アトピー性皮膚炎もアイデンティティ
アトピー性皮膚炎との出会いは、小学校の入学式の時。朝起きたら、体全身が急に痒くなった。中からジワジワとくる、どうしようもない痒み。
入学式を終えて、病院へ行くと「アトピー性皮膚炎」と診断された。
この日からアトピーと共に歩む生活が始まった。
アトピーとは本当に厄介な病気で、24時間ずっと戦い。飲み薬や塗り薬で落ち着く時もあるけど、基本はずっと痒い。痒い欲望に負けて掻いてしまうと、もう終わり。掻いているとなんだか気持ちよくなって、皮膚が傷ついて汁や血が出るまで掻きむしってしまう。そして、ここからがアトピーの怖いところ。汁や血が出て、それが治りかけている時が一番痒い。そしてまた掻いてしまう。そのループだ。
自分の場合、主に関節などの蒸れやすい箇所に集中して、症状が現れていた。腕や足、お尻と股間など。
人目に触れるのは肘の内側がぐらいで、ほとんどは服で隠れる箇所だったこともあって、アトピーだとバレることもなかったので同級生には隠していた。アトピーを恥ずかしいと思っていた。
病院にも通っていたが、すぐ掻いてしまうので良くならなかった。しばらくして病院にも行かなくなった。
ここまで苦しんでいたアトピーも、実は小学校5年生の時にはほとんど治っていた。
超根性論だけど、どれだけ痒くても気合いで掻かないことを実践した。アトピーは掻くと悪化するから、掻かなければ治るだろうと子供ながらにわかっていたので、どれだけ痒くても耐えた。
そうしたら、痒みもほとんどなくなり、いつのまにか皮膚も綺麗になった。
もしかしたら、自分は軽度だったから気合いで治ったのかもしれないけど、それ以降アトピー性皮膚炎の症状に悩まされることはなかった。
アトピー性乾燥肌によって、顔や手など一部が痒くなることは今でもあるけど、アトピー性皮膚炎に比べたらどうってことない痒みなのですぐに治る。
あと、アトピーになったからこそ、気づいたことがある。
アトピーへの差別も存在するということ。
自分自身も実際、アトピー差別を受けたことがある。
「アトピーの人ってなんか汚いよね」
「お前アトピーなの?気持ち悪い」
「アトピーの人とごはんを一緒に食べたくない」
など。
自分へ向けて言われた言葉もあるけど、自分がアトピーと知らずに相手が放った言葉もある。
心ない言葉で傷ついて、アトピーであることを人に伝えるのが怖いと思っていた。けれど、素直な自分を受け入れるようになってから “これも自分のアイデンティティじゃん。怖がって、恥ずかしがっている自分が一番差別してる。” ということに気づいた。
確かに皮膚をポリポリ掻いた手は清潔とは言えないかもしれないけど、アトピーは汚くない。感染もしないし、異臭を放つわけでもない。誰も選んでアトピーになっていない。
アトピー差別は人種差別と同じ。自分と違う肌だからと、違う生き物のように見られる。
つらい思いをするのは痒みだけでいい。心までつらい思いをする必要なんてない。
アトピーの人が後ろめたい気持ちがなくなって、気持ちよく生きていける社会になりますように。