七夕様
NHKラジオの女性キャスターが「今日は七夕です」と言ったのを聞いて、そのとおりと思った。童謡「たなばたさま」を流したあと、男性キャスターが「月遅れの七夕」だと付け加えた。
松本地方では、正月と節分以外の季節の行事が月遅れで行われる。だから、7月7日の七夕は、当然8月7日である。春の節句は4月3日、端午の節句は6月5日である。昔は旧暦で行われていたのでしょうが、新暦となって、ちょうど1月遅れが季節的に合う。太陽暦では、ちょっと早すぎる。
松本地方では、「七夕様」と言って、織姫と彦星の顔がある十字の板に、子どもの着物などを着せ掛けた七夕人形を軒先に飾ることが風習となっている。ひとつばかりでなく、複数飾ることも普通に行われる。もちろん竹に短冊を飾る一般的な七夕飾りもあわせて行われる。
しかし、子どものいる家が減ってきていることや、松本出身ではない方々ではこの風習をご存じでない場合もあって、行われない家が増えているように感じる。むしろ公共施設などで目にすることが多い。
七夕様に着せる着物などは、浴衣などが多いがTシャツでもかまわない。そんなに気を使うものでもない。松本地方では、この頃になると女の子は浴衣を着て歌いながら「ほおずき提灯」を持って町内を歩く、行事「ぼんぼん」を行うので、子どもの浴衣がある家は多い。
お供え物は、季節の果物や野菜など、どちらかと言えば日持ちするものをそのままお供えすることが多い。唯一、日持ちしないお供えが「ほうとう」である。ほうとうは山梨県が有名であるが、松本地方のほうとうは、ゆでてあんこにからめるので甘く、昔はごちそうであったかもしれないが、今ではおやつ感覚である。作ったらその日のうちに食べてしまう必要がある。
七夕人形は着物などを着せ掛けるほか、紙の七夕人形をつるすなどその他のものもあるそうであるが、松本市街地では着物などを着せ掛けることがほとんどだと思われる。かつて全国で行われていた風習が、松本地方に残ったものだそうだ。江戸時代に押絵びなが作られたことも影響しているかもしれない。
七夕人形も継続して行われないと松本地方でも廃れてしまうおそれがある。大事にしたい年中行事である。