《美学校》「LL教室の試験に出ないヒット曲の作り方」開講決定!
去年より新しい講師陣も増え、リニューアルした印象のある美学校。僕自身もTVODのサブカルチャー講座のプレイベントや柳樂光隆さんのライター講座で参加させてもらいましたが、今年は LL教室としても講座を持つことにしました。その名も「LL教室の試験に出ないヒット曲の作り方」! 以下リンクから申し込み可能です。
趣旨は、言うなれば《作曲・アレンジ・作詞の方法を歴史的・社会的な観点から学ぶ講座》といったところでしょうか。単なる技術指導ではなく単なる教養講座でもなく、理論と実践を貫くように音楽を作る、という点が本講座の最大の特徴です。受講者の方々は、講座のたびに簡単な音楽作品を提出し、森野さん・ハシノさんによる音楽的なアドバイスを受けることができます。
ということで、本講座の最終目標は、受講者それぞれが「新しいヒット曲」を作る、ということになります。講座後可能なら、受講者作成の曲を1枚のアルバムに収録して作品化したいとも考えています。基本的には作曲家やトラックメイカー、作詞家の方々(希望者も含め)を念頭に置いていますが、講座の内容的に、音楽評論やライターに関心がある方にも、ぜひ受講して欲しいと思っています。
LL教室とは?
LL教室とは、構成作家・ミュージシャンの森野誠一さん、会社員兼レコード収集家・ミュージシャンのハシノイチロウさん、批評家・DJの矢野利裕からなるユニットです。森野さんが構成作家をつとめていたラジオ番組『マキタスポーツはたらくおじさん』(ラジオ日本)から派生して、番組終了ののちも「日本の音楽をユニークな視点から考えられないか」ということで、トークイベントを中心に活動していました。
森野さんは、芸人・ミュージシャン、マキタスポーツさんの座付き作家&バンドメンバーとして、その理論と実践を支えている人です。実際に、CM音楽やゲーム音楽、バラエティ番組内の音楽を手がけてもいます。ハシノさんは、自身のバンド活動を続けるプレイヤー(ベース、カホン)であるとともにレコード収集家で、ライター活動もおこなっています(最近では、酸辣湯麺研究家として『マツコの知らない世界』に登場!)。ハシノさんは、その膨大なレコードコレクションに裏付けられた、各時代における音楽のありかたを探る人という印象で、ミュージシャンとしてのアーティスト性といちリスナーとしての大衆性の両方を良いバランスで抱えています。他のおふたりに比べると、楽器のできない矢野はもっぱら評論サイドの人間なので(評論側からすると、多少は音楽の現場にいたほうですが)、音楽を文化的・社会的に位置づける役目となります。むしろ、同じように、楽器はできないけど日本のポピュラー音楽史に関心がある、という方はぜひ。
あらためて本講座について
そんなLL教室は、これまでもイベントをおこなってきました。音楽について語るイベントはしばしばありますが、LL教室の音楽イベントが同趣旨のイベントと異なるのは、演者・プレイヤーでもある森野さん・ハシノさんが実際に演奏をすることで、知識と演奏を結びつけていく点です。最近では、ヒダカトオルさん、清浦夏実さん、星野概念さんといったゲストを招いて、1990年代の音楽シーンをやや内側から光を当てることが多かったですが、それ以前には、杉本清隆さんを招いて、ゲーム音楽とリズムの関係性を実演した回や、芸人のみんなのおさむさん(昨日のカレーを温めて)を招いて、「リズム歌謡」の振り付けを実際に踊ってみた回などもありました。本講座では、そのような実演の部分も重視されます。時代時代で流行した「リズム」を実際に曲のかたちにしていくことで、日本のポピュラー音楽の歴史を技術的にモノにしていきましょう。
ポピュラー音楽の歴史をひもとくと、各時代の社会の動向と無縁ではありえません。音楽アーティストは非社会的ではありえないです。かと言って、時代や商業に迎合するだけでは良い作品も生まれません。そんな商業主義と本格主義のあいだにあるような音楽のありかたを論じたのが、例えば、マキタスポーツさんの『すべてのJ-POPはパクリである』(扶桑社、森野さんも協力)であり、拙著『コミックソングがJ-POPを作った』(P-VINE)です。そしてなにより、大瀧詠一氏の一連の作品がそのようなありかたでした。大衆迎合的で魂のないポピュラーソングではなく、しっかりと知識と魂をこめた「新しいヒット曲」を、みなさんと作り上げることができたら、これ以上ない幸せです。さらに、そんな本講座から、未来の《ポピュラーソング》の作家が生まれることを心から願います。受講、お待ちしています!