メディアの話。大きな一年生と小さな二年生と滝山コミューンとホタルブクロの草原。
古田足日の「大きい一年生と小さな2年生」は、
1960年代終わりの東久留米が舞台。
2013年にアニメ映画になっている。
こちらが、非常にディテールや時代考証が凝っている。
原作のスピリッツをうまく練り込んだ、
隠れた名作だ。
周囲は畑と雑木林。小麦が穂を揺らす。
田んぼじゃない畑の町。武蔵野の典型的な風景だ。
切り通しは赤土で関東ローム層がむき出し。
家の近くの川は落合川だろうか。
カワセミが餌をとっている。
主人公の一年生は、ホタルブクロが咲くという一本杉を目指す。
補導されていない道。
途中には乳牛農家もある。
広い通りは小金井街道。
バス停。
その先に一本杉が。
現在の小金井公園あたりだろうか。
距離にして東久留米から4キロほど。
1年生にとっては決死の大冒険だ。
知らない道は宇宙だ。
小2の頃、茅ヶ崎に暮らしてた頃、
海っぺりから東海道線を越え国道1号線を越え、北側の田んぼと雑木林があるところまで探検してアメリカザリガニを取ってきた。
1号線は国境の道だった。
国道ってすごい。
その感覚は、あの時、刻み込まれた。
1年生は一本杉にたどりつき、小さな川の向こうの丘にホタルブクロを見つける。
おそらく石神井川の源流だ。
川を渡るときに使うのは、打ち捨てられた看板。
「滝の山団地分譲住宅」と描かれている。
看板を橋にして、1年生はお姉さんの二年生と川を渡り、丘に上がる。
凸凹の草原は一面のホタルブクロだ。
当時の原作も、この看板に触れている。
古田足日さんは知っていた。
ホタルブクロの草原は、おそらくほんの数年前まで畑だった場所。
用地買収が終わり、畑が打ち捨てられほんの一瞬野生に戻る。
その野生の一瞬がホタルブクロの草原だ。
一年生が3年生になるころ、ホタルブクロの草原は団地になる。
映画は、その儚さを強く意識して絵を作っている。
1970年に古田足日が描いたシーンは、これからなくなる景色、だが、2013年に映画が描いた、すでになくなった景色だ。
そしてさらに。
この近くにはそっくりの名の団地がある。
東久留米市の滝山団地。
原武史の名作「滝山コミューン1973」の舞台となる悪夢の戦後民主主義団地だ。
https://www.amazon.co.jp/滝山コミューン一九七四-講談社文庫-原-武史/dp/406276654X
映画制作者が意識してないわけがない、と思う。
一年生や二年生の同じ学校に、原少年が通うほんのちょっと前の世界。
高度成長期のピークの武蔵野。
でも、ホタルブクロは、今も武蔵野の道端にしぶとく咲いている。
見ると一年生の大冒険を思い出す。
そういえば、私が最初にホタルブクロに出会ったのも茅ヶ崎の田んぼと雑木林の縁だった。
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