただ、コメディノリの軽さがストーリー自体にも見られるため、ご都合う主義や、割と大事な局面でも出されるギャグに、話自体もどうでもいい感じに思えてしまうのが正直なところ。
ヴィランのクレタス(ウディ・ハレルソン)とフランシス(ナオミ・ハリス)のカップルはフレッシュな組み合わせで楽しかったな。ジョーカーとハーレークインとかもそうだけど、カップルのヴィランってどこか脆さが見え隠れして微笑ましくて好きだ。これは『ヴェノム』の軽いノリにも合っていた。
ウディ・ハレルソンのカップルヴィランといえば『ナチュラル・ボーン・キラーズ』を思い出さずにはいられない。写真探したら、ウディ・ハレルソンは相変わらずって感じだけど、相方のジュリエット・ルイスに甘酸っぱい記憶を引き摺り出された。あの頃、個性派で演技の上手い若手女優の代名詞という感じでたくさん映画出てたなあ。『ギルバート・グレイプ』とか。
本編中に主題歌を歌うラッパーのLittle Simzが登場したのはアガった。エンドロールで流れる彼女の曲『Venom』は無茶苦茶カッコ良い。個人的にはこの曲に流れるようなダークな世界観を映画本編にも期待したいのかも(前作含めヒップホップ楽曲の使われ方は今回も良かった)。
注: 投稿した後に『ヴェノム』は12月に観たことに気付きました…笑
エターナルズ(劇場公開)
クロエ・ジャオ監督によるMCUフェイズ4作品。『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督がマーベル?ということで期待と不安が入り混じった状態で観たけど、結論からいうと最高だった。
まず、ヒーロー映画として全キャラクターにアクションの見せ場があるのが嬉しい。クロエ・ジャオが元々マーベルのコアなファンであるというヒーロー映画やマーベルへの愛を感じた。
そして、これは従来のクロエ・ジャオ的視点のイメージに近いけど、余計な説明無しで当然のように多様性のあるメンバー。これに関しては説明が無いのが不自然、過剰なポリコレの弊害という意見を見たけど、余計な説明が無いことが重要だし(現実世界の多様性に理由がないように)、スーパーヒーローは基本的に白人、異性愛者、健常者に限られていたことに本来は説明が必要だったはずと思う。
また、『ノマドランド』でも印象的だった美しい風景は、今作では地球に規模を広げて登場し、地球の美しさを再認識させてくれる。そして、7000年生きているヒーローという設定を活かした人類の歴史と人間というは不完全な存在へのメッセージ。
これらのヒーロー要素とクロエ・ジャオが持ち込んだ新しい視点が合わさって、期待を大幅に上回るマーベルのネクストレベルを観せられた感覚。続編も楽しみ。
みんな良いのだけど、推しはマッカリ(ローレン・リドリフ)。瞬足移動表現がこれまでの瞬足キャラ(ピエトロとか)と違ってマジで走ってる感があってフレッシュだし、聴覚障害とスーパーパワーの因果関係も良いし、何より戦闘シーンが今まで観た映画の中で1番カッコイイと思った(ドラゴンボールの実写版的な)。それでいて、引き籠りで、表情豊かというキャラ造形が好き。他のキャラクターもスーパーヒーローなんだけどアンバランスな部分があるので感情移入できる(逆にそこが最強のスーパーヒーロー集団っぽくないと思う人もいるのかも)。
サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜(劇場公開・Amazon Prime Video配信)
突然難聴になったメタルバンドのドラマーが、難聴者コミュニティへの参加などを通じて、自らの運命と向き合う実話ベースの物語。
音響演出によって、主人公の聴力が失われていく感覚を観ている側も追体験する(なので、これは確実に映画館で観るのが理想的。配信で観るならヘッドフォン推奨)。
音が聴こえなくなることは「喪失」でしかないのか?主人公が難聴者コミュニティでの生活で感じる新たな希望。人生のステージによって自分の「居場所」は変化していくのかもしれない。生きるということに関して、多くの示唆を与えてくれる作品。
『エターナルズ』のマッカリことローレン・リドロフが難聴者コミュニティの教師役で登場。今作でも表情や手の動きによる表現の豊かさで惹きつけられた。実際に元教師の経歴があるせいか子供への触り方などが自然だし、感情が伝わってくるよう。『ドライブ・マイ・カー』で描かれていたテーマも想起した。
あと、同じミュージシャンの聴覚が失われる話として、2004年公開の『フランキー・ワイルドの素晴らしき世界』というイビザのDJが難聴になる話の映画のことも思い出した。メタルもそうだけど、DJも耳を酷使する職業の一つ。
tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(劇場公開、Netflix配信)
『RENT』の作者ジョナサン・ラーソンの半自伝的ミュージカルを『イン・ザ・ハイツ』の作者リン=マヌエル・ミランダが映画化。三十歳を目前に夢の実現に焦る主人公の物語。アンドリュー・ガーフィールド主演。
終始、鳴り続ける時計の針、迫られる選択、大切な人たちとの別れ、夢を追うことに伴う苦難を突き付けられる中、夢を追う中にしかない喜びがある。
30歳なんてまだまだ若いのでは?と思ってしまうが、ジョナサン・ラーソンは35歳で早逝していることを考えると、時計の針は残酷に進んでいることを思い知らされる。
映画の中には創作活動してる人には刺さるパンチラインが続出。
リスペクト(劇場公開)
アレサ・フランクリンの伝記映画。
フェミニズム、人種差別、依存症と実話なので仕方ないとはいえ、やや軸がぼんやりした印象。ただ、そんな様々な苦難を踏まえた名主演ジェニファー・ハドソンの歌唱が激しく胸を打つ。まさに「ソウル」ミュージック。
制作シーンが長めで、ミュージシャン達のセッションの中から徐々に名曲が生まれてくる場面は鳥肌モノ。
“ブルースの女王”ダイナ・ワシントン役のメアリー・J・ブライジがとても存在感がある役で登場していて嬉しい。Netflixでメアリーのドキュメンタリーを観たばかりだったので尚更。
あと、今年公開したアレサのライブドキュメンタリー『アメージング・グレイス』と繋がる部分もあり、あの教会でのゴスペルライブの文脈がより理解できたのも良かった。
これは君の闘争だ(劇場公開)
2010年代のブラジルで学生運動に身を投じた三人のドキュメンタリー。政治的なメッセージをドラムのリズムに乗せ、ダンスする。心が折れそうな状況にあっても、文字通り鼓舞される感覚。終盤にアカペラで放たれる魂の乗ったラップに震えた。自分の言葉を伝える姿の圧倒的な美しさ。
ブラジルの陽気な国民性に加えて、今っぽい映像演出や三人のおしゃべりを中心で進む語り口がカジュアルなので、暗い部分もある内容ながらも観易かった。
サウダーヂ :デジタルリマスター版(劇場公開)
2011年公開した本作を公開10周年でデジタルリマスター上映。長く続く不況と空洞化の問題を抱える地方都市、甲府を舞台に、土方や移民の外国人労働者たちが過酷な状況の下で生きる姿を描く。山梨が地元のラッパー田我流が主演の一人として参加。
土方、移民、ヒップホップ。地方都市の閉塞感。小さなディスコミニケーションが積み重ってイライラが募り、出口を見失う。公開10年後の今、さらに事態は切実さを増してる。心の中がそのままラップとして出てきたようなシャッター街での田我流のフリースタイルの切れ味が凄まじい。
観たかったけど、パッケージや配信で観ることができないので、やっと劇場で観れて良かった。
感想まとめ
『エターナルズ』のような娯楽超大作でも現代的なメッセージが込められるようになり、インディー的な作品と並列に観れる時代になったと感じる。それは100%喜ばしいのだけど、たしかに何も考えないで観るような映画の需要もあるには違いない。『ヴェノム』のような。そう考えると『ヴェノム』は正しい気がしてきたし、『ヴェノム』と『エターナルズ』が共存しているマーベルの凄さ、逆にちょっと怖さすら感じるな。。。
あとは、音楽に関しても、ただ単独の曲として楽しむのは勿論好きだけど、映画の中で文脈を踏まえて聴いた時のメッセージの強さ、「ソウル」が伝わる感覚を感じることが多かった。
12月も話題作の公開が詰まっているのでいつ何を観るのか計画的に予定を立てよう。とりあえず、実は未見だった『マトリックス』シリーズ3部作を追っかけ観てます。