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恋人はいますか?

あなたは気づいていないかもしれないけれど、わたしは勝手に傷ついているよ。と思うことがよくある。

消防士ってチャラいよね。

女同士の会話でたまにあることだ。わたしが、「わたしの知ってる人はそんなことないよ」と力なく返しても、いや!だってさぁ!と力強く返ってくる。彼女達は消防士のことをよく知っているらしい。


それならば、わたしは生まれる前から知っている。わたしの父は消防士だ。お風呂に入っているときに火災の連絡があり、休日でも飛んで出動する父を幼い頃から見ていた。救急救命士という国家公務員の資格も持っている。24時間勤務した後に、寝てんのか起きてんのかみたいな体勢で、国家試験の勉強をしている姿も見てきた。1年間は学校にも通っていた。家族だけでなく、国民の生命と財産を守る父。


父のことを心から尊敬している。だからこそ、特に深い意味のない彼女たちの会話に、勝手に傷つくこともあった。


そんなこんなで世の中には、あなたやわたしの家族のことはもちろん、過去や趣味嗜好、恋愛経験について何にも知らなくても、ふんわり大きな枠組みで否定したり馬鹿にしたりできる人がいる。


そういう人に言い返せない人は、わたしのようにいちいち勝手に、傷ついているんだと思う。


だが、そんなわたしも実は、おんなじことしてしまっていたかも、と思うことがあったのだ。
親友がこんなことを言っていた。


「何気なく、彼女いるの?と聞いていた彼には、彼氏がいたんだ。でも彼は言い出せなくて、”彼女”はいないことになってた。そうすると周りが、なんでお前は彼女作らないのかって、会うたびに話題にするんだって。彼とても傷ついてしまってて。何気なく聞いていた、彼女いるの?って言葉でさえも、傷つけてしまう可能性があるんだよ。」


世の中の女子に対して腹を立てていたわたしにも、こんなことを言う権利もないくらい同様の可能性があったのだ。大きな枠組みで否定するのはやめよう、と思っていたのだけれど、ただ何気なくその人のことを知りたいと思って聞いたことで、傷つけてしまうことさえあるのだ。


誰も傷つけたくはないけれど、誰も傷つけないように生きるのって難しいみたいだ。それならばわたしも、悪気のない言葉だとしたら許してあげられるように、どうしても許せないのなら、その場できちんと傷ついたと伝えるように、しなければいけないかもしれない。だって、例を挙げ始めるとキリがない。


ただ、彼氏いるの?彼女いるの?って聞くことに関しては、恋人いるの?って聞くことにするのはどうだろうか。響きがこそばゆくて、少しでも好意がある相手にこんな聞かれ方をされたら、期待なんかしちゃったりするのだろうか。


恋人はいますか?って聞かれてみたいなと思いながら、なんだか話題がそれてしまったような。

#エッセイ #日記 #短いお話

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カナ
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