お探し物は図書室まで(著者:青山美智子)
著作者:青山美智子 発行所:株式会社ポプラ社 2023年3月5日発行
この物語は、探し物をしている5人の主人公の話しである。ここでは、「五章 正雄 六十五歳 定年退職」を取り上げる。
正雄は六十五歳になった九月の最終日に、会社員人生を終える。正雄は定年退職してからわかったことが三つある。『ひとつは、六十五歳が思っていたよりずっと若いことだ。』少なくとも正雄自身は老人という実感はまだない。まだ中年が続いているような気がしている。
「もうひとつは、正雄には恐ろしいほど趣味がないということだ。」物をつくったり、何かについて熱弁できるほど夢中になるような、そんな愛好の対象を正雄はひとつも持っていなかった。
「最後のひとつは、会社員でなくなった正雄はもう、社会から認識されていないということだ。」年末年始には、お歳暮も年賀状もこなかった。茶飲み友達さえいない自分に愕然とした。
正雄は妻の依子(よりこ)から勧められ、囲碁教室に通い始める。囲碁教室の後囲碁の本を求めて、正雄は図書室に行く。そこで、司書に『「何をお探し?」』と聞かれる。正雄は、『これからの・・・人生の在り方を』探しているのだと思う。
司書から、囲碁の本の他に詩人の草野心平の「げんげと蛙」を勧められる。ここから、正雄は、依子やひとり娘の千恵との対話などを契機として、「これからの人生の在り方を」探して行く。
注:『』は、引用文