分かった気になれる損保会計⑦(コンバインド・レシオ 後編)
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対象:損害保険会社の決算を、手軽に理解したい人
前回、コンバインド・レシオは本業のコア利益における費用の割合を示していることに触れました。
そして、損害保険会社のデータベースにはW/P(Written Premium)のデータが蓄積されています。しかし、W/Pは会計上の期間損益を無視している「生データ」であり、決算上の損益を考えるうえでは期間損益を加味したE/I(Earned - Inccured)に変換をする必要があります。
正味収入保険料の変換(Earned)
話を分かりやすくするために、以下のモデルで考えてみたいと思います。
損害保険会社のデータベースには、正味収入保険料120円(W/P)の生データが計上されているのですが、2か月分の未経過保険料(20円)は会計期間の外側にあります。
この場合、上図のように会計期間を加味した「既経過保険料」(Earned)は100円になります。
保険金の変換(Inccured)
生データである支払保険金(Written Paid)を発生保険金(Inccured)へ変換するには、損害サービス部門が計上する未払保険金と、IBNR備金を集計する必要があります。
詳細は以下で説明していますのでご参考にしてください。
E/Iのまとめ
E/I(Earned-Inccured)の概念を図で表すと以下のようになります。
W/P損害率
→期間損益を無視した生の計上データ(Written)を使っているので、会計的にはあまり意味がありません
E/I損害率
→期間損益を加味した加工データ(Earned-Inccured)を使用しており、会計上の損益を考える場合はE/Iベースが有用です
今回はこれで以上です。次回は「資産運用等損益」に触れたいと思いますが、滞留資金が莫大な生命保険会社とは異なり、契約期間が短く滞留資金も少ない損害保険会社は大した資産運用をしていません。Twitter等で「東京海上は資産運用会社だ!」等のコメントを目にしますが、それは違います。なぜなら、資産運用等損益のほとんどが政策保有株式関連の「なんちゃって収益」であり、自分たちで稼いでいる資産運用益は極めて少ないからです。
次回は、このような「損害保険会社における資産運用の実態」についても触れたいと思います。
※政策保有株式の解説はこちら
(続く)