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johnの表現力溢れ出る「浪漫逃避行」の魅力

お久しぶりです。やみくもです。

突然ですが、私はボカロPのjohnさんが大好きです。

johnさんと言えば現在YouTubeで2000万回、ニコニコで300万回以上再生されている「春嵐」でご存知の方が多いと思います。


また、2021年から"TOOBOE"名義でシンガーソングライターとしても活動を行っており、ぎたメタさんの動画と共に大ブレイクした「心臓」、チェンソーマンのEDとして登場した「錠剤」などで知っている方も多いかもしれません。
大好きなアーティストさんがこうして今までと違った層からも支持されるようになるのはやはり嬉しいですね。

(2つ目のリンクが「錠剤」なのですが、YouTubeの制限によってログインしないと見られないようです。なんで!)

ちなみに、johnさんは先月に『ミゼラブル』以来3年ぶりとなる4枚目のアルバム『PINK MOON』をリリースしています。
個人的には「しあわせ」に圧倒されました。
素晴らしいアルバムだったのでぜひ!



さて、今日はそんなjohnさんの1stアルバム『ANGRY DOG』から

「浪漫逃避行」

と言う曲を紹介します。
まずタイトルのチョイスが良いですよね!

なんと言ってもこの曲、johnさんの表現力が尋常ではありません。本当に心底驚かされた大好きな曲です。
その想いを込め綴ってみます。



まず、この「浪漫逃避行」は1コード曲です。

コードというものは皆さんの大好きなあの「丸サ進行」とかのあのコードです。
コード理論は非常に奥の深いものですが、ここでは"和音の展開で雰囲気を作るもの"と考えてもらえれば大丈夫です。

さて、このコード進行ですが、基本的には一つの楽曲の中で複数個使われています。
AメロからBメロに変わる時、音楽の雰囲気がガラッと変わったように感じられたという経験はありませんか?

そういう場合は大体コードが変化しています。つまり、コードというものは複数を組み合わせ曲の構成するものだという事です。


しかし!
この曲ではそのコード進行が一つだけなのです。これによって何が起こるのか?

曲の構成、展開が難しくなります。


1コードで弾ける曲、というのは実は結構あります。
有名なところだとビートルズのアルバム『revolver』の「Tomorrow Never Knows」とかでしょうか。



(当然、ビートルズとは比較になりませんが)私も似たような曲を作ったことがあります。
そこで痛感したのは

「1コードでは曲の構成が淡々としたものになってしまう。それ故に音作りが大事だが、それが難しい!」


ということ。
1コード自体は良いのです。
しかし、曲の展開が変わらない訳ですから普通にやっているとどうしても淡々と変わらない感じになってしまいます。

そこで音作りやメロディの工夫、或いはリズムや歌詞なんかが重要になって来ますが、その比重が大きくなるというのはやはり難しい。

それを持ち前の表現力で完全にカバーした名曲が「浪漫逃避行」という訳です!

しかも、「浪漫逃避行」はコード進行が4小節分しかないんですよね。1コードといってもコード進行部分には8小節とっている曲が多い中でこれはかなり凄いです。

それでは、どうやってjohnさんは曲が単調になるのを防いだのか?



第一の要素は

"歌詞"

です。

歌い出しはこうです。

「ねぇ あの話どうなった?私随分待っていますけど 馬鹿を見破られましたね ご愁傷様です」

「浪漫逃避行」,john


もう、johnさんのセンス爆発という感じの掴みですね。大好きです。
この歌い出しで一つの起承転結のようになっていて、曲中にグッと引き込まれます。

サビはこんな感じ。

「浪漫逃避行 貴方のいない世界に行きたいの どうやって どうやって なんて考えたくもないけど」

「浪漫逃避行」,john

もう、ただただ大好きです。
「考えつかない」、じゃなくて「考えたくない」、なんでしょうね。johnさんの言葉遣いには脱帽するばかりです。

こればかりは語彙を増やすだけではどうにもならない、johnさんの詩的センスだと思います。



さて、第二の要素は

"上物"

です。

コードが複数個ある曲はBメロ→サビでコードを変化させることで盛り上がりを演出しますが、先ほども言った通りこの曲は1コード。
じゃあ、サビは盛り上がらないのか?

いいえ、めっちゃ盛り上がります。

ほんと、弾けるような盛り上がりがあります。
それでは何がその盛り上がりを産んでいるのか?

それは上物の要素が大きいと私は分析します。

この曲は基本的に"ドラム・ベース・コード弾きのギターとエレキピアノ"で構成されているのですが、サビでは上物としてシンセサイザーが使われています。

そのシンセの奏でる裏メロがサビに爆発的な盛り上がりを生んでいるのです。
ちなみに裏メロとは本命のメロディ(この場合は歌メロ)の後ろで鳴ってる音のことです。やはり裏メロが入ってるとゴージャスに感じますよね。



そして!最後に当たる第三の要素は

「コード進行音の歪み」

です。

まず、この曲の驚くべき事実をここでお伝えします。
基本的にはロックではギターが、R&Bではエレキピアノがコードを弾いており、その二つの要素を持ってらっしゃるjohnさんの曲もそのどちらかがコードを担当していることが多いです。

しかし、なんとこの曲、ギターとエレキピアノの両方がコードを担当しているのです。

これ、初見の時はエレキピアノを魔改造したのかなと勘違いして気が付きませんでした。
そう勘違いした理由はギターとエレキピアノが同時にコード進行を弾いているからなのです。

ざっくりこの曲は

「イントロ→1番Aメロ→1番サビ→間奏(イントロと同一)→2番Aメロ→2番サビ→転調ラスサビ→アウトロ」

という構成になっています。

このイントロ・サビの部分で"同時コード弾き"が行われています。1番A・2番A(の後半)はギターのみでのコード弾きですね。

この"重ねて音を作る"という発想には驚かされました。正に溢れる表現力。

さらに驚かされる要素があります。
それが先ほども話に出した"歪み"です。

ロックのギターを聴いてるとなんか音割れしたみたいな音に聞こえる時があるじゃないですか?あれが"歪み"です。
ここでは"ゆがみ"ではなく"ひずみ"と読みます。

この歪み、ロックでギターに施すのは全然珍しくありません。というかやらない方が少ないですね。
エレキギターはアンプを通すことでエフェクターをかけ歪んだ音を出す仕組みです。

そして、現在ではエフェクターの一つとしてDAW(作曲ソフト)に組み込まれている事からギター以外の音を歪ませることもまた珍しくありません。

それでもこの曲の歪みには驚かされます。
なんとこの曲、ラスサビからアウトロにかけて

「コード4小節の最初の2小節を歪ませず、後半2小節を歪ませる」

という聴いた事のないとんでもない仕掛けを打ってくるのです。
これにより同じコードでも全然変わって聴こえる。
これを初めて聴いた時、johnさんの表現力に心底震え上がりました。

文章だけだと少し伝わりづらいかと思うので、GarageBandで耳コピ再現した動画を用意してみました。音的には完コピに程遠いですが、どういう事かはわかっていただけると思います。

"同じ和音なのに違う音"という部分に着目して聴いてみてください。


全く雰囲気は出てませんが1度目と2度目だと後者の方が音がガビガビになっているのがわかるかと思います。

この「交互に歪んでない音と歪んでいる音がくる」、という仕掛けを素晴らしい演出にしている手腕!
天晴れというほかありません。

少ないトラック数でも楽しめるような工夫とアイディアを駆使して曲を作っているのが伝わってくるのがjohnさんの曲ですよね。
そんな部分が大好きです。

ということで、

john「浪漫逃避行」

の紹介でした。

お読みいただきありがとうございます。


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