合意なきALPS処理水の海洋放出に抗議します 20230824
政府・東京電力は本日8月24日、東電福島第一原発からのALPS処理水の海洋放出を開始しました。2015年に福島県の漁業関係者と取り交わした、関係者の合意なしにはいかなる処分も行わないとする約束に明らかに反する放出開始には反対、抗議します。
福島県漁業関係者の思い
政府の24日にも放出を開始するとの報道を受けて、昨日8月23日、急遽福島県を訪問、福島県漁連、相馬双葉漁協関係者の皆さんとお会いして意見交換をしてきました。
福島の皆さんは今回の一方的な放出には強い憤りを感じており、政府・東京電力に対して不信の念を持っています。お会いした漁業関係者の皆さんは、ALPS処理水について独自に研究を重ねており海洋放出という処分方法についても一定理解しているとのこと、また、現状のALPSによる再処理が必要な汚染水(処理途上水)が老朽化してきているタンクに大量に保管されている状況を一刻も早く改善してもらいたいとの考えをお持ちのこともヒアリングから分かりました。これから先30年と言われる期間、放出の安全をどう確保するのか、予想される風評被害に対して具体的にどのように対応してくれるのか、政府・東電には逃げずに関係者に直接説明してもらいたい、との要望をいただいたところでした。
海洋放出を進めるには、関係者のこうした疑問や思いにしっかりと向き合い合意を得ることが必須です。今回、合意の前提となる信頼を決定的に傷つけてしまった岸田総理の責任は極めて重いと言わざるを得ません。
ALPS処理水の特殊性
東電福島第一原発事故後、東京電力の努力もあって1 ⽇140トンのペースで発⽣し続けてきた汚染⽔ですが、昨年は90トン/⽇と過去最少量を記録しました。ですが、計画では今後30年以上にわたり放出を続けることになるため、中長期的な計画が必須です。また汚染水の発生をさらに抑える必要がありますが、発生源対策に関する議論が現時点で十分になされているとは言えません。
この処理水は、もともと核燃料が溶け落ちたデブリを通過した汚染水であり、通常の原発から発生するトリチウム水と同列に扱うことはできません。今回、放出にあたって計測しているタンクは3つしかなく、トリチウム以外のヨウ素129やストロンチウム90を含めた様々な核種が規制値以下のレベルに除去されているかという点についても、今後30年に亘る保証が不可欠です。
海洋放出に代わる代替案の検討を求める
政府は、7 ⽉4⽇にIAEA(国際原⼦⼒機関)が取りまとめた「包括報告書」を持ってして安全性を確保しているとしていますが、他⽅、PIF(太平洋諸島フォーラム)の有識者からは同IAEA「環境等への被ばく防護に関するセーフティガイド」に照らすならば、「(海洋放出により)上回る利益が個⼈や社会にあった場合のみ、正当化されるものと理解」するとし、環境影響評価が不⼗分だと指摘されています。
国内有識者らから構成される「原⼦⼒市⺠委員会」からも、「モルタル固化」による代替案が提唱されています。以前「経済産業省トリチウム⽔タスクフォース」で、こうした代替案が検討されたと言うことですが、議事録を見る限り議論が尽くされている形跡はありません。拡散ではなく、閉じ込めることこそ、放射性物質処理の原則であり、公共の海に流す海洋放出という方法は最終手段であり、あくまでも他の⽅策を追求すべきと考えます。
今回のALPS処理水の放出を中止、延期し、再度、東電福島第一原発廃炉方針の再検討、汚染水問題に関する議論のやり直し、丁寧な合意形成を強く求めます。
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