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残 像

 §1 故郷へ

 70歳を境に、視覚障害が一段と進行したようである。いつの間にか、文字通り、五里霧中となっていた。

 

「ゆくゆくは田舎に帰って鍼灸師を続けながら、釣りなどしてのんびり暮らしたい」

 時代のスピードに乗れなくなり、そんなことを考えるようになっていた。

 願いが叶ってのUターンだった。妻と二女、計3人で埼玉県から、四国の中央部にある故郷に帰った。64歳だった。

 

4人の子供に恵まれた。多い時には6人家族だった。それが半分になり、人生のステージが進んだことを実感した。

 ところが、1年ほどして、何幕か引き戻された。長女が孫娘を連れ、後を追ってきたのである。我が家がまた賑やかになった。

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