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6分間歩行試験(six-minute walk test:6MWT)の概要と最新エビデンス
6分間歩行試験 (6-Minute Walk Test, 6MWT)は、患者に6分間でできる限り遠くまで歩いてもらい、その総歩行距離(6MWD)を測定する簡便な運動耐容能検査ですatsjournals.org thoracic.org
心肺運動負荷試験(CPET)のような最大運動負荷検査に比べ簡易で特別な機器を必要とせず、日常生活における身体機能を反映しやすいとされていますatsjournals.org
もともと健常者の体力評価に用いられた12分間歩行テストを短縮・簡略化した経緯がありatsjournals.org、現在では心疾患・呼吸器疾患など多くの慢性疾患患者の機能評価やリハビリ効果判定に広く用いられていますatsjournals.org
米国胸部疾患学会(ATS)からガイドラインが公表されatsjournals.org、欧州呼吸器学会(ERS)とATSによる合同の技術基準(2014年)も制定されるなどpmc.ncbi.nlm.nih.gov、標準化が進んでいます。
測定方法(プロトコル・装備・環境・注意点)
環境・コース設定:原則として直線で平坦な屋内の廊下などを用い、折り返し往復で歩行します。コース長は30m程度(約100フィート)確保し、折り返し地点にコーンやテープで目印を置きます
必要な装備:時間計測用具(ストップウォッチまたはタイマー)
患者の準備:測定前に少なくとも10分間安静座位をとり、直前の激しい運動は避けます
試験の手順:スタッフの合図でスタートし、6分間できるだけ遠くまで歩くよう指示します
測定項目:主要なアウトカムは6分間歩行距離(6MWD)です
安全管理・注意事項:6MWTは患者にとってかなり負荷の高い運動になる場合があります。心肺応答は最大運動試験時と同程度に達することも報告されており、安全面の配慮が重要です
結果の解釈(基準値・カットオフ・正常範囲)
健常者の基準値:6MWDは年齢、性別、身長、体重などに影響を受けます。若年ほど、高身長ほど、男性の方が長い距離を歩ける傾向にあります。たとえば健康成人では、ある研究で男性の平均約609m、女性約581mとの報告があります
心疾患患者の例:心不全など心疾患では6MWDは健常者より短くなります。重症度が高いほど距離は短縮し、約300m以下しか歩行できない場合は予後不良のリスクが高いとされています
呼吸器疾患患者の例:COPD(慢性閉塞性肺疾患)や間質性肺炎、肺高血圧症(PAH)などでは、呼吸機能低下や呼吸困難により6MWDが低下します。COPDの重症度評価指標であるBODE指数では6MWDが組み込まれ、例えば350m以上歩行できればBODEの運動項目スコア0点、150m未満しか歩けない場合は最重症の3点と判定されます
神経・筋疾患患者の例:脳卒中後やパーキンソン病、筋ジストロフィー、多発性硬化症(MS)など運動器/神経系の障害を持つ患者でも6MWTは歩行機能評価に利用されます。健常者と比べ歩行スピードの低下や歩行中の疲労増大が顕著で、時間経過とともに速度が落ちる「歩行の耐久性」指標として有用です
臨床的応用(リハビリ評価・PICSとの関連)
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