『犬のエッセー集』出版余録
◆エヴァン、元気です
先ごろ『犬のエッセー集』をAmazonから出版した。パートナーの盲導犬・エヴァンの話を中心に、犬の生態、盲導犬の毎日、社会の受け入れ状況などについて、綴ったものである。言葉では語り尽くせないので、上のような、エヴァンが元気に駆けるパタパタを、ページ下に配置しておいた。援護射撃である。
関係筋に謹呈したところ、思いがけない反応をいただいている。その中で、改めて納得したことがあった。
◆訓練のたまもの
本文中、エヴァンがフリスビーに反応しない場面が出てくる。喜ばせようと、ネットでフリスビーを購入、広場に行って投げたが、エヴァンは一緒になって眺めていた、というものだ。
内心、確証が持てなかった。「そんなことはないですよ。盲導犬のイメージダウンになるようなことは、書かないでください」と、ほかのユーザーからクレームが付かないか冷や冷やしていたのである。
県の盲導犬を育てる会から「やっぱりね」とメールをいただいた。仔犬の時代から、ボールなどの動くものには過敏に反応しないように訓練されているらしい。確かに、盲導犬が仕事中、飛んでいる物や転がってきた物を追いかけると、ユーザーは危険極まりない。
◆厳選プログラム
早期教育の効果は大きい。三つ子の魂百まで、というのは動物にも当てはまる。
引退犬の里親がおもちゃをいろいろ買い与えたが、何ひとつ興味を示さなかった、ともメールにあった。里親には、お気の毒に。
パピー(仔犬)から訓練を受け、たいてい二歳で盲導犬デビューする。教育プログラムは厳選されたものになるだろう。
エッセー集にも出てくるが、人は犬と見ると、お手をさせたがる。往診先で子供がエヴァンにお手を要求するくだりがある。結論から言うと「盲導犬にとってどうでもいいことは教えてない」(訓練士)のである。
◆犬猫の幸せ
もうひとつ、うなずいた話がある。
我が家の家庭犬・シモンがクルマに弱いのに対し、エヴァンはクルマで外出すると喜ぶ。これは人間でいえば、単なる個人差くらいに考えていたが、育てる会から「パピーの頃からクルマに乗せられて移動しているからではないですか」と指摘があった。なるほど。そうでなければ、家庭犬などにキャリアチェンジして、ここにはいなかったはずだ。
盲導犬ユーザーとなって、人間は犬の生きた方にも深くかかわっていることを実感する。エッセー集のラストで、捨て猫のスペイ(避妊・去勢手術)活動をしておられる方を紹介した。その方から「そうそう」と言いながら読んだ、とお礼がきた。その方が同感したのは、おそらく動物の虐待について述べた部分だろう。犬猫に限らず、動物たちの生殺与奪の権利など、人間にはない。改めて肝に銘じなければならない。