元々は白だった百合の花

葬儀屋は年中無休ですが今日はお休みします。
そんな貼り紙がドアに貼られていた。
せっかく用があって来たのにな〜と思いながら
帰ろうとした時に飾られている百合に目が止まった

一見すると普通の黒い百合で葬儀屋の代表らしい花
そんな花弁をよく見てみると…
少しだけ白くなっている箇所があった。
無意識に触ってみたら花弁が1枚落ちてしまって
僕は慌てて花弁を拾ったけど、落ちちゃったからもう元には戻せないよね…

落ちた花弁を触ると今度は花弁の黒が剥がれて取れ
更に大変な事をしてしまったと焦り始めた。
でも、黒百合は買えるには買えるのに
わざわざ白い百合を黒く塗りつぶしたんだろう？

黒百合「おや、楪さん。今日はお休みですよ」
楪「はぁっ！はああああ！」

黒百合「あ、黒百合の花取れちゃったんですね」

黒百合「大丈夫ですよ。1週間に1度は交換してるのできっと古い花だったんでしょうね」

楪「あの…なんで白い百合を黒く塗りつぶして…」

黒百合「それは黒が良いと思ったから」

楪「それだけ…？」

黒百合「白は黒に染まりやすいって言いたかった」

黒百合「正義でも悪に染まる事はあるってね」

黒百合くんはニコニコと笑いながら手を振って
去っていったけど従業員含めて休みに何してるんだろう。見回りにくるくらいなら店開けといてもいいと思うんだけど…
葬儀屋という名前を聞いて正義とも悪とも思わない
人々を笑顔で送り届けたり遺族に対応したりするのは正義に近しい心を感じるけど
一方で人の死に関わりながらお金を稼いでいるのも
いや、葬儀屋はその人達がいないと成り立たない存在だからそんな考えはやめよう…

楪「逆に更生したと言うことを伝えたかったり…」

その後は特に変わったこともなく帰り道を歩いた。
その時に綺麗な白百合の花が咲いているのが見えた
でも、こんな場所に咲いてるのは花に詳しくない僕でもおかしいとは思う。
そんな白百合の花は誰かに踏まれた形跡があった。
踏まれて薄暗くなった百合も綺麗だった。
花には色んな言葉があるし気になったから
今度、黒百合の花言葉を調べてみることにしよう