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その日を特別な日にするために

「プレゼントを早めに用意したからって、早めに渡してしまうのは、自分のためでしょ」
バレンタインもクリスマスも誕生日も、その日を特別にすることが相手にとっていちばんいい。そう職場の先輩に教わった。プレゼントを早めに用意したから早めに渡したいというのは、相手の反応を早く見たい、その当日まで待ちきれない、という自分のために行うことであるという。


サプライズとはその日に予想外の出来事が用意されていることであって、予期しない日時に渡されてびっくり!がサプライズというわけではないらしい。


そういえば、一年前のバレンタインは、4度目のフィリピンで過ごした。20歳のバレンタインはタイで過ごしていたが、どちらの国もその当日のお祭り騒ぎは日本にはない雰囲気だった。日本とは逆で、男性から女性に想いを伝える日のようだが、もっと気軽にお祝いすることもあるらしい。ハンモックでゆらゆらしていたわたしに、男の子たちがハッピーバレンタイン!と声をかけてくれた。ショッピングモールの可愛らしい雑貨屋には男性たちがプレゼントを買うために列をなし、タクシーに乗り街を眺めると、女性たちはプレゼントの包みや花束を持って嬉しそうにしていた。そしてタクシーの運転手は、バレンタインだから日付が変わる前に家に帰らなくちゃと、車の速度を上げた。


わたしは、その日のうちに奧さんに会えるといいね、これ奥さんに、と、浮かれた街の雰囲気に乗せられて買ったバレンタイン用のカラフルなキャンディーを渡した。何も用意していないと言っていたので、何かしらある方がいいと思ったからだった。


期待しているわけではないけれど、やっぱりその日は特別にしたい。誕生日の1週間後に豪華なプレゼントをもらうことよりも、ちゃんとその日におめでとうと言ってもらえることの方が嬉しいかもしれない。やっぱり、その日は特別だ。
キャンディーがあろうとなかろうと、タクシーの運転手の奥さんは、その日のうちに、大好きな旦那さんに会いたかっただろう。


早めに渡したくなる気持ち、自分のためだったとは。もちろんわたし自身はいつ祝ってもらっても嬉しいことに変わりはないのだが、相手のことを想い、その日を特別にしようとする、そんな気持ちは忘れたくないと思う。

#短いお話 #エッセイ #日記 #バレンタイン #バレンタインデー

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カナ
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