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マインドツリー8 選曲について など
先日のマインドツリーでの選曲や、曲順について少し書いておきたいと思います。
バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 プレリュード
クルターグ:Jelek I
向井航:ラス・メニーナスによる
バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 アルマンド 3
ケージ:北天のエチュード 第一楽章
クルターグ:Az hit...
バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 クーラント
ケージ:北天のエチュード 第二楽章
クルターグ:Jelek II
梅本佑利:萌え2少女(委嘱新作)
梅本佑利:萌え2少女#2(委嘱新作)
休憩
バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 サラバンド
クルターグ:Pilinszky János:Gérard de Nerval
ナヴロツィティス:ESALI(公募作品、世界初演)
バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 ブーレ
ケージ:北天のエチュード 第3楽章
クルターグ:Schatten
クルターグ:Hommage à John Cage
ケージ:北天のエチュード 第4楽章
バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 ジーグ
向井響:この世界を、君に(委嘱新作)
このような感じで、バッハ、ケージの各楽章や、クルターグの小品、新作などを織り混ぜました。
選曲について
無伴奏チェロリサイタルマインドツリーの「バッハツィクルス」は2020年から6年間かけたプロジェクトで、
バッハの組曲を1年に1曲テーマにする
梅本佑利さんに6年連続委嘱する
委嘱新作を初演する
公募作品を1〜2曲演奏する
ジャン・ギアン・ケラス委嘱によるバッハの各プレリュードに繋がる「プレ・プレリュード」の演奏
2020年山澤慧B→Cでの「プレ・プレリュード」の再演
という特徴があります。
今年はバッハの無伴奏チェロ組曲第3番がテーマということで、
ケラスが3番のプレ・プレリュードとして依頼したクルターグの作品を演奏することと、同じく3番のプレ・プレリュードとして書いてもらった向井航「ラス・メニーナスによる」(2020年B→Cで初演)を演奏することは決まっていました。
(ちなみに、クルターグは「プレ・プレリュード」を完成させませんでした。ケラスがバッハ3番を弾くときには、一緒にクルターグの小品を数曲演奏するようで、今回もそれに倣いました。)
向井航作品ではバッハボウを使うので、バッハボウを用いるジョン・ケージの「One8」をプレコンサートで演奏し、同じくジョン・ケージがチェロのために書いた作品、「北天のエチュード」を演奏しようと思いました。
![](https://assets.st-note.com/img/1664081633568-ikJAWV5bNr.jpg?width=1200)
ただ、コンサート内容について決めていくなかで、プレコンサートで「One8」を弾くことは断念しました。(45分かかるということや、平日19時本編開始であることなどから)
バッハ、クルターグ、ケージ、向井航に公募作品と新作が加わります。
公募作品について
今回、多くの国と地域から、計100作品を超える応募がありました。
選考はものすごく迷ったのですが、今回は「荒削りだけど何か執念のようなエネルギー」を感じる作品を選びました。
![](https://assets.st-note.com/img/1664082220974-YuuHL1X6Wx.jpg?width=1200)
ナヴロツィディスさん、1956年生まれのギリシャ人作曲家による「ESALI」とい作品です。(ESALIというタイトルは家族の名前からとられたそうです)
選考のときには名前や年齢など個人情報は一切ない状態で楽譜を見るのですが、「この荒削りの感じ、、エネルギーのありあまった若手作曲家に違いない」と思いましたが全然違いました。ベテランでした。荒いだけでした
委嘱新作について
6年連続委嘱している梅本佑利くんには、特にこちらからは要望出さず、好きに書いてもらっています。毎回ビクビクしています。昨年は対戦型チェロ曲でした。今年はチェロと萌え声による作品でした。無伴奏とは。
向井響くんは以前から、新作を頼みたいと思っていましたが、やはり双子の兄弟である向井航くんが登場する回にお願いしました。別に双子で対決させよう、、とかいう意図ではありません。
![](https://assets.st-note.com/img/1664081847158-3ddruDk2DQ.jpg?width=1200)
曲順について
ケージ「北天のエチュード」は4楽章あるのですが、通すと20分かかること、逆にクルターグの無伴奏チェロ作品は大体1〜2分であることから、プログラムをどう構成するかは悩みました。
そこで、バッハもケージも各楽章を分解し、プログラム全体が大きな組曲になるように構成しました。
クルターグ作品はバッハの舞曲とセットになるような6曲を選抜しました。
これによってケージとクルターグの対比を出すことができたのではないかと思います。
ケージの「北天のエチュード」は星図とチャンスオペレーションによって作曲された、言うなれば「別の意志」によって書かれた音楽。
クルターグは逆に1〜2分の中に、自分の意志が凝縮されたような音楽だと感じています。
じゃあバッハは、、、、?
向井響「この世界を、君に」
梅本作品「萌え2少女」「萌え2少女#2 」はまた別の機会にまとめて書きたいと思います。
プログラム最後に演奏した向井響作品について。
私は今大学院で、ポルトガルの古い民謡を採譜する研究に従事している。これまで歌い継がれてきたであろう音楽が、録音テープが途切れている、タイトルしかわからない、メロディが思い出せない、と今日までにゆっくり消えていくところを目の当たりにすると、ここまで残る音楽は全て奇跡だと考えるようになった。私が書いてる音楽も、永遠ではなく、いつか終わりが来るのかもしれない、、、と。「この世界を、君に」は、私が今持ってる、この”世界”を今聴いてくださる聴衆の皆様に、そして、これからいつか私の作品を、楽譜でも音源でも何かしらを通して知るであろう、君に向けて作曲し始めた。
この作品をかいている時に、世界はパンデミックに見舞われた。そんな中、私の姉に息子が誕生した。そして、この子がこれから生きていく、ポストコロナの世界について考えた。叔父になった私は、それでもこの世界は本当に美しい、ということを彼に伝えるためにこの作品を残したいと思った。
大きく何か私達では制御できない時の流れから、音楽を掘り起こしていく感覚を頼りに、この作品は作られた。私にとって、新しい作曲のアプローチで、今日皆様と一緒に、この時を迎えることができること、とても嬉しく思います。
この世界を肯定的にとらえた美しい作品だと思います。
今回のテーマ、バッハの無伴奏チェロ組曲第3番はハ長調です。個人的にですが、ハ長調は「すべてを肯定する」調性だと感じています。
プログラムをしめるのにふさわしい作品となりました。
G線を2番弦として貼り、C線を3番弦にはり、4番弦はC線を減5度下げたFisにした Fis-C-G-Aという調弦で脳がバグりまくってました。
あとバッハボウ使います。ちなみに響くんは航作品でバッハボウを使うのを知らずに、バッハボウを指定してきました。DNA。