忙しい人のための『晴明伝奇』#22 新しい家

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▶時期:応和元年(961)― 康保元年(964)

碧霞元君は耳飾りが片方しかないことに気付くが、地獄の災いで失ったとは思えず、再び赤山禅院を訪れた。彼女は覚醒した場所の辺りを探し回ったが、それらしきものは見つからない。碧霞が諦めて帰ろうとすると寺院の僧に呼び止められて、かつて自分によく似た女が夫と参詣していたことを知るが、全く身に覚えがなく困惑する。

内裏の修復作業がひと段落した後、晴明は子供たちと一緒に賀茂の家を離れる決意をする。保憲は引き止めるが、梨花がこの世を去った今となっては、晴明にはこの家にいる理由がなかった。

晴明は陰陽師として貴族に仕え始めてから間もなく収入も少なかったが、保憲の援助もあってそれなりの暮らしができる屋敷に移り住むことができた。引越しの当日、晴明は保憲がら竜宮の鎮宅霊符を渡された。晴明は、梨花がいつか自分の許に帰ってくることを願って庭に梨の木の種を植えた。

晴明の新居に智徳法師が訪ねてきた。晴明は智徳から若藻という少女を紹介され、女房として仕えさせてほしいと頼まれる。智徳が言うには、若藻は異国から播磨国に流れ着いた少女で特別な力を持ち、智徳が晴明の話をしたところ強い興味を持ったので連れてきたのであった。晴明は遥々遠くから来た智徳のために渋々若藻を受け入れる。

晴明は梨花を捜すために神仙の住む世界で唯一縁のある竜宮を頼ろうとしたが、行き方がわからずにいた。思い悩んでいる晴明を前に、若藻は今の晴明の霊力では自力で海に潜ることはできないと話す。さらに、彼女は晴明が手にしている耳飾りには冥界の宝珠が用いられており、その耳飾りを使って修練を積めば容易に竜宮に行けるという。晴明は半信半疑ではあったものの、藁にもすがる思いで彼女の言葉に従う。

三年後、晴明は半妖でありながら仙人に近い力を扱えるようになった。若藻は晴明の力が増大したことを祝福し、海底に向かうには十分だと伝える。

保憲は藤原実頼の屋敷に召され、改元について議論した。この年は甲子革令に当たり、変事が起こりやすいという言い伝えがあった。保憲は災いを鎮めて徳を施すために改元が必要だと訴え、応和から康保へ改元された。

改元に伴い、保憲は摂津国難波浦で海若祭を修することになる。晴明は修行の成果を試す好機が訪れたと喜び、弟子として同行する。

一方、碧霞は兼ねてからの念願であった世界中の妖狐を統括する計画を進めていた。彼女は妖狐を集めるために、再び平安京に向かう。

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