60歳になりますが、年金の加入期間が40年に満たないので、基礎年金が満額もらえません。どうすればよいのですか?
59歳の誕生月になると、大きな封筒で「ねんきん定期便」が送付されます。また、60歳ころになると、預金口座のある金融機関から年金相談の案内状が到着することがあります。実際に老齢年金の受給が開始されるのは少し先ですが、自らの老後資金について考えるきっかけともなられる人もおられます。
年金のうち、65歳から受給できる基礎年金は、20歳から60歳になる前までの年金加入期間によって受給額が決定され、その40年間継続して加入していると満額(令和4年度は777,800円)を受給できます。しかし、その間に加入していない期間があると、受給額が減ってしまいます。
現在20歳になると、会社にお勤めの人以外は、国民年金保険料の納付書が自動的に送られてきます。すなわち、お住まいの市町村が国民年金の加入手続を行いますので、納付するか、学生納付特例を利用するかを選択する必要があります。しかし、かつては自ら国民年金の加入手続をおこなわないといけませんでした。
現在60歳に近い人の場合、大学を卒業し、就職して初めて厚生年金に加入した場合は、大学在学中は年金に加入してないことが多かったと思われます。そもそも国民年金に加入する必要があることさえ知りませんでした。
そこで60歳になって年金加入期間が40年に満たない場合は、65歳になる前に国民年金に加入することが必要と考えられます。60歳で退職するなど、厚生年金に加入していなければ、国民年金に任意加入の手続をすることができます。できれば付加年金にも加入することがよいと思われます。
また、国民年金に加入していた人でも、60歳になると自動的に国民年金から脱退しますので、年金加入期間が40年に満たない場合は任意加入の手続が必要となります。
しかし、60歳以降も働き続けて厚生年金に加入している場合は、国民年金に任意加入することはできません。どうすればよいのでしょうか。この場合は、厚生年金の加入を継続していれば大丈夫なのです。では、それはどうしてなのでしょうか。
基礎年金が満額受給できなくても、その不足分は厚生年金から受給できるからです。厚生年金の加入者が65歳から受給する老齢基礎年金は、もともと厚生年金の定額部分として支給されていました。厚生年金は、20歳未満や60歳以上でも加入できるので、40年(480月)を上限とはしますが、受給開始となる65歳前までの加入期間も含めて計算されることとなっています。
20歳未満および60歳から65歳前までのに加入期間があれば、厚生年金の定額部分(基礎年金にあたる部分)の加入期間として従来どおり算入されます。この20歳未満または60歳以上の期間にあたる厚生年金の定額部分を経過的加算または差額加算といいます。
学生であった時代に、例えば24月納付していなくても、60歳以降、厚生年金に24月加入すれば、その24月は厚生年金の経過的加算でカバーされることとなります。
① 1,621円(令和4年度) × 厚生年金の加入月数(上限480月) ② 777,800円(令和4年度)× 20歳以上60歳未満の加入月数 ÷ 480月 ③ 経過的加算額 = ① ー ② なお、777,800円 ÷ 480月 = 1,620円 ≓ 1621円 です。 1,620円 < 1,621円 で厚生年金加入者は経過的加算が加算されます。
結果として、60歳で定年となっても、再雇用で引き続き働く予定がある人は、年金額が減るのではないかと心配する必要はないこととなります。
また、60歳で退職される人は、市町村役場で国民年金の任意加入手続を付加年金を含めて行うことをお勧めします。お金に余裕のある場合は前納をするとお得です。基礎年金は納付額と同額の国庫負担があることからも必須と思われます。
以上のことからも、59歳時のねんきん定期便などで自らの年金記録を確認しておくとよいと思われます。