バンドマンに恋煩い【3】
iyamori(スナック)
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⚠️注意【バンドマンに恋煩い2】の続きです。良かったら1と2を読んでからこれを読んでくださいませんかと思います。1と2の内容が面白ければスキもお願い致します。励みになります。
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バンドマンでボーカリストのトールちゃん(主に千葉県内で活動中)が、ひょんなご縁でなぜか横浜市のyamoが週1でバイトするスナックに飲みに来た。
1人で来た。
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「yamoちゃんどんなのが好きなの?」
「ミスチル」
「ミスチルか〜」ふ🎵♬
「うん、HANABI」
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実に楽しそう。
その夜のトールちゃんは本当に楽しそうにyamoには見えた。
その夜の、というか、これでまだトールちゃんとの夜は2回目なので、ほぼ「知らない人」で括れるトールちゃん。
でも今回のこの夜で、お歌がとっても上手い!ということも「分かったリスト」に入れる。
yamoはお酒は飲まないし、酔っ払いの気持ちは絶対分からないけれど、トールちゃんが楽しくないのか楽しいのかくらいは分かっていた。
控えめに表現しても絶対楽しい。
この「楽しい」という状況は、彼が眠って翌日目覚めても、「なんか昨夜は楽しかったな〜」という程度には思い出されるはずだ。
yamoは違う。
「島谷さ〜んねえねえねえ〜〜」(ガヤ1)
トールちゃんのミスチルのHANABI熱唱(パーフェクト)に衝撃を全員(ママ以外)が受けて放心状態も一瞬。
なによ?
ねえねえサインは?
へ?
ミスチル好きなんでしょ〜?へへへ
スキよ(だけどお前待て待てそこは慎重に選曲した方がいいぞ)
じゃあ俺のミスチル聞いてくださ〜いへへへへ
ヤバい。面白い。吹き出してしまった。
爆笑したい。だいぶ堪えた。
酔っ払いのスゴさを改めて思い知るyamo。
ここでこのタイミングでミスチルを歌おうとする。
サインなら俺にもいけるんじゃん?という発想。
結果。
ひっどいサインを聞き終えて、「その度胸が好き〜」とyamoは言った。
本当にそう思った。笑
いえーーいヤッターーーと喜ぶガヤ1。
やったな〜ワハハハハと1の肩をはたくガヤ2。
さて、トールちゃんは?
タバコを吸っている。柔らかい笑顔で左肩の少し高いところで拍手している。
視線はデンモクをチラッと見ている。
次は何を歌うか?では無い。
何を歌うことでこのガヤ達と盛り上がれるか。
イイね。楽しくなってきたぞという目と笑顔がyamoの同じそれと合った瞬間の熱。
あの感覚をどう表現したらいいのか。
昔からこの人のことを知っているような錯覚。
この日この時間に起きていることは何もかもが当たり前にyamoは知っていることで、それは普通にそこにいつも有ったような錯覚。
その笑顔も、拍手も、タバコの煙すらも。
yamoが手を震わせながら出した乾き物がのった小さい籠を、トールちゃんがスッとyamoに差し出す感じも。
それを普通にアリガトでもなく食べちゃう感じも。
yamoがチョコレートのフィルムを取ってあげて、トールちゃんがフィルムからチョコをつまんで自分の口に運ぶという一連の流れも、まるでいつもそうしていることのような錯覚。
いつも座るスツールに今夜もトールちゃんは普通にいつも通りに座っているという錯覚。
その人が近くに居ることで現実的な緊張感は有る。
ドキドキはする。
ドキドキしながら深いところで起こる妙な錯覚。
「ミスチル以外に好きなのは?」
「スピッツ」
「スピッツか〜どんなヒット曲あったっけ〜?」
「チェリー」
「ううん??」
「空も飛べるはず」
「???」
「ロビンソン」
「出だしは?」
「もういいよ!始まれば歌えちゃうんじゃん?!」
「え、あ、どうかな」
「良い良い大丈夫。yamoが歌う」
イントロ流れている♬🎵🎵♬🎶
「まかせて🎶」yamoがマイクを持った。
ダメダメ俺が歌う!(マイク奪われる)
🎶🎵新しい季節は〜なぜか切ない日々で〜🎵(なんだよやっぱり上手いな😆)
🎵河原の道を〜自転車で走る君を追いかけた〜🎵♪(声が良い💕)
(マイクをyamoに渡してここまでしか知らないと言う)
つべこべ言わずに後を請け負うyamo。
♪🎵思い出のレコードと大袈裟なエピソードを〜♪♬
♪♬疲れた肩にぶら下げてしかめ面まぶしそうに〜♪🎵
同じセリフ同じとき、、、
(トールちゃん、ガヤにちょいそのマイク俺に貸してくださいと、マイクを持つ)
思わず口にするような〜ありふれたこの魔法で〜作り上げた〜よ〜
♬🎶🎵だああ〜れも触れないっ (入ってきたーーー🎉😆)
🎶ふううたりだけの国 (🎉まさに2人の世界🌍💕💓🌏)
🎶🎵君の手を離さぬように〜(見つめあってちゃ歌詞が見れない😆)
🎵♪おお〜きな力で〜♪🎵空に浮かべたら(これは夢だ😴)
♪ルララ🎵宇宙の風にのる〜🎵🎶(♩ふわふわMAX夢うつつ😴)
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「もうだいぶ通ってるんですか?家ここの近所ですか?」
ガヤ2人がねえねえと、トールちゃんに聞いた。
借りたマイクを返しながら、へ?何の話しですか?と応ずるトールちゃん。
「常連さんさすがだな〜」
「俺?」
「他に居ないでしょ!俺らは初めてなんだから」ギャハハハハ
「この方も初めてなのよ。今夜は不思議な夜ね」(ママ)(そこに居たか)
「ホントですね〜。初めての人ばかりで確かに不思議な夜」
「初めてーーーー!!??マジで?」
いやいやいや無い無い無い疑わしいというジェスチャーのガヤ2人。
そう見られたトールちゃんになぜかyamoが居た堪れなくなって、yamoはスツールから立ち上がって、今替えなくてもいい灰皿を新しいものと取り替えてみるとかという行動に出た。
自意識過剰だ。まさにだ。どうするyamo。何を。
トールちゃんがガヤ2人に、どうしてそう見えるのか不思議だな〜なんて言っている様子を、yamo1人が気にし過ぎていることがバレないように斜めからチラチラとにこやかにチェックしていた。
「yamoちゃん」
トールちゃんに呼ばれた。
「ドキーーッ)ん?はあい?」(普通を装うってどうやったっけ?)
「トイレって」
「ん、ハイこっち。あんないするよ一緒に、、、」
これはチャンスタイムなんじゃないのか?
何かアクションを起こすべきじゃないのか?
何かアクションを何かアクションを何かアクションを
誘うとか誘うとか誘うとか誘うとか誘うとか
どこに?
なんて言って?
この後?
あした?
待て。2人っきりになりたいですっていう日本語を今は言うべきじゃなかろう??
な?きっと違うよ。な?そもそもただ飲みに来ただけの人だぞ(千葉からだけど)。
2人っきりになりたきゃ男の方から言ってくる。それが常。
何か特別な空気感を感じているのはyamoの方だけかもしれない。
言ってこないってことはなりたくないってことだよ。
???、、嗚呼あああああっっっ!ムリ!!全然わからない!!
「トイレここ」
先を歩いて振り向いたyamoにビクッとしたトールちゃん。
目を逸らされた気がした。
おや??(小さい違和感)
急にyamoが止まったことで軽くぶつかる。
トールちゃんとの距離が近くて、他に人も居なくて、でもyamoは、「今夜は本当に来てくれてありがとう」と言うだけで精一杯だった。
軽くぶつかった勢いもあって腕に触れた。
彼の左腕の肘より少し下あたりに触れ直す。
いい色に焼けている筋肉質の腕だった。
緊張している。yamoだけじゃない。
トールちゃんも身を固くした。
顔が見れなかった。
「んああ、いや、そんなそんな」
「ちゃんと流してきてね 笑」
「ハハ笑 ハイ」直立で一礼する。
こういうとこよとまた思う。
ジワっと苦しい。ふふ。
***
と、いうわけで次回に続きます。
終われなかったな〜。長いな。
もう少しyamoのこじらせっぷりにお付き合い下さい。
ここまで読んで頂きありがとうございます♪
次回、つまらなそうにしているママへもトールちゃんの優しい眼差しが向けられます。
ママのお目目もハートになっちゃうのか?!
そもそもなぜトールちゃんは千葉県なんて遠い所からyamoが週1でしかバイトをしていないスナックにただ飲みに来たのか!に迫っていきます。