「食べる」のしんどい#16 菜の花
いつの頃からか菜の花の料理を食べるようになった。食べるようになったのは、食べられるようになったのと殆ど同時だと思う。
普通に考えれば、美味いと思える要素はほとんどないのに、よく味噌汁にして食べる。
雑煮なんかに茹でたものを添えると風情が出る。
腹一杯食べたいかといえば、全くそんなことはないが。
たまに食べると季節や土の力を感じる。あと、自分が大人になったとも感じる。
二十歳の頃に酒が美味いと感じて、おっさんになったいまは菜の花が美味いと感じている。体にいいと思って不味いものを食べるよりも、自分が美味いと感じるものを食べればいいんじゃないか。それを体が求めているわけだから。無理して食うのが一番しんどい気がする。そういえば、肉はもう美味いと感じる時は少なくなった。体が変われば、心も変わっているはずだ。
自分はどこに向かっているのか。
菜の花の土と草の香り。
なんだか畦道でも歩いて、その場所へ向かっているようだ。
菜の花を食べるくらいなので、とてもファンシーな生き物に生まれ変わろうとしているのだろう。
一瞬、蝶のことを思ったが、よく考えたら葉っぱを食うのは芋虫だった。
きゃたぴらきゃたぴら。