新任プレスの初めての仕事。
初めてプレス(プレスアシスタント)、PRパーソンをする人がまず初めに任される仕事は、高確率で商品の貸し出し業務(リース)になります。
実際、私も20代で3社を経験しましたが、どのブランドでもはじめにリース業務から任されました。
主に貸出先としては、雑誌、テレビ番組、映画、イベント、特定タレントの写真集やCD等です。
中でもファッション雑誌媒体の貸し出し依頼が来たら、他の案件を断ってでも優先的に対応するようにと先輩から教わりました。
それがどうしてなのか、業務を行っていく中で知っていきました。
雑誌の役割や効果についての私なりの解釈について触れながら、この業務のことについて書きたいと思います。
通常貸し出しの流れは、スタイリストから「この雑誌の、こういう企画を担当していて、こういうアイテムを探しています。貸出をお願いできませんか?」という内容で電話がかかってきます。
それに対して、細かい内容をヒアリングして、該当するものがあるのか、貸し出せる状態なのかを判断してOKであれば約束が成立し、貸し出すことになります。
貸し出したあと、その商品が使用されれば「掲載アイテム」となります。
そして、誌面を見た読者に「掲載アイテム」が刺されば来店のきっかけをつくることができます。
「○○(雑誌の名前)▲月号掲載」と書かれたPOPが店舗にあったり、WEBサイトやECサイトに載っていれば、試着やお気に入り登録など、お客様の次の行動を促すきっかけになるかもしれません。
また、その雑誌を定期的に読んでない人にも「自分が知っているあの雑誌にも載っている。ということは、この商品はイイものなのかもしれないな。」という風にポジティブな印象を持ってもらうことができます。
そして、これらは先述した、テレビ番組、映画、イベント、特定タレントの写真集やCD等へのリースでも同様の効果が得られるものです。
それなのになぜ、ファッション雑誌への掲載を優先するべきなのか?
下記に理由を挙げます。
①露出範囲が広い(PRカバレッジが高い)
雑誌に掲載されると、紙の誌面だけでなく、 dマガジンやU-NEXT、Kindle等のデジタル版雑誌、雑誌WEBサイトやSNS、 LINEニュース等の第三者メディアにも記事を掲載してもらえます。
このように雑誌は、誌面に掲載された情報がさらに拡散される仕組み、機会があるため、PR露出を広げられるメディアといえます。
②狙いを定めた情報伝達ができる
ファッション雑誌は、読者の年齢・洋服の系統・収入(ライフスタイル)に合わせて、幅広い種類があります。
読者側にとっても雑誌は、お金をかけて購入する品物になるため、自分の好みの系統に近いものを選びます。
つまり、ブランドの世界観と、雑誌が打ち出す系統、狙っている読者の年齢層とが近い媒体を選ぶことで、ブランドとして取り込みたいターゲット層に情報を発信することができます。
各媒体の特徴について、わかりやすくまとまったサイトがありますので、参照先として挙げさせていただきます。
③クレジットを確実に記載してもらえる
掲載ページにブランド名とプライスを載せてもらえる他、巻末ページにブランド側に商品について問い合わせる際の窓口を記載してもらえます。
テレビ番組や映画、イベント等、他の媒体ではクレジットを載せられないケースが多いです。載せられてもブランドクレジットのみ。
テレビ番組、イベントではタレントのインスタグラムや番組のインスタグラムに着用写真+ブランドタグをクレジットとしてつけてもらえることがあるため、交渉しています。ただし、タレントによってはSNSを全くやっていない方、事務所的にそういった投稿がNGという方もいらっしゃいます。
④第三者からのレコメンドを受けられる
ファッション雑誌の編集能力はSNSやキュレーションメディアが栄えた今日でも顕在しています。
年末によくある「今年のベスト●●」であったり、春は小物やデニム、夏になると「白T特集」や「サンダル特集」があったり、冬は「アウター特集」があったりと、市場にある様々な商品を厳選して紹介する企画が打ち出されます。ライターの優れたコピー、ライティング力により、他社商品と比較した自社商品の特徴が伝わります。
