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猛スピードで、じゃがりこを
学校からの帰宅後、めずらしく次男がランドセルを玄関に放ったまま出かけていた。日没までのわずかな時間、下校後に出かけるのは本当に久しぶりだったので、「今日はどこ行ってたの?」とたずねてみた。
「友だちがね、俺に絵を描いてくれるっていうから、お礼に『じゃがりこ』を届けに行ってきたの」
出た! 次男の尽くし好き。と、思った。
一番古い思い出は、5歳のクリスマス。サンタさんにリクエストしてもらったプレゼントを、「(友だちが)ほしいっていったから」と、あげていた。その後も何度か、友だちが欲しいとい言ったから…とモノをすんなりあげていたことがあった。彼は物だけでなく、役回りにも独占欲が薄く、目立つような場所は選ばず、いつも誰かに譲る。みんながやりたがらないようなことを引き受ける。誰かに喜んでもらうことが好きでたまらないようなのだ(乙女座の月らしい)。
とはいえ、「欲しがられたから、あげる」がスタンダードになるものはいかがなものか?と思い、「自分でお金を得られるようになるまでは、誰かに物をあげるときは、必ずパパかママに相談してね」と諭していた。
絵を描くのが好きな次男。よく、友だちに頼まれたといっては、時間をかけて絵を描いているのだが、その絵と引き換えにお菓子を要求したこともなければ、もらったこともない。だのに〜な〜ぜ〜♪
違和感がぬぐえずに、「どうしてお菓子をあげたの?」と、聞いてみた。
「…なんか、あげたかったから」
「そうなんだ。次男くんはこれからも、誰かが絵を描いてくれるって言ったら、毎回お菓子をあげるの?」
「ううん」
「あげる、あげないの線引きはできるの?」
「…できる」
「お礼をすることは悪いことじゃないと思う。でもお菓子はパパとママのお金で買ってきてるのはわかるよね。描く前の絵に対してお菓子を渡すっていうのは、どういうこと? 物々交換したっていうこと?」
「…」
「ママはなんだか違和感を感じた。少し考えてみて」
「…」
(↑ また追い込んでますね、わたし)
猜疑心の強い蠍座の月
「お菓子ぐらい、いいじゃねーか」と思う気持ちもある。自分だって、好きな人や縁のある人にはお土産を買ったり、物を渡したりしてるじゃないか。なのに、わが子関しては、「これがクセになって肥大化したらどうしよう?」とか、「たかられたらどうしよう?」とか、悪い妄想を膨らませてしまうのだ(以前、長男のクラスメートに、お小遣いを使って、友だちに数万円分のガチャガチャを買ってあげていた子がいた、なんてこともあり)。
……と、あーだこーだと思いをめぐらす私の、出生図の太陽は乙女座にある。
太陽は、人生で目指すもの。テーマ。乙女座は、物事の問題点を探し出し修正しようとする、秩序を重んじる。猜疑心が膨らむと全体的な視野を持てなくなる…。ああ、これだ。悪い妄想を膨らませて不安になるのが得意中の得意なのだ。
さらに月は蠍座にある。月は過去の転生や思考パターンを表す。蠍座の月は必要以上に疑り深く、他者への不信感を抱きやすい。
乙女座の太陽に大事なのは
自分や他者の「〜べき」を捨てて、ありのままをみること
蠍座の月に大事なのは
過去に積み重ねた他者へのネガティブな感情を許すこと
俯瞰でありのままを見てみれば
その日の次男くんの行動を、もう一度ゆっくり振り返ってみる。
あげたお菓子は「じゃがりこ」。次男くんの一番好きなお菓子だ。「じゃがりこ」を食べるタイミングに繊細に気を配り、「『じゃがりこ』を考えた人はすごいと思う」としみじみ語る、次男にとっての、“お菓子・オブ・ザ・ワールド”。
その「じゃがりこ」を持って、普段は「夕方出かけると宿題にしわ寄せが出る」と敬遠していた時間帯に、わざわざ出かけていった。
ああ、そうか。
きみは、一番大好きなものをわざわざ急いで届けにいったんだ!
うれしい気持ちを、精一杯つたえたかったんだ!
2階にかけ上がって、宿題をする次男につたえた。
「ママわかった! 次男くん、うれしかったんだね。いつもは絵を描く方だったけど、誰かに描いてもらえるのが、すごくうれしかったんだね!」
ふたりで泣いた。
次男の気持ちがわかってとてもうれしかった。
そうそう。蠍座の月は、誰かとひとつになりたいんだって。