最近観た劇場公開・配信映画(2021年5月)
5月に劇場公開または配信された映画で観た感想です。緊急事態宣言の影響で多くの映画館が閉まっていたのと、仕事が忙しくて、なかなかスムーズに観たい映画が観れなった。代わりに配信作品とテレビドラマに助けられた今月。
隔たる世界の二人(Netflixオリジナル)
オスカー短編映画賞受賞作。男が愛犬が待つ家に帰ろうとする途中で警察に殺される恐怖を繰り返すタイムループもの。主演はラッパーのJoey Bada$$。
エンドロールを観終わるとタイムループという手法を選んだこと自体が映画のメッセージと深く繋がっていることに気付かされる。
タイトルの『隔たる世界の2人(原題 Two distant strangers)』は2Pac『Changes』の歌詞「Learn to see me as a brother instead of 2 distant strangers」からの引用。そして、劇中で主人公がイヤフォンで聴き、エンドロールでも流れるのは『Changes』の元ネタのBruce Hornsby『The Way It Is』。2曲とも人種差別への抗議をテーマに作られた曲。
ウィズアウト・リモース(Amazonオリジナル)
妻を殺害された特殊部隊員が国際的な陰謀に挑む。
『ボーダーライン』『ウインド・リバー』のテイラー・シェリダン脚本ということで期待していたヒリヒリするような緊張感は正直言って弱め。
ただ、激しいアクションの緊迫感と、それを体現するマイケル・B・ジョーダンの身体的演技の魅力でアクション娯楽映画としては充分に楽しめた。
くれなずめ(劇場公開)
高校の帰宅部仲間6人がアラサーとなり、同級生の結婚式で余興するために集まる。その披露宴から二次会までの数時間の物語。
披露宴から二次会までという誰もが感じる中途半端な時間に重ねるように、物事を白か黒かの二択で選ばず、夕暮れのようなグラデーションでも良いんじゃないかという視線が優しい。
ただ、終盤のぶっ飛んだ演出には正直ちょっと振り落とされそうになった。元が舞台演劇だった影響もあるのだろうか。
とはいえ、スキルフルな役者達の自然過ぎる演技の応酬も見もの。ここのところ若葉竜也と成田凌が出る日本映画ばかり観ている気がする。。。
ファーザー(劇場公開)
認知症により記憶が曖昧になっていく父と、父の変化に戸惑う娘の物語。
認知症の父から見た視点で描くことで、一体何が真実がわからなくなる不安を追体験する。
自分の母も高齢になり物覚えが悪くなっているので、全く他人事として見れなかった。もちろん自分自身だって人間としての機能の低下は始まっている、木から葉が次々と落ちていくように。
この映画は、サスペンスとしても十分に楽しめるような間口の広さがありながら、家族、老い、死について正面から向き合わされる奥行きの深さを兼ね備えている。人間が最終的に老いて、死を迎える限り、この映画をすっきり観れる日は永遠に来ない。それどころか日に日に切実なものになっていくかもしれないが、何度でも観たいとも思う。
演技に関しては、アンソニー・ホプキンスもオリビア・コールマンも当然のごとく凄いけど、『ビバリウム』で印象的だったイモージェン・プーツが介護人役で登場。とても人間的な許容範囲が広そうな人物でありながら、その線を越えそうになるギリギリの部分の表現が素晴らしい。
あと、この映画で認知症の人に頭ごなしに間違いを指摘することが、どれだけ本人の不安を増長させるかがよく分かった。難しいことではあるのだけど、認知症に限らず他者が見えているものが必ずしも自分と同じとは限らないという視点を身につけたい。
【番外編】37セカンズ(劇場公開)
GW最終日、都内映画館は軒並み閉館だったため、去年観れてなかった『37セカンズ 』を飯田橋ギンレイホールで観た。
出生時に37秒間呼吸ができなかったために、手足が自由に動かない身体になってしまった女性の成長物語。
障害者固有の生活上の苦難も描かれてはいるが、一人の人間の冒険と成長、親からの自立、個性を巡る問いなど、誰もが経験する普遍的なメッセージが伝わってくる。
俊哉(大東駿介)や舞(渡辺真起子)ら、周囲の大人が主人公に寄り添うように支える姿が優しい。
来月はまた映画館でたくさん映画が観られることを願う。
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