また、トレンドを知り尽くしたエディター、ライター、スタイリスト、モデルがお気に入りのもの、ハマっているモノとして紹介されるケースもあり、こういった有権者のお墨付きがもらえるのは雑誌への貸し出しで得られる大きなメリットとなります。
個人的な見解ではありますが、上記が私が考えるファッション雑誌への掲載を優先すべき理由です。
こちらを踏まえた上で、私がアポイントを受けるときは、
雑誌媒体←ドラマ←テレビ番組←映画・イベントという順で優先順位を設けて行っています。
貸し出しに出せるアイテムもタイミングによって多い・少ないあるため、場合によっては貸し出し数を制限したり、絶対この媒体に貸したいと思うアイテムは裏に隠して他の媒体のスタイリストさんには貸さないようにしたりと調整を行います。
リース業務は、担当者の塩梅による部分が大きく、属人化しやすいです。
しかしながら、スタイリストさんにとっては一個人感のやりとりではなく、「ブランドとの取引」のために、仮に他の方に業務を引き継ぐことになった際にも同じ対応をしてもらえるようにルールを設けることをおすすめします。
自身の前任者であったり、社内規定が現状ないのであれば、下記のカテゴリーにおいて規定を設けると良いと思います。
《条件》
・雑誌媒体→誌面クレジット、巻末クレジット必須
・WEB雑誌→ブランド名・プライス記載必須/商品ページリンク掲載交渉
・ドラマ、テレビ番組→着用者のSNSにて着用写真+ブランドタグ付け必須 ※SNSには投稿してもらえないが、超VIPな女優・俳優の着用であれば、ブランドクレジットで対応OK
・映画・イベント→着用者のSNSにて着用写真+ブランドタグ付け必須
・他社広告→NG
・衣装合わせ用の貸し出しはNG
《時間》
└貸し出し時間、返却時間の制限
例えば、9:30出勤の会社であるなら、最初のリース時間は10:00からにする。18:30が退社時間なら最終は17:30にするなど。
早く着いてしまったり、遅れてくるスタイリストのことを考え、余裕を持った時間設定をすることを徹底しましょう。
また、他の担当者がサンプルを使用する時間を避けてダブルブッキングしないように調整しましょう。
私が10時-19時の会社で勤めていた時は、貸し出し可能時間を下記のようにコマ振りしていました。
①10:30 ②11:00 ③11:30 ④12:00 ⑤12:30
⑥15:30 ⑦16:00 ⑧16:30 ⑨17:00 ⑩17:30 ⑪18:00
午前と午後の部を明確に分けることで、オフィスに人がいないランチタイムを避けて返却に来てもらえるように促していました。
※返却はロケバスの運転手やスタイリストアシスタント等、貸し出しに来た本人ではない方が、アポイントなしで来ることが多いです。
そして、この中で雑誌媒体←ドラマ←テレビ番組←映画・イベントの順で優先度を持たせて調整しました。
例えば、優先度の高い雑誌媒体にはできるだけ多くのサンプルから選んでもらうために、サンプルが揃っている●曜日のこの時間に、というように。月曜は返却予定品が多いから、火曜日の朝ならサンプルが充実しているな‥とその都度、良い日程を提案していきます。
《内容》
・10日以上持ち出しをする場合は、未使用が決まっているアイテムを一部返却必須
・雑誌1企画につき最大●点まで
・テレビ番組1番組1着用者につき最大●点まで
あとは、その時々のサンプルの残数や持ち出される期間を鑑みて細かく数量を調整していきます。
また、数ヶ月貸し出し業務を行うと使用率の高い方、低い方が体感的にも数字的にもわかるようになります。
使用率の高い方には多く貸したほうが良いし、低い方には限られた中で制限したほうが良い、と考えて動くことができますね。
ただし、スタイリストさん同士で交友関係もあるため、担当者が同じなのに別々の対応をされた、と不快に思われない程度に気をつけて対応をしていく必要があります。
それでは、今回はこのあたりで。
-------
2021.12.29
やな
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?