【出雲紀行1】私の裸なぞ誰も見たくないだろうが脱ぐ!脱いで着替えてさあ戦闘開始よ!
少し前の話になるが、心身がハイパーセンシティブモードに突入し、3週間ほど布団の海で溺れていた。早い話が病んで欠勤、ということである。時給労働者の自覚がまるで足りない。来月の主食は藻で決定やな...これで俺も桐谷美玲Yeah!願ったり叶ったりFinally!しかし鬱々とした気持ちはふえるワカメの一方で、髪の毛にしか行き渡らない栄養、どうにかして回復させたいHEY YO!すがった先は縁切り神社だった。すがられた縁切り神社もどんな跳躍力で我が元へ?!と困惑しているかと思うが、人は窮地に追い込まれると信仰心が芽生える、ということで今回は丸く収めてほしい。溺れる者は藁をも掴み、寂しい夜はアナゴでいいから突っ込みたくなるのだ。
俺は布団の海からザバリと這い上がり、絡みついたワカメをブラつかせながら関東随一の縁切りスポット・縁切榎(榎大六天神)へと向かった。板橋本町駅から歩いて5分ほどの小さい神社。神木の横にはびっしりと絵馬が並んでいる。おどれ金輪際ワシの女に手ぇ出してくんなやダボ!・シンプルにもう息をしないでください合掌・はよハンコ押して荷物まとめんかいワレぇ!・抜け出せポン中&立ち切れアル中、など市井の人々のバラエティ豊かな叫びが怨念と共に刻印されている。俺も負けじと悪臭放つ悪習を断ち切りたい旨を絵馬いっぱいに表現、字が小さすぎて肉眼では見えないかもしれないと思いつつ、そこはまぁほら神通力でシクヨロ〜と、たぎる思いを木の板にぶつけ、10分ほど祈って退散。本当はもっと交信していたかったが神社の空気があまりにも重く、これ以上この場にいたら引っこ抜かれるウル!トラ!ソウッ!とシャウトし帰路についた。事実その夜の肩の重さたるや、百貫の地蔵が2体乗ってるんちゃうかと思うほどの異常さであった。
翌日は寝覚めも良く、尿のキレも絶・好・調ッ!とならないのが3次元。しっかりと胃が痛い。いつここへタトゥーを?と見紛うばかりのクマ。収まるところへ何一つ収まっていない非情なリアル。だが悪習やネガティブとは縁を切ったはず。やれることはやった。やったはず。いや、やったか?やってない。やりきれてない!縁切りだけじゃだめだ、そうだ、縁結びに行こう!
気がついたらここにいた。遠くに見えるは新宿のビル群。
ここは夜行バス乗り場。どこ行きかって?
縁結びの総本山・出雲大社行きだ。
思い立ったらすぐ行動。私がADHDと称される由縁がここにある。世間の自粛ムード、ましてや病欠中であることなどお構いなしだ。こうなったら公的にお縄をかけられないと止まらない(し誰も止めやしない)。車内は少々窮屈ではあるが良縁のため、結ばれのため、ひいては世界のため!我慢。
「いざ!出雲まで女一名旅ガラス!運ちゃんシクヨロ!」
勇んで乗り込んだら、“みなさん行き先は一緒ですのでお静かに...”と言われ切腹したくなった。総じて周りが見えない。敵がすぐそこにいるのに悠々と戦闘服に着替える月野うさぎだ。ヒロインモードに入ると己以外の事情を汲めない。私の裸なぞ誰も見たくないだろうが脱ぐ!脱いで着替えてさあ戦闘開始よ!
久方ぶりの夜行バス。流れる夜景をウキウキウォッチングできたのも開始30分ほど、第一回目のSA(サービスエリア)到着までだった。
YOTTA\(^^)/!!!!!!!!
YOTTAZE----\(^^)/!!!!!!!!!!
これを泥酔と呼ばずして何を...ぐぬぅ...と唇を噛み締めながら酸っぱいフレーバーのリキッドを零すまいとトイレへ駆け込む。
「待たれよ。中で魔女が暴れとるんじゃ...あと1時間はSA待機で...かまへんやろか?」
私の中のマルクルがさわさわとヒゲを撫でる。
運「話になりません」
全然首を縦に振らない運ちゃん。
「運ちゃん行かないで!僕、運ちゃんが好きだ!ここにいて!」
ならば渾身の泣き落としマルクルでどうや!
これでソフィーも陥落させた、いけるはずや!
運「無理です。次のSAまで頑張ってください(でないと置いていきますよ、そうすればあなたは永遠に出雲には辿り着けません)頑張れるはずです(ここで諦めたら良縁を結ぶ事も巨根イケメン石油王にプロポーズされることすら叶わないのです)...行けますか?」
ぜ、全然行けるで当たり前やんか!!!!
こんなんパフォーマンスに決まってますやろ!!!!
GEROがなんぼのもんじゃい!!!!
ワシにとってはションベン刑ですわ!!!!
口にありったけのティッシュを詰めながら着席する。
出雲まであと13時間。残りの人生を考えたら短いものだ。分かっちゃいる、分かっちゃいるが誰か殴って失神させてくれへんかな...その間に出雲着いたら楽やのにな...ぐらいのことは頭を掠めた。
のち何回SAに立ち寄ったかはまるで記憶にないが、幾度かGEROとションベンを繰り返したのは確かで、気がつけば外は朝、どうやら出雲に到着したらしい。パンパンに浮腫んだ顔と足が想像を絶する長旅を象徴していた。
労え!!!!ほんま誰でもええから労ってくれや!!!!
出雲到着第一声である。
やっと着いた〜!運ちゃんありがと〜!ということより、ほんまよう頑張ったでワシ〜!誰か褒めてくれんとかなわんわ〜!の方がプライオリティが高い。永遠に自分が可愛いのだろう、いいことである。
バスを降りてひたすらまっすぐ歩くと鳥居が見えた。
人っ子ひとりいねぇ。
まさか私のために...石油王が貸し切りに?
そう勘違いしてもおかしくない(いやおかしい)。
鳥居をくぐると生茂る緑が目を覆う。
小川のせせらぎが耳を愛撫し、朝露の香りが鼻腔をくすぐる。
空気もうますぎて太りそうだ。
橋を渡る一歩一歩がご縁を引き寄せてるんや...
一歩...(はい前澤友作ー!)
一歩...(はいジェフベゾスー!)
一歩...(はいイーロンマスクー!)
この一歩一歩が宇宙(へと旅立つメンズ)につながっている。
何事も、小さなことからコツコツコツや!
嗚呼、こんな下心まみれの参拝者を朝から受け入れる寛大さよ。
やっぱり出雲はいいところだ。来てよかった。
空を見上げると雲が割れて太陽が見えてきた。幸先もいいぜ!
遠くに名犬ラッシーを連れる男性。
出雲大社を駆け回れるなんてYOUはとんだラッキーDOGだぜ!
しばらく微笑ましく眺めていると、パッと飼い主がリードを離した。
紐がかゆかったのかもしれない。一瞬すぎてよくわからなかった。
ハッと意識が戻った時には、ラッシーが私の股間を喜ばしそうに舐めまくっていた。今日はバターを塗ってきた覚えはない。WHY。深まる謎、困惑する飼い主、こんな臭いマン子でいいんでしょうか...といらぬ謙遜をする私、ますます困惑する飼い主、興奮が収まるところを知らぬラッシー、普段はこんな(BBAの股間をまさぐるような)子じゃないんですと平謝りする飼い主、 いいえこちらこそ普段はもっといい(匂いのするマン)子なんですと弁解の止まらない私、だんだん興味が薄れてきたらしいラッシー、安堵する飼い主、お前の身体もう飽きたんだよと一方的に捨てられた彼女の風情を醸す私、え、つら...なにこの仕打ち酷すぎん?出雲さんなんでなん?ワシ何もしてへんけど?そういう定めやってこと?え、つら...ご縁結びにわざわざ出雲くんだりまで来てんけど?お前なんて吐き捨てられる程度の女やってこと?1回ヤれればええねんただの便器が!って言いたいん?ねぇ出雲!ねぇ出雲ってば答えて!答えてよぅぅぅっ!
寸劇をしているうちに、彼らは颯爽と散歩に戻っていた。お前ら賢者タイム早っ!
出雲、初めての出会い。予想とはだいぶ違ったが、これはこれで思い出深い巡り合い。だがまだ本殿にも着いていない、先を急ごう。
ーどうしようもない記事だが一丁前に続くー
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