CPIに逃げる人、認知に逃げる人
MTGをしているとこんな話をよく聞きます。「CPIが改善傾向です」「CPIが低いメニューなのでお勧めです」「認知目的なので別指標です」「認知が上がったので達成です」一見すると正しいように感じますが、逃げているような違和感を覚える瞬間があります。
CPIに逃げる人
デジタルマーケティングでよく使われるCPIという概念があります。Cost Per Installの略称で1ユーザー獲得単価を意味します。「CPI¥700からCPI¥630に改善しました」つまり1ユーザーあたり700円だったのが630円になった。10%お得に獲得できているということです。
そもそも何で獲得単価が下がるのでしょうか。1つはCPMなどメディアの配信コストが低いのでCPIが下がる。2つはターゲティングが適切でCTR/CVRが高いのでCPIが下がる。理由はいくらでも挙げられますが、デジタルマーケティングが得意なのは「需要が顕在化したユーザーに対して適切にオファーをする」ことです。
例えば、ニュースアプリに興味がある人が500万人いるとしたら、その500万人を競合他社と奪い合う戦いです。逆にいうとそれ以外のユーザーに対しては何も語っていません。その500万人だけの話をしているのに、1億人をイメージしてCPIの議論が始まると「逃げているなぁ」と感じます。需要が顕在化したユーザーが多ければ多いほど低CPIで獲得できるし、そのユーザーがいなくなればCPIは上がります。まずはどこにポテンシャルがあるのか徹底的に調査すべきで、無駄がないように適切なオファーの方法を考え抜く。
もっと大事なのはどう需要を作り出すのか。多くのデジタルマーケターはそこに向き合わないといけない。
認知に逃げる人
認知は言葉の通り「知っていますか?はい知ってます」の回答です。知っていることは資産だと思います。ハンバーガーはマクドだし、ポテトチップスはカルビーだし、ハンドクリームはロクシタンだし、まず最初に思いつく。けどそれを認知という言葉ひとつで片付けるには無理があります。
好意的な認知もあれば否定的な認知もあります。認知が上がっても利用意向が上がって来ないケースもあります。認知が上がったと思いきやTVCM広告の認知だけで、商品の認知が追いついてないケースもあります。ブランドイメージやプリファレンス、ユーザー属性など本来は複数の指標でクリアにすべきことを、ひっくるめて「認知」に責任を押し付けるのはやめましょう。知っているというデータだけでは何のアクションにも落とせないのです。
統合的に考える
大切なのは認知だけCPIだけで分断するのではなく「その隙間を埋めて行く想像力」です。どこで知ってもらったのか、その知り方は狙い通りか、なぜユーザーになるのか、なぜ定着化するのか。お客様ひとりひとりが感じるベネフィットを連続的な体験として捉えないといけません。雰囲気や効率で決めるメディア選定の話ではなく、商品とユーザーを紐づけるアイディアの話です。
もし何もせずにユーザーが増えていたらそれはプロダクトのパワーです。あるいはリテラシーが非常に高いイノベーター/アーリーアダプターが来てくれただけで、その状態は長くは続きません。状況をシビアに立体的に考えること。打ち手を統合的に考えること。特にいちど成功してしまうと同じ方法に頼りがちですが、特定の指標に逃げないように。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?