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11/4(月祝)バッハ×高橋宏治に向けて

11/4(月祝)14時開演(13時半開場) 日本福音ルーテル小石川教会
山澤慧無伴奏チェロリサイタル バッハ×高橋宏治

B→Cやマインドツリーではバッハと現代の作曲家の作品でプログラムを組んでいますが、1人の作曲家に焦点を当てたことはありませんでした。無伴奏チェロ作品を複数書いている作曲家もたくさんいますので、これからバッハと組み合わせたコンサートシリーズを続けていきたいと思います。

第1回目は高橋宏治くんの無伴奏チェロ作品を3作品演奏します。

見た目は物静かだけど中身は熱い男

高橋宏治作品を初めて演奏したのは2009年、クラリネットとチェロのための"like a prayer..."という作品です。他にも旧奏楽堂で行われた学内演奏会で初演した"Still growin' up!!!(2010)"や、チェロと箏のための委嘱作品"Focal point(2012)"など多くの曲を初演してきました。
彼の書くチェロパートのほとんど(?)は僕が初演してきたようです。

下のURLから音源や映像を見られます。

徳島県出身の彼や、香川県出身の進藤綾音さん、ヴァイオリン奏者の竹内弦さん、愛媛県出身のヴィオラ奏者青野亜紀乃さんら四国出身者を中心に結成された音楽集団"渦々"に東京都町田市出身の自分もこっそり混ぜてもらい、四国ツアーをしたのも忘れ難い経験でした。

音楽集団"渦々" 何故かバロックチェロ

Rabbit(2014)

2014年、彼はデンマークへ留学します。同じころ、自分はリサイタル「情熱のチェロ」という企画を控えており、留学中の彼に無伴奏チェロ作品を委嘱しました。
それがRabbit(2014)という作品です。

Rabbit(2014)

下記はそのコンサート中で作曲者からの手紙(?)のような形で、司会の方に読んでいただいた曲目解説です。

皆さん、こんばんは。

今回の作品のタイトル「rabbit」(ウサギ)ですが、アメリカの作家ジョン・アップダイクの「走れウサギ(Rabbit,Run)」という小説から借りてきました。
この作品は、新婚の主人公が現実がイヤになり、妻をほったらかして逃げ回り、そして逃げることに情熱を注ぎ続ける話です。

実はと言いますと、この曲を書いてる間に虫垂炎を煩い、緊急手術をうけました。
そして、術後、麻酔が効いていたせいか、「走れウサギ」の主人公のように、このままどこにでも逃げれるんじゃないかという考えが浮かんできました。何故このような危険な考えが頭に浮かんだかは分かりません。

実際は、結婚2年目で楽しい結婚生活を送っており、特に逃げ出したいわけではないということは強く言っておきます。
ただ、この作品の締め切りから逃げたかったのかもしれません。

この曲で演奏者は、ライオンから逃げるウサギのように、ずっと逃げ回ります。
山澤さんには、捕まってしまうと死んでしまうつもりで演奏してもらいたいです。

高橋宏治   2014/7/26

2014年山澤慧チェロリサイタル「情熱のチェロ」にて紹介

Melody(2015)

2015年、今も続けている山澤慧無伴奏チェロリサイタル「マインドツリー」の1回目を行います。
ここでrabbitを再演しようと彼に連絡したところ、初演されてないヴィオラのための作品があり、それをチェロ用に編曲したい、ということになりました。
それがMelodyです。

Melody(2015)

この“Melody”という作品は、Danish String Instrument Competition のviola部門の本選の課題曲として作曲されました。今回は、それをチェロに書き直したものを山澤さんに演奏していただきます。
コンクールの課題曲ということでしたので、演奏者の個性が出るようにと思い、息の長い旋律を書きました。
息の長い旋律を、息を殺すように演奏しなければならないこの作品を、山澤さんの演奏で皆さんに聴いていただくことができるのを、非常に嬉しく思っております。

2015 マインドツリー1 プログラムノートより

この作品は、一見シンプルに書かれているのですが、Molto esppressivoかつNon Vibratoであったり、実音とフラジオが絶妙に配置されていたりと非常に繊細で、自然に聴かせるのが難しい、、と感じています。11/4はゴルトベルク変奏曲のアリア(北口大輔編曲)の次に演奏しようと考えています。

踊りたい気分(2019)

2020年、東京オペラシティ主催「バッハからコンテンポラリー」に出演することになりました。自分はバッハの無伴奏チェロ組曲と、6名の作曲家による新作無伴奏曲でプログラムしました。かつ、それぞれの新曲は6曲あるバッハのプレリュードに繋がる、、というテーマで委嘱しました。
バッハの5番に繋がる曲、として高橋くんに委嘱し、完成した作品が"踊りたい気分 Feel like dancing"です。

シラソ レ シラソレ I シラソ レ シラソレ I シラソ レ シ ラ ソ

globe(彼曰く、globeガチ勢だったらしい)のFeel like danceのサビ「シラソー」の音を元に作られています。

バッハの無伴奏チェロ組曲第5番は、前奏曲といくつかの舞曲から構成されています。すでに前奏曲がある作品に、さらに前奏のような音楽を足すとなると、舞曲でダンスすることを期待している人からすれば、さらにじらされることになります。よって、「早く踊りたくてたまらない!」という気分を押し出した作品にしました。
第5番は、スコルダトゥーラ(特殊調弦)によって演奏されることを前提として書かれているため、本作もそれと同じ調弦で演奏されます。

2020「B→C バッハからコンテンポラリーへ」プログラムノートより

ドキュメント映像「名付けられた音」(2017)

最後に、彼が作ったドキュメント「名付けられた音」(2017)について。
作曲家福士則夫さんが、無伴奏チェロ曲"Kang・Chen"を完成させるまでの過程を追ったドキュメンタリー映像です。
これと深い関連のあるコンサートを来年11月頃に予定しています!

現代音楽の作曲家、福士則夫氏が、チェリスト山澤慧氏のために書いたチェロ独奏曲『Kang・Chen』の創作過程を追ったドキュメンタリー映像です。
本作では、福士則夫氏の音楽が作曲され、名付けられ、そして実際に演奏され音楽として誕生する過程を記録することが目的で撮影されました。
創作過程を記録するために、演奏家とのセッションを数回設け、それを撮影するという特殊な方法を取りました。彼らのやり取りの中で見られる福士氏の一貫した創作態度や、山澤氏の新作に対する深い理解が見どころになっていると思います。
演奏される音楽は人生と同じで、いつか終わります。
先に進みたい欲求はありつつも、終わりたくないという相反する感情を持ちながら、音楽(もしくは人生)は、どのように始まり、どのように終わるのか。この作品から感じ取って頂ければ幸いです。

​​(監督・編集・企画 高橋宏治)
2024/11/4 14時開演


山澤慧無伴奏チェロリサイタル

バッハ×3人の作曲家シリーズVol.1(全3回)

第1回 J.S.バッハ×高橋宏治
2024/11/4(月祝)14時 日本福音ルーテル小石川教会

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲よりアリア(北口大輔編曲)
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調 BWV1011
高橋宏治:Rabbit (2015)
高橋宏治:Melody (2015)
高橋宏治:踊りたい気分(2019)

一般3000円 25歳以下1,000円(未就学児入場不可)
お申し込みはこちら(当日券も出ます)

11/4の午前中には未就学児の方もご入場いただけるワンコインコンサートもあります!

バッハ×3人の作曲家シリーズのプレコンサート的な意味合いもあります

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