吉田秋生作品でみる読み切り連作の構成の仕方

またプロ志向のお話をします。
吉田秋生さんは実は短編連作に独特のテクニックを持っていて、作を重ねながらそれを洗練させています。そのテクニックを見ていきましょう。
どういうテクニックかというと
はじまりと終わりを似たシチュエーションにする
というものです。これの何がいいかというと
物語の環がとじた感じが強くするのです

例を見ましょう。まず『海街diary』(小学館)。これはある少女が育った町を出て行くところから始まります。単行本で9巻、さまざまなことを経ながら少女は少し成長し、あらたに暮らしていた街から巣立つところで終わります。はじまり、終わりともに少女が旅立つ、という相似形の物語になってます(冒頭は「旅立って成長する」。おしまいは「成長して旅立つ」ですが)。
このような形の場合、読者は終わりの場面をすんなり消化します。冒頭で一回やっているわけですから。で、思いは自然と、途中あった少女の成長に流れていきます。つまり読者はこの漫画は大きなふたつの塊に感じます。理屈っぽく書くと
旅立ち(はじまり+終わり)+成長の過程
ですね。すっきりした形でまとまっているので、読者にとっては見通しがよく、爽快感を感じさせる構成になっています。
吉田さんにはこの繰り返しを使ってで連環をとじる技巧の極みのような作品『ラヴァーズ・キス』(小学館)があります。誰かが誰かを好きになりキスをする、という話で繋がれた読み切り連作です。

少し捻った形が『櫻の園』(白泉社)です。ある女子高の演劇部では毎年春の創立記念日にチェ-ホフ『櫻の園』を上演する決まりになっています。物語は配役が決まってお芝居の稽古に入っていくところから始まります。途中参加する女子高生たちの生活や気持ちが活き活きと描かれ、そしてお芝居の上演の合図で物語が終わります。

どの作品も読み終わったときに「あーーー、終わった」という感慨を強くいだきます。

この構成が漫画家にとって素敵な点もあります。
★エンディングの形が想定しやすい
★続編が作りやすい
ですね。
実際『海街』は現在続編とも姉妹作とも言える作品が進行しています。

ボクの作『アップ・セットぼーいず』は高校入学から最後卒業式で終わります。強いエンディング感を読了時に感じます。幸いキャラクターが上手く出来たのでしょう、「彼らのこれからもみたい」と望まれて続編を描かせていただきました(編集者の要望を外しながらですけどね)。

ス来いS屁ながら


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