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田舎出身だからこそ、田舎は好きだし嫌い

いま、田舎暮らしが一種のトレンドだ。地方に目が向けられている。都会での生活に疲れた人々が、田舎に癒しを求めている。そんな風に感じる。だからこそ常々思っている個人的なことを書いてみる。


わたしは、瀬戸内海の島の出身だ。高校卒業まで島で暮らしたからこそ胸を張って言えること。田舎は好きだし、嫌いだ。東京生まれ東京育ちのシティボーイ&ガールたちの中には、田舎暮らしは憧れの対象である人もいるかもしれない。地域おこし協力隊なんかは都会出身の人たちのイメージがあるし(募集要項もそんな感じだけど…。)、脱サラして田舎暮らしとか、"移住"とか、最近よく聞くワードだと思う。


このトレンドは、田舎出身からすると素直に嬉しい。何もない、遅れている、と思われていた田舎に目が向けられて、新しい人たちが入って来る。その地域の魅力が外へ発信され、地域がより元気になる。今まで当たり前と思っていた地元の良さを、住民たち自身が再発見することになる。外の目が入る事で、内の見る目も変わっていくのだ。


かく言うわたしも、大学進学で一度故郷を離れてから、地元の良さを再発見することとなり、地元のことがより好きになった。調査でいろんな田舎に行ったのだが、そこではわたしの目は"外の目"だった。外部の人の視点を得たことによって、内部であった自分自身の故郷への見方も変わったのだ。


好きなところ

空気が美味しい。魚も美味しい。星がめちゃくちゃ綺麗に見える。街灯ないからね。海がきれいで、何時間でも眺めてられる。自然いっぱい、のどかな癒しの風景ばかり。家の鍵もかけなくていいくらいゆるい空気感。時間がゆっくり流れている。近所の人のおすそ分け。小さな学校だから、のびのび育つ。小さなクラスだから勉強も置いていかれにくい。島全部、遊び場。海でも泳ぐし山にも入る。サバイバル能力がつく。いつまで経っても、ただいまと迎えてくれる変わらない景色がある。

嫌いなところ

人付き合い。人の目をすごく気にする性格になったのも、何でも噂話が広がってしまう田舎で生まれ育ったからなのかもしれない。「◯◯ちゃん家は、〜〜〜らしいよ」という大人たちの会話が大嫌いだった。目立つことをするとすぐ噂になる。放っておいて欲しくても、放っておかれない。窮屈で息苦しい。絶対仲良くしなきゃダメ、そんな空気が少し苦手だった。


たったひとつ、この田舎の性格が好きになれなくて、絶対に出て行きたかった。この先も住むなんて将来を考えることは、高校生のわたしには無理だった。

実際、移住者の人たちは、都会にはない心温まる人付き合いなどを期待してくるかもしれない。しかし、わたしは生まれてから思春期真っ只中高校卒業まで18年間ずっと、その人間関係の中にいたのだ。1週間以上離れたことはない。だからこそ、この密な人間関係が嫌いだったし、今も嫌いだ。


好きで嫌いな話をしたあと、最後に。


瀬戸内海は、いますごくアツイ場所である。だからこそわたしの故郷を含む島々がどんどん注目されてほしいし、これを機に元気になってほしい。小学校が減って統合になってしまったが、以前よりもいい環境で子どもがのびのび育つ学校になってほしい。瀬戸内海の島々への観光客が増えて、日本のいいところは東京や京都以外にもたくさんあることに気づいてほしい。


期待が膨らむばかりだが、そんな田舎ブームのなかで、田舎出身だからこそ持っているコンプレックス「好きだし、嫌い」についてお話させてもらった。


外から来た人にとっては、わたしの「嫌い」な部分である人付き合いでさえも、豊かな営みに感じるのかもしれない。だが、そこで育ってきたからこそ持つコンプレックスは、外の目が入ったくらいでは、克服できなかったのだ。それを、世間に公表しておきたい気分になったのだが、いつかこの田舎の性格を好きになれるときはくるのだろうか?


これは、田舎出身の呪縛のようなものなのだ。でも、やっぱり田舎ってとってもいいところなんです。高校生の時とは違って今は、将来は好きで嫌いな田舎に住みたいって思えます。みなさんも一度、遊びにいらしてください。

読んでくださってありがとうございます。

可菜

#エッセイ #日記 #移住 #田舎暮らし


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カナ
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