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犬を介護するという選択

最後にnoteを更新してから1年以上が経ち、せっかくなら神山まるごと高専の仕事に異動してからの1年を振り返ろうかなと思っていた。
ただ、文章を書きながら気持ちを整理しないといけないことが起きたので、久しぶりに業務以外で文章を書く。

7月19日の夜、愛犬が交通事故に遭った。

当たり前だけど交通事故は突然で、会社からの帰り道に夫からの連絡でこのことを知る。
いた場所から最寄り駅の渋谷まで歩いて25分はかかる。
金曜の夜必死でタクシーを探し、何も知らないタクシーの運ちゃんは「金曜日ですね。お疲れ様です。飲み会ですか?」
タイミング悪いなと思いながら振り絞って「違うんですが、急いで帰らないといけなくて‥すみません」と返答するのが手一杯だった。

我が家に来た日のふみ

愛犬の名前は「ふみ」
ふみは今年の8月に1歳を迎えるチワワで、今年の春に保護団体から譲り受けた。
ふみは血統書付きのチワワで、ブリーダーのところで販売物として飼育されていたが、パルボウイルス感染症になったこと、脱臼がしやすいと判断されたこと、そして目が青いことで飼育放棄となり保護となっていた。

パルボウイルス感染症
パルボウイルス感染症とは、パルボウイルスの感染により引き起こされ、嘔吐や下痢、白血球の減少を特徴とする感染症です。特にパルボウイルスに対しての免疫のない子犬などで致死率が高く、犬にとって危険な感染症のひとつ。無治療の場合の致死率は90%以上。

詳細は省くが、ふみは生きていた。
幸い自宅の近くに24時間の救急動物病院があり、事故に遭ったあと必死走った夫のおかげで、事故発生から30分以内に獣医さんに引き渡すことができた。私たち夫婦は車を持っていないので、この条件は奇跡だったと思う。

車に轢かれたはずのふみは不思議なくらい外傷がなかったが、その代わりに後ろ足の大腿骨骨折、肺挫傷、そして小脳と脳幹にダメージがあった。

小脳と脳幹のダメージにより、首が少し曲がってしまっている状態

獣医さんに説明されて、初めて大脳と小脳の位置を知り、脳幹の重要性を知った。こんなことでもなかったら、自分の頭にもつまってるくせに、私は一生、小脳のことなんて考えたこともなかったと思う。

小脳と脳幹のダメージはCTでは本当に少し、頭蓋骨の線がないくらいなのに「歩くことができない可能性高く、犬らしい生活は難しいだろう」と獣医さんからは宣告された。

獣医さんはとても言葉を選んでくれる人で、行くたびに私たち夫婦に丁寧に、でも現状の厳しさを伝えてくれた。
非常に言葉を選んでくれるので、なんだか途中でわからなくなり家に帰ってチャットGPTに「小脳と脳幹を損傷した場合、犬はどうなりますか」と質問したくらいだった。
チャットGPTの感情のない回答も、私たち夫婦にしっかりと現実伝えてきた。

泣きながら書いた病院の短冊。
「元気になりますように」と願うのが怖くて「元気になれ」「元気になる」と書いた。
夫婦だなと思う。

そして、犬らしい生活の話のあと、安楽死か介護か考えてほしいと言われた。noteを書いた理由の一つでもあるが、「犬 交通事故」で検索しても保険や損害賠償の話ばかりネットで出てくる。
どうか、同じ局面にいる人に届いてほしい。きっと悩むに決まっているから。

安楽死か介護か。これは正解はなく、何が正しいということはない。
ただ、事実だけ伝えると私たちは介護を選択した。
そして一瞬だけ、安楽死がふみにとって良い選択なのかもしれないと悩んだことを書いておく。

「命があったことがありがたい。介護しよう」と思っていた私たち夫婦でも、「犬らしい生活」の定義の前では無力だった。
歩けない・食べることができないまま生かすのはエゴなのかもしれないと悩んだし、悩んでしまった自分たちを責めた。
事故発生から2日目の夜、夫婦共にボロボロだった。

それでも介護を選択したのは、保護団体のAさんに相談したことがきっかけだった。
Aさんは、致死率90%以上のパルボウイルスに感染したふみを回復された命の恩人だった。Aさんのおかげでふみは生き延び、私たち夫婦のところへふみはやってきた。

保護施設のHPに載っていたふみ

「安楽死か介護かの選択を迫られていて、介護に関しての相談をしたい」と連絡した私にAさんはLINEで「どうしたいですか?」と返信してきた。

そのあと電話がなり、泣きながら現状を伝えた。
文字通り懺悔に近かったと思う。
泣きながら「犬らしい生活」の話をする私にAさんが話してくれた言葉は、絶対に忘れてはいけない言葉だと思うので残しておく。

歩けなかったら犬らしくない?歩けなくても食べられなくても、顔を見たら喜んでることもわかるよ。
これから車椅子を選んだり、リハビリしたり、過ごしていくと日々できることが増えて、まだまだ楽しいことがたくさんある。
今の状況を相談できる人はいる?
いなかったら私があなたの友達になって、いつでも聞いてあげる。
介護するのが怖い?だったら私にちょうだい。私がかわりに介護するから。

雷に打たれたような気分だった。
介護は未知だ。やったことがないことをやるのはいつだって怖い。
私たちはやったことがない「介護」が怖かったんだと思う。

この日の翌日、私たちは獣医さんに介護の選択を伝えた。
そして事故発生から山場だった72時間を超えた。

このときは酸素吸引やカテーテルで少し痛々しく見える

当初は点滴と酸素に加え、食事を取らなかったのでカテーテルを入れていたが、24日の今日時点で、少しずつ食事を取れるようになり、水も補助したら
飲めるようになり、酸素も必要なくなった。

ふみは明日、大腿骨骨折の手術をする。
それが終わればそろそろ自宅へ戻ってくるので、介護の始まりだ

ふみくん。ふみくんのために、急いでたくさんのものを用意してるよ。
よだれが出やすいと聞いて用意した赤ちゃん用のよだれ掛けは、小さいふみにピッタリそうだし、新生児用のオムツを改造する方がいいらしいから、夫婦で初めてアカチャンホンポに買いに行ったよ。
ふみくん、たくさんの新しい経験をさせてくれてありがとう。

私たちを見送る時、少し無理しながら首をあげてくれるようになったふみ






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