初北海道最終日 1989年7月28日-⑤ 釧路空港〜白糠駅 そして特急おおぞら

まるでドラマでよく見るワンシーンのような光景だった。僕が空港ターミナルの建物から出てタクシー乗り場の方に目をやると、一台のタクシーが誰かを乗せてちょうど走り出すところだった。ドラマだったらタイヤの音が鳴るのが聞こえてくる感じ。

くそー!!最悪だー!

周りを見渡してももう他のタクシーは見当たらない。

どうしよう。特急間に合わなかったら、ちょっとヤバいぞ。今なら携帯電話ですぐにタクシー会社に電話して呼び出せる場面だけど、1989年に携帯電話を持っている大学生など、もちろんいるわけがない。

しょうがない、待つしかないか、、、すぐ来るかな。

仕方なくタクシー乗り場に並んで待つことにした。時計ばかりが気になる。全日空のお姉さんは白糠駅までタクシーで30分はかからないと思うと言っていた。特急発車時刻まであと40分と少しだ。早く来ないかな、、、これで来てくれなかったら飛行機振り替えた意味が全くなくなっちゃうよ。再振り替えってできるのかな。どうなんだろ。わかんないなあ。いやそんな事よりちょっとマジで早く来てくれよ、タクシー、、、

すると待つこと数分。空港の入口付近に行灯を乗せた車が入ってくるのが見えた。

おっしゃー!!来たー!!!!

そのタクシーは空港までの利用者を降ろしてようやく僕の前にやってきた。その時間の長かったこと。

ドアが開く。「スミマセン!白糠駅まで。13時54分発の特急に乗りたいので、急いでください!!」

年配の運転手は「54分発ね。あ、じゃあ少し急がないとだね。はいはい、じゃあドア閉めますよー」と、心持ち呑気な様子。大丈夫かなあ、この人。頼むよ、、、アンタがオレの今日の今後を握ってるんだから。

結論から言うと間に合った。しっかりと時間を気にしながら、おそらく最短距離を急いで走ってくれた運転手さん。僕を乗せたタクシーは13時45分過ぎに無事に白糠駅に到着。ほっと胸を撫で下ろした。

白糠駅の窓口で千歳空港駅(現南千歳駅)までの切符を購入。なんと6800円。タクシー代と合わせて10000円札がサヨウナラ。そこで初めて、なんだよ、こんな出費するならもう一泊できたじゃん、と気づく愚かな自分。人はこうやって大人になっていくんですね(笑)

霧など関係なく定刻通りに到着した特急おおぞらは通路まで人が立っているほどの満員。それでもなんとか最後部の座席と壁の間に隙間を見つけて大きな荷物を足元の奥に押し込み、そのスペースに強引に入り込む。ああ、痩せててよかった。

そしてその隙間に立ち続け、電車に揺られること4時間!千歳空港駅に到着した。思いがけず経験した北海道電車旅は東京から持ってきた雑誌を読んだり、眠くなったら壁とシートにうまい具合に挟まって立ったまま寝たり(笑)という感じで過ごした。

でも今その乗車した根室本線と石勝線を地図で追うと、電車は海沿いあり山の中ありと実によだれの出そうなルートを走り、何とも魅力的な駅をいくつも通過していたことを知る。なんで雑誌なんか読んでてしっかり景色見なかったんだろうなあ。今となっては後の祭りにも程がありすぎるけれど、本当にもったいないことをしてしまった、初北海道の初電車旅だった。

そしてついに旅は次回、フィナーレを迎えます。


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