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私はコロナウィルスに救われました
世界中で猛威をふるっているコロナウィルス。ウィルスの怖さ、悲惨さは色々なメディアで取り上げられています。
コロナウィルスによって世の中が大きく変化している中、私はその変化によっていくつか救われた事がいくつかありました。
私の母は2020年4月25日に亡くなったのですが、今回は私が母を介護していた時の話です。
私の母は末期の癌で終末期医療を緩和ケア病棟で受けていました。3月までは通院による治療だったのですが自力での歩行が困難になった為、4月上旬から入院がスタート。私は朝から晩まで病院に足を運び、病室でテレワークをしつつ付きっ切りで看病していました。
本来であれば仕事を休んだりすべきところ、緩和ケア病棟の看護師さんの理解もあって、仕事をしながら母の最期を共に過ごす事が出来たのです。
いつ面会禁止となってもおかしくない中、私自身の行動も大きく制限(公共交通機関は使用しない、病院と家以外の外出はしない、など)する事で何とか病院に許可をもらえていました。
コロナウィルスによるテレワーク普及がなければ、このような体制は取れなかったでしょう。
母の最期を過ごせた事は私にとっても有意義な時間だったのですが…日に日に悪化していく母の病状と比例して、母の態度も豹変していきました。
正直、4月中旬以降の病室での時間は地獄でした。私は一つ、大きな勘違いをしていたのです。
終末期を迎えた人はいずれ自分の死を受け入れ、徐々に心が穏やかになっていくものだと思っていました。既に亡くなっている父がそうだったように。
でも、母の場合そんな事は一切なく、自分の死を受け入れられずどんどん心が荒れていきました。
その怒りの矛先は家族に向けられました。
人格否定、罵声、物を投げられる。
母の言う通りにやらないと酷く怒られました。言われた通りにやっても「本当はこうしてほしかった」と言われ怒られました。病院へ行くのが怖くなって担当医師に相談しても解決せず、かと言って命が限られている親を見捨てる事もできませんでした。
とある本に「人は死ぬ間際になると赤ちゃんに戻っていく。本能のままにわがままになっていく生き物だ」と書いていました。まさにその通り、私の母は赤ちゃんのように家族を頼っていたんだと思います。
もはや、母が死ぬのが先か、こちらの精神が崩壊するのが先か、という状況になっていた時、看護師さんから「コロナウィルスの影響で今後は面会を30分と制限させてもらいます」と言われました。
正直、ほっとした自分がいました。母を見取りたい気持ち以上に自分のメンタルが限界を超えていました。コロナウィルスによって私は逃げ場を与えてもらったのです。
面会制限が掛けられた数日後、母が静かに息を引き取りました。
納骨まで終わった今、何をどうすれば母が笑顔で人生を全うしてくれたのか答え合わせをしているのですが正解が見つかりません。
一つだけ言える事。
それは医療が発展した事で人は「死ににくくなった」という事。
健康でない時間を過ごすというのは医療によって「生かされている」という感覚になり、常に死を意識する時間が多ければ多いほど、人の精神は削られていきます。
「早く死にたい」
母はいつもそう言っていました。
どうして母はそんな気持ちになってしまったのか。
色々な考え、見方がある問題だと思いますが、一つの事実としてここに記しておこうと思います。
終わり
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