今朝の一曲:贈られなかった言葉たち(大橋トリオ/贈る言葉)

10年前の作品、初めて見た時衝撃を受けたのをよく覚えている。昭和50年生まれの私の小学校の卒業式は、この曲だった。

私はふつうの小学生で、校歌レベルのこの曲の内容はついぞ理解されなかった。もしかしたら、大人になることを余儀なくされた子供なら分かったのかもね。



去りゆくあなたに、愛するあなたに、終わりまで聞いてほしい、飾りもつけずに、贈る言葉は、いったい、なんという言葉なのだろう。


慌てて追いかけてきた村上淳が、彼女を目に捉えると、だんだん速度を失う。小さな突風が止む。とうとう言葉を飲み込む感じがいい。

丸刈りの臆病者が、抱きしめもせず、キスして頭を垂れる。それしか出来なかったんだろうけど。これ以上は近づけないという、一定の距離は、彼の謝罪なんだろうか。


別れの時は、互いの表情は見えないもんなんだなあ、と思う。一人の時の方が、二人とも表情が崩れ、言葉あふれている。見つめ合うと、表情は飲み込まれ、言葉も飲み込まれる。


贈る言葉は、愛するあなたの前で言えなかった言葉。

あんなふうにもこんなふうにも伝えたかったのに、別れた後にいつまでも心で繰り返し伝えるしかない、本当は贈られなかった言葉だったんだね。



10年前、まだスマホに眼を落としてなかった人たちは、二人の別れを遠巻きに見ながら、横断歩道を行き交う。それがよかったな、と感傷にひたる。現実世界の中でゆるく繋がるというのも、やっぱりいいと思う。

これを聞いて、月曜日もう終わりにしようか、という気分。