「顧客起点マーケティング」に寄り添った私の2年間。
出版される前の原稿も含めて、何度も読み返してしまいました。尊敬する上司の本なので早急にレビューを書きたかったのですが、読むたびに胃が痛くなってきて。特に、4章(スマートニュースの事例)は当時のことを鮮明に思い出してしまう。
絶対に成功してやろうと、アドレナリンは常に出てるのに、まるで電源が落ちたかのように定期的に倒れる。ドクターストップで止められる。知らない言葉が飛び交う。100m走と聞いていたのに、蓋を開けてみたら永遠のフルマラソンだった。私はとっくに骨折してるのに、西口さんはずっとペース落ちないんですよね。顔も爽やかで。そんな記憶。
たった一人の分析から事業は成長する
この本のヤバさはまずマーケティング手法論。販促とブランディングという対立する概念を、ここまで可視化したモデルは世界初ではないでしょうか。実行してからの効果計測プロセスも超綺麗にまとまってる。ポーターの競争戦略もクリステンセンの破壊的イノベーションもこの本のが分かりやすい。実務で使って有効性も実感できる。
けど、もっとヤバいのは西口さんがこの本を書くきっかけとなった当時のエピソード。P&Gの新ブランドを撤退させてしまった経験。ブランドマネージャーとして何をやっても上手くいかず、一緒に頑張ってくれた部下や仲間を失望させてしまった経験。物を作って売るには研究開発から生産、流通、店舗販売、広告までたくさんの人が関わる。その責任を追うのがブランドマネージャー。自分の信頼が崩れる音が聞こえたそうです。
失敗の原因は、商品を買ってくれるお客さんではなく、理論や分析ばかり見ていたこと。「ユーザーを対象物として見てはいけない」「ユーザーの気持ちに共感して自分ごと化する」そんな先輩の言葉も、データ的にも論理的にも正しいのにアナログなアドバイスは困る。と跳ね返していたそうです。
失敗と向き合って仕事の進め方を180度変えた。小売店を回り、商品棚を触り、様々な商品を試し、スタイリスト研修会まで顔を出して、自分が面白いと感じたことを追求する。具体的な「誰か」の強い反応を見る。それが西口さん29歳。顧客起点を重要視する原体験となったそうです。
顧客起点マーケティングと私の2年間
私はそもそもマーケターじゃないし、前任の上司から引き継いで、GDNって何ですか?とか言いながらデジタルマーケティング担当になった。たった1人で。そのあと西口さんが入社して、お前はマジですぐ辞めそうだな。と言われながら2人チームになった。西口さんと出会ったとき、ちょうど私も29歳だった。そこからの約2年が本書の4章です。
あの西口さんがマーケティングを諦めるまで追い込まれた経験。その根幹はチームを失望させたこと、そしてファンを失望させたことだと思うんですよね。私はブランンドマネージャーでもなければCEO経験もない。けどファンを裏切らない気持ちだけは分かる。死ぬほど分かる。好きなバンドは解散して欲しくないし、好きなお店は潰れて欲しくない。自分が自分であるために、一緒に働いてくれたり支えてくれた人。心から素晴らしいと思えるプロダクト。マーケティングという仕事の関わり方で、喜んでくれるお客さんの笑顔。それを裏切ることは本当に辛い。本書の9セグメントはその数字が手に取るように分かる。ロイヤルユーザーが離反する辛さも、新規ユーザーがブランドを好きになってくれる過程も、はっきり見える。
マーケティングのスキル論ばかりが語られることも多いけど、私はやっぱり、受け取ってくれるファンの人のために頑張ろうと思う。そして一緒に働いてくれる仲間たちのために頑張ろうと思う。素晴らしいプロダクトのために頑張ろうと思う。顧客起点マーケティングは具体的な1人にしっかり届いたって実感できる。この経験は一生の宝だ。日本の未来はもっともっと楽しいことが待っている。
2018年の花見に行った写真です。4章で紹介されているTVCMがちょうど開始した時期。この日からユーザー数が爆増します。
クリエティブ担当の方は1章を。マーケティング担当の方は4章を。経営者の方は2章-3章を。本気でチャレンジしたい方はまず全部読んで、自費で調査票を書いて5セグメントを作ることをお勧めします。
今週の西口さんの名言は「枯れてるのはユーザーじゃなくて、マーケターのアイディアだ!!」です。
第4章を具体的な数字を出さずに文章に起こしたのがこのnoteです。5セグメント/9セグメントを活用した、顧客起点マーケティングの現場はこんな感じです。慢性的な人手不足なので興味がある方はご連絡ください。
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