【江談抄】5-44 清行の才、菅家嘲り給ふ事

【原文】
「善相公は巨勢文雄の弟子なり。文雄、清行を薦むる状に云はく、『清行の才名は時輩を超越す』と云々。菅家この事を嘲らしめ、すなはち『超越』を改めて『愚魯』の字と為す。また広相に問はる。云はく、『詳らかならず、詳らかならず』と云々。菅家怨ましめて、『先君(是善なり)の門人為るも、事において芳意なし』」と云々。

【現代語訳】
(匡房が語るには)「善相公(清行)は巨勢文雄の弟子であった。文雄が書いた清行の推薦状には、『清行の才能と評判は同年代の文章生を超越している』などと書いてあった。道真公はこのことをお嘲りなさって、すぐに『超越』を『愚魯』と書き変えてしまった。また(近くにいた)橘広相に(これでどうだと)問いかけると、広相は『よくわからない、よくわからない』などとおっしゃって(ごまかして)いる。道真公はご不満に思って、『(広相殿は)我が父(是善)の生徒だったのに、人を見る目に関しては尊敬できるものがありませんな』などとおっしゃた。」とか。

【感想】
・江談抄の中で道真の人柄が最もよく描かれているエピソードの一つです。大鏡などでは人格者として書かれていた道真が、実はかなり偏屈であったことが想像でき、ほっこりします。

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