「児童ポルノ」という軽率な言葉の問題点。あるいは窪田順生記者への問い合わせ。 #児童ポルノと呼ぶのは児童虐待への加担です
問い合わせの記録と、児童ポルノ規制法とアチョン法の備忘録用記事です。
ITmediaは児童虐待問題に対してどのような姿勢なのか?
当該記事内にて「内閣が推し進めるSDGs推進本部の定める価値観において『児童ポルノ』に該当し『完全にアウト』」という要旨の記述がありますが、ITmediaの児童虐待に対する姿勢を問い合わせたく思います。
日本が国をあげて「SDGs」(持続可能な開発目標)に取り組んでいるからだ。内閣総理大臣がSDGs推進本部長を務めているので、大企業は従うしかない。このSDGs的な価値観に基づくと、「セーラー服姿の少女に性的エピソードを語らせる」ことは「児童ポルノ」という扱いになってしまう。つまり、SDGs的には今回抗議があった「温泉むすめのキャラ」は完全にアウトなのだ。
イラストなどの架空の表現を児童ポルノと結びつける主張が如何に現実の児童を危険に晒すかをご存知ない記者を抱えていらっしゃるようで大変に遺憾です。こういった記事によって誤った認識が更に広まる懸念を抱きます。
この問題は根が深く、日本において児童ポルノ規制の議論が始まった際に、
規制の対象を「(自身を)性的に興奮させるもの=裸であること」にこだわった勢力が非常に強かったことから始まります。
当時の議論の経緯を見れば、規制対象として、イラスト・漫画・ゲームなどの性表現を念頭に置いていたことがこの視野狭窄を産んだのは疑いようがありません。
その結果「児童虐待記録物」の規制ではなく「児童ポルノ」の規制が成立してしまい、
結果、児童が性的加害を受けている最中の音声や顔のみを映した写真・映像は未だ合法だという現状をご存知でしょうか?
被告人は、当時6歳だった女児を公園の公衆トイレに閉じ込め、下着を脱がせて写真撮影をし、さらに女児の頭に射精し、それを写真に収めました。ところが、裁判所の判決では、この性暴力写真は「児童ポルノ(3号ポルノ)」には該当しないと判断しています。
その理由は、実際の映像が頭部に射精した写真、つまり顔のみが映る写真だったからです。
「海外同様に創作物の性表現も規制すべきだ」という意見は、まさに「(自身を)性的に興奮させるもの」の取り締まりを推進し、実際の虐待から目を逸らす人間のものです。
(以下の動画は、非実在児童ポルノの問題点のうち、3号ポルノ問題について説明する部分から抜き出しています。ご参照ください)
実在児童の被害よりも「自分の不快感」の解消を優先したい人間は、当該記事を執筆した窪田順生記者のように未だ非常に多いです。
人の関心を引きやすいイラストや漫画の炎上騒動を扱う事にかまけて、児童虐待記録物が野放しである現状には全くと言っていいほど誰も注目していません。
その結果、
レイプされている児童の音声記録も、
裸が映らない状態での虐待映像も、
着衣で動物の性器を触らされたり、
精液をかけられている様子を記録したものも、
全て今でも合法に取引・視聴できる現状が生まれています。
一般市民はともかくとして、メディア関係者の無関心さには呆れ果てます。
絵に描かれた児童の性行為を実在児童に対するものと同様に取り締まっている韓国の事例
現在の韓国では架空の児童の性的描写は、実在する成人女性への強姦よりも重罪です。
ITmediaの当該記事を執筆した窪田順生氏の主張に則るならば、まさに「SDGsの理念に適った国」ということでしょう。
では"SDGsに適う"韓国で実際に起こったことを見てみましょう。
以下は韓国の非実在児童ポルノ規制が始まってからの記録の一部です。
(上のリンク先の記事が削除されているため、こちらのアーカイブを参照してください)
2011年から始まった仮想物を含めて「児童ポルノ」を取り締まるアチョン法によって2,200人あまりが逮捕されていることを説明。現在、最高裁では取り締まり範囲を制限する判決を下したが、憲法裁判所が仮想物の規制について合憲判決を下し、国会でも創作物規制の条項を廃止する法案は廃案となっている現状に憂慮を示した。
アチョン法では、創作物を含めて「児童ポルノ」製造などに無期または5年以上の懲役、10年間の就業制限(子どもに関わる職業のほか、子どもが集まる場所へ近寄ることも禁止)、20年間の政府への身元登録など重罰が定められている。
これに加えて韓国では著作権法の非親告罪化が行われた2008年に9万1,840人が逮捕。青少年に午前0時~午前6時の間のインターネットゲームを禁止し、成人でも本人確認を定めた「青少年夜間ゲームシャットダウン制」の実施により、関連企業の従業員数が12年に5万2,466人から14年には3万9,221人まで減少し、急速に産業が縮小しているという。
「韓国では、煙草や刃物などにもモザイクがかけられる、いびつな規制が行われています。また、試してみたらDMM.comにもアクセスができませんでした。いろんな人に“悶々としませんか?”と聞いてみたら“します”という話でした」(山田氏)
韓国では、非実在児童ポルノの取り締まりの結果として、アニメやゲームなどの産業の縮小が起こるまでに至りました。
またこの規制による2200人以上の逮捕者の多くは学生や大学を卒業したばかりの若者でした。それも自分自身では意図せずに、P2Pソフトによって動画ファイルをアップロードされたものです。
(動画ファイルの内容の多くは学生服を着用した成人が出演するAV等でした。しかしこれもイラスト同様「未成年に"見えたら"違法」という基準で取り締まられるので、このような事態に陥りました)
彼らは就業規制によって自由に職に就くことを阻まれ、将来の道を閉ざされたと訴えていたそうです。
(韓国において就職でつまづくことがどのようなことを意味するのかは、映画「パラサイト」の内容を引くまでもないでしょう)
さて、SDGsの目標の第一に掲げられているのは「貧困の撲滅」です。
これは果たして本当にSDGsの理念に適った規制なのでしょうか?
韓国は昨年も実在しない児童の性表現への取り締まりを強化しています。
2020年の改正にて罰則に「下限」が制定され厳罰化、また性表現を含む漫画やアニメを視聴したのみでも1年以上の懲役刑となっています。
韓国においては成人女性に対する強姦よりも漫画・アニメで性表現を行う事の方が重罪であることは先に述べました。
上図を見ると、性表現を含む漫画やアニメを単に"視聴"しただけで、実在する成人の猥褻物の頒布よりも重い罰則が課せられることがわかります。
刑罰の重さの比較として、以下の日本の法定刑も参照願います。
2011年の改正によって起こった社会問題については朴景信氏(高麗大学教授/カリフォルニア州弁護士/韓国放送通信審議会委員)によるThe World of ‘Minority Report’ Lived in South Koreaが詳しいので、こちらも参照願います。
2011年に架空の性表現を児童ポルノとして取り締まり始めた結果として、
警察がネットでイラストや映像のアップロードを監視することに注力し、現実の犯罪の捜査をなおざりにしてきたという苦い失敗があります。
なぜそうなったか?
イラスト・映像のアップロード監視は、実在児童への加害を取り締まるよりもはるかに容易に出世の道を開くための点数が稼げるからです。
警察官たちは、実際の犯罪者を追跡するよりも、コンピュータの前に座って、はるかに多くの時間を過ごしている。実在の子供を利用してポルノを作った業者を追跡して逮捕するよりも、ポルノのファイルをアップロードする人々を捕まえている方が、はるかに簡単だからである。
朴景信 (高麗大学 教授/大韓民国放送通信審議委員)
(抄訳 NPO法人うぐいすリボン)
これに対し、韓国の児童性虐待被害当事者である女性は「当局は、インターネットを監視してばかりいるのをやめて、外に出て本物の犯罪者を捕まえるべきだ」とメディアにコメントしています。
未だ儒教の影響が根深い韓国で、この意見を口にするのにどれほど勇気が必要だったか、想像に難くはないでしょう。
再度問います。
これが窪田順生記者の言う「SDGsに適った」あり様ですか?
逮捕によって将来を閉ざされた若者の怨嗟の声のみならず、性被害当事者の怒りすら伝わるこの記事は日本にとって対岸の火事ではありません。
「現実を見てくれ」と弱者たちが訴えねばならない、歪んだ「児童ポルノ規制推進」の風潮が、今まさに日本でも進んでいるのです。
私自身も温泉むすめへの謂れなきバッシングに対して声をあげるにあたって、望まぬ性被害カムアウトを強いられました。
炎上に加担する人間は「性被害者でない者には発言権はない」と平気で異論者の口を塞ごうとするからです。
ITmediaにおかれてましては、人権問題への認識不足、および偏見の助長の懸念を考慮しない記事を発表した意図をぜひしっかりと説明していただきたく思います。
望むのは記事削除ではありません。
今後どう言った姿勢で児童虐待を取り扱うのか?をご説明願いたい。
それほどまでに、イラストに対して児童ポルノという語を使う責任は重いです。
サポートくれた方、本当にありがとうございます。 絵の資料とかうまい棒を買います。