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『つまりお嬢ちゃんはあのおじいちゃん達とどんな関係??』


iyamori(スナック)

ーーーいつもヒマな横浜のとあるスナックの店内ーーー

「えへへ、え、、??1つシツモンしていいですか〜?」

「その質問聞く前に俺らからティサちゃんに質問だよ」(男性客40代Y)

「へへへ、え?、、なんですか?」

「え?つまりなに?さっきのおじいちゃん達とティサちゃんは全くの他人で、さっき会ったばかりってこと?」

「そうですよ。そう言ってるじゃないですか?」

「え!じゃあそこの焼き鳥屋さんでティサちゃんが1人で焼き鳥食べて飲んでたの?」(男性客40代K)

「そうですよ」

「あ、(俺もいいかな?)、、あそこの焼き鳥屋さん中々若い女の子が1人で入るには敷居が高いっていうか、、客層も高齢っていうか(高級っていうか)、、店の誰かと知り合いとか身内とか?」(マスター)

「ええっと、、たまに行くようになってご夫婦(店主)と仲良くなれたんです〜」

「それで今日も普通にそこの焼き鳥屋さんに行って、1人で焼き鳥食べて飲んでたら、あのおじいちゃんのグループと仲良くなってここのこのお店に一緒に行こう!ってなったの?」(男性客Y)

「そうですよ。カラオケ歌いたいって言うから」

「おじいちゃん達が?」(男性客40代K)

「そう。まだ飲み足りないし歌いたいな〜って言うから、そう言えばと思って、以前からこのスナックってどんななんだろう〜っていつもお店の前通るから気になってて、入ってみたいな〜って」

「(かなり喰い気味)おじいちゃん達と?」(男性客YとK声が揃う)

吹き出して笑う  笑笑笑(yamo)
別に、あえてどうしてもそのおじいちゃん達とこのスナックに入りたかったかどうかは不明 笑
当たり前だが 笑

***

夜も21:00を回っていた頃、若くて可愛らしいという印象の小柄な女性が、扉を開けて「あと4人とか入れますか?」と、入店の許可を求めて入ってきた。

その日は珍しく店内は混み合っていて、カウンター席10席は既に埋まっていた。

しかし、その若い女性客が入ってきたことを潮に、「そろそろじゃあ俺らは、、」と帰り支度を始めた常連客が居た。皆70代のおじいちゃん達だ。
、、まあ夕方17:00から飲んでる人達っだった。
充分と言えば充分だろう。。
、、と、yamoは思う。

、、あ、、ありがとうございました〜スミマセン〜なんて常連さんに言いながら、可愛らしい新規の女性客に少し待っててと目と手で合図を送って了解をもらう。

パッパとカウンターを片付けて、どうぞお待たせしました〜と、その可愛らしい新規の女性客に声をかけてスツールに座るように促すと、その後からゾロゾロと入ってきたのは、身綺麗な老紳士3人だった。
1番高齢の人がたぶん旗振り役で、食事会と飲み会の幹事役だろう。85〜88歳くらい。
かくしゃくとされていらっしゃる。

あとの2人はたぶん65〜70代半ばくらい。
みんなそこそこシワクチャだし薄ら禿げているが、キチンとしている印象。
どなた様も明るい色味のワイシャツにはアイロンがかけられていて、名の知れたブランドのマークが入ったニットのベストを着ている。
ブランド名は分からない。
でもよく見かけるやつ。
老舗。
ベストではない人はカーディガン。
深い紺色。
サイズも自分に合ったものをお召しになっている。
靴は革靴ではないが、古くはない。
靴下も色味を靴とおズボンに揃えている。
1番高齢の男性は、店内に入ってすぐにコホンと咳が出た時に、自分のズボンのポケットから出したハンカチで口を覆う。
ハンカチはロベルタ。ロゴが見えた。

とにかく全体的にくたびれたという印象を感じさせない。

歳を重ねても外見って大事ねと改めて思うyamoである。


ウィスキー(ロイヤル)のボトルを注文。1本15000円。
ティサと名乗る女性も含めて皆さんそれを水割りで飲む。
チャージが1人4000円(歌い放題)なので、ここまでで既に31000円の売り上げ。
店としては、お行儀よくあとは帰ってさえくれればいわゆる「良いお客様」だ。

そこから2時間、ティサと名乗る若い女性は、本当に知っているのか?と疑いたいほど下手くそな赤いスイートピーを歌い、音を外すなんて当たり前、メロディーなんて無いも同然で、いやいやそれ絶対歌えていないぞと思う津軽海峡冬景色を熱唱してるふうに見せて、なんでその曲をチョイスした?と不思議に思っているyamoを尻目に、若くて可愛らしい印象のその女性は、おじいちゃん達に思う存分チヤホヤされていた。

絶対下手くそなのに、「上手いな〜」「かわいいな〜」言われて、「もてはやされる」を絵に描いたような風景がそこでは展開されていた。

とはいえその3人のおじいちゃん達は大変お行儀が良くて、チヤホヤはするけど、ベタベタとお触りが始まるかっていうとそんなことも無くて、既に居たお客さんに気を使い、お客さん同士で語り合い、カラオケを譲り合い、歌唱力を賞賛し合っていた。
生まれはどこかだの、住まいはどの辺かだの、今日は何の集まりでここに来ようという流れになったのかだのと、この店はいいね〜と言いながら、良いでしょ〜と言いながら、それぞれがそれぞれに説明と会話を楽しんでいるように見えた。

やああやああやああと、今夜は楽しい楽しいと、どのおじいちゃん達も満面の笑みだった。

「ねえ、ちょっと」と1番高齢の男性に声をかけられて、yamoはその男性客の横に付いた。
「会計」と言われて、ありがとうございますと請け負い、ママへ伝達。
時計を見たら23:00だった。
ママがいくら請求したのかは知らない。
31000円ではないはずだ。
いくらかプラスされている。
初めて来たその高齢の男性客は、気持ちよく万札を数枚ママに渡して、タクシー2台ねと言う。

もちろんティサの分の会計はそこに含まれている。

聞けば、ティサと名乗るその女性客は28歳独身。
さっきよく行く焼き鳥屋さんで1人で食べて飲んでたら、3人のおじいちゃん達と仲良くなって、次は飲めて歌えるところに行こう〜ということになって、✌️イエーイ✌️というノリで一緒にやってきたらしい。
職業も本名も不明だけど、どうも何かの営業らしい。
割と固い企業にお勤めだとも匂わせている。


おじいちゃんはなんならタクシー2台というのは、ティサを乗せるつもりだったのかもなとyamoは後で思う。「これに乗って帰りなさい」「運転手さんこれで」と、どんなに近所でも一万円札を渡しておくという紳士のマナー的なアレ。昔のドラマのシーンで見るアレ。


ところが、ティサは帰らない。笑笑


へ?残るの?と、yamoはびっくりした。


「もうちょっと飲んでも良いですか〜〜?へへへ」

「?、、、どうぞどうぞ」(マスター)

「え?一緒に行かなくていいの?」(男性客40代Y)

「いいんですいいんです。さっき会ったばかりの人達だから〜」

この瞬間、その場店内に居た一同思ったことは一緒だったろうと思う。

『へ?このお嬢ちゃんあのおじいちゃん達とどんな関係?』

***

最後まで残った40代男性客YとKは、最近毎月1回のペースで通ってくれだした割と新しいお客様だ。
焼酎が好きで、ウーロン茶で割る。
ボトルを入れていつも2人で来て2人で飲んで喋って帰る。
この日はサッカー観戦してきた後だったようで、2人でお揃いのユニフォーム姿だった。テンション高めでご来店。

陽気で礼儀正しくて「いい奴同士」という印象の男性2人。

そのYとKのボトルの酒をティサは今度は飲み始めたという流れだ。

「一緒にいいですか〜??🎶」
「おおお🎶いいよいいよ。どうぞ」
「わああ〜〜い🎵乾杯❤️」
「かんぱ〜〜い🎵」

マジか。
男達上機嫌。
すごいな。
どんなだ。

ま、いっか 笑


そしてティサはまた歌えないくせに歌えるの〜大好きなの〜とEXILEを熱唱するふうに🎤見せる。
デタラメももうさすが👍としか言いようが思いつかない。
一緒に歌わされている男性客Yは「お手上げ🤷」のポーズをとりつつもニコやかだ。

酒が飲めて若いって、、ううう〜む🤔🤭実に楽しそうだな👍
この子の世界はファンタジーなのだろうな。。。羨ましいぞ。

***

結局、結果、ティサはそこから更に2時間、40代男性客YとKのボトルをもう1本空けることに成功し、スキマスイッチでYに抱きついてはキャハハと笑い、キンキキッズではKと肩を組んでデタラメをもう一盛り展開した。

もう、ママもマスターもyamoでさえ、「放置する」しか方法が思いつかない。
どう触って良いか分からない領域だ。

自分たちだけで盛り上がり過ぎていることになぜか男性客YとKがママやマスターに気を使って席を離れると、ティサは追って男達に抱きつき、首にしがみつき、歌って歌って〜とねだる。
やりすぎ感のティサに対して、それも邪険にはしない「いい奴」のYとK。

午前25時を回ろうとしているところで、どうしようもなくなってママが「閉店」のお願いをする。

もちろんティサの分の会計はYとK持ち。
焼酎のボトルを1本追加した分とチャージ代含めて諸々15000円の請求。
仲良く数千円ずつ割り勘している。

きゃっ!やった!ご馳走様です〜〜❤️
と、浮かれポンチに喜んでいるふうのティさに、マスターがそっと現金2000円を二つ折りにして渡す。
「今夜はどうもありがとうございました」と。

へ??なになに?ティサはマスターの仕込み? 笑 なんのだ(yamo)
そんなわけない 笑
これもこの業界の「礼儀」と「普通」なのだろうか。

人として、女として、好きになれるかどうかは別として、ティサがどんな輩であれ、どんな種類の人であれ、この日の店の売り上げに結構な貢献をしたことには違いない。

結果、ティサは自分は一銭も払わず(先に行ってきた焼き鳥屋さんでの飲み食い分もおそらく)、食べたいものを食べて、飲みたいだけ飲んで、デタラメに歌って、騒いではしゃいで盛り上げて、男達に一晩で数万円を払わせたという功績でお小遣いまで貰えたのだ。

彼女曰く、「そうしたいからそうしただけ〜〜」の結果なのだ。
ただそうしただけ。


世の中どうなってんの?
ねえ? 笑笑

日常はドラマに満ちている。

🥂横浜のとあるヒマなスナックの店内にて🚬🍺
#スナック
#横浜市
#飲めないのにスナックでバイト
#価値観の崩壊


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