忙しい人のための『晴明伝奇』#23 耀を蔵する者
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▶時期:康保元年(964)
難波浦に到着した晴明は保憲の海若祭を手伝った後、一泊してから帰ることになった。保憲が眠りについた後、晴明は密かに宿を抜け出して竜宮へ向かう。竜宮の人々は晴明の来訪に驚き、晴明は竜宮の門前で兵士たちに捕らわれ東海竜王の前に連行される。
東海竜王は晴明の素性を確かめるために、法術によって彼の過去を覗く。すると、晴明が満月丸であることがわかり、竜王をはじめ竜宮の人々は晴明に非礼を詫びて歓迎した。長い年月を経て再び竜宮を訪れた晴明は昔を懐かしみながら城内を巡ったが、以前と変わらない様子であった。
晴明は竜王に梨花の耳飾りの片方を見せ、これが泰山でしか採れない宝珠で作られていることを知る。晴明は梨花の正体が泰山に関係していると思い至る。
晴明はかつて竜宮で将来を占ったときに「立派な陰陽師になれば、再び白雪に会える」と予言されたことを覚えており、玄天上帝に白雪の近況を尋ねる。ところが、竜宮に納められている神仙の史書によると、白雪は平将門の怨霊を鎮めるために犠牲になったと記されていた。晴明はもう二度と白雪に会うことはできないと嘆き悲しむ。
一方、碧霞元君は日本に降り立ち、妖狐の生息地である山林を中心に「年に一度仙狐の登用試験を行うので、興味のある者は泰山に来るように」という旨を記した看板を立てる。それから平安京に赴き、妖狐が身を潜めていそうな場所に同様の看板を立てた。
一仕事終えた後、碧霞は都を観光した。彼女は満月丸と出逢ってから長い年月が過ぎていたことに思いを馳せながら、彼が陰陽師になれたのか知るために陰陽寮に向かった。しかし現在の満月丸の近況がわからないため、外から眺めていることしかできなかった。碧霞は観光をしている間に彼女が梨花だった時の友人たちとすれ違うが、彼女は笠で顔を隠していたので気付かれることはなかった。
晴明は白雪との約束を守り陰陽師になったものの、師匠のように卓越した陰陽師になって一族を再興できるのか気がかりであった。玄天が晴明の将来を占ったところ、多くの魑魅魍魎と対峙する運命が待ち受けていた。そこで、玄天は晴明に沈星扇を授け、来たるべき災いに備えて修行するよう備えた。また、彼は自分を卑下する晴明を水中に沈む玉に喩えて励ました。晴明は玄天に礼を述べて、保憲と一緒に難波浦を後にした。
都に帰ってきた晴明は、奇妙な看板を目にする。それは碧霞が設置した仙狐登用試験の看板であった